4-1「キッチンを作る そして女神からの食料提供」
阿部城(仮名)は、時代背景からも戦いに特化しすぎて生活するには不便だろう、ということで隣の西洋風の城に移動する
1F右奥にキッチンを作ることにして手前は当面多目的ルームかな
左側は工作室などを後で作ることにしてとりあえず保留
2Fは個人の部屋として5人分のベッドと布団をまず作る
細かい什器類は後にして、問題は風呂とトイレと衣類と食事か
阿部ちゃんと話をしながら進めるのに、黒板かホワイトボードと書くものが欲しいかな
そんなものまで魔術ではできてしまい、あっという間に見慣れた会議室セットが揃ってしまった
「いちいち購入に起案書書いて決済取って、回ってきたのを手配したのにスクラップ置き場から拾って直せ!って言われるのとは雲泥の差ですよね」
阿部ちゃんがしみじみ言う
彼女が入社した頃には当然だったが、起案書書いても、新卒用の机と椅子を手配しようとしたら補修品保管倉庫に3つあるからそれでなんとかして、と上に言われたって申し訳なさそうに私に伝えた阿部ちゃんからすれば、信じられない出来事だろうね
起案書だって、書く時間と上申とか、上司が確認して決済してってあちこち回る手間と責任あるのに、結果が起案しなくたっていいじゃん!てオチばかりだけど仕方ない
こんな魔術を唱えるだけで出てくる、理不尽の塊のようなことがあるほうがおかしい
CADとかあるわけないし、そもそも計測すらしてないから大雑把な平面レイアウトを書いてイメージを固めて2人で行って作って、を繰り返すこと1時間くらいか
とりあえずキッチンと各部屋のベッドは作れた
試しに阿部ちゃんにも、魔術でベッドを作ってみてもらったけど、彼女も同じものが作成できた
ちなみに魔素量は私と変わらず計測不能らしく、阿部城(仮称)やベッドを作っても全く減ってないらしい
ただ、問題がある
キッチンは作ったけど上下水道配管は作っても繋がってない
ガスコンロも作ったがやはり配管は繋がっていない
レンジフードはあるけど、VVFケーブルは切りっぱなしの断面が見えている
さあ、どうするか
これがクリアできないとトイレも風呂もできないわけで
衛生面考えなければ、下水に関しては穴掘って流し込むだけでもいいけど、ここは洞窟内で閉鎖環境
絶対によろしくない気がする
上水道については水と設備は作れることが分かった
ただ、下水ができてない状態で繋げても、使った後の処理ができない
ガスは水と同じイメージとして行けるが、電気はどうだ?
配管のレイアウトとしては干渉しないので、まずはガス供給設備を作ってみよう
1Fだから行儀悪く、キッチン室の窓から外に出てみる
勝手口あると楽なんだろうけど、今から作るのかね?
とりあえずイメージするのは、アパートなんかにある直径1mくらいの円筒型のガスタンク
あれにレギュレーターと配管をイメージして、室内に引き込めば・・・・・
室内に引き込む?
電気も上下水道もだけど、確か弥生さんが
『単結晶構造の躯体』
と言ってたはず
単結晶ってことは、穴あけとか無理じゃね?
屋内に機械室作ったって間仕切壁も単結晶だったら同じだし、室内を露出配管工事じゃ見栄え悪いしそもそも万が一、タンクのガス漏れでもしようものなら大惨事だから屋外設置してるわけだし
どうするかね
『魔法で穴あけができますよ、ご主人様』
弥生さんからお声がかかった
魔法?魔術じゃなく?
『はい、魔術は術構成が必要な「技術」ですが、魔法は直感だけで使える「能力」です。
「火を熾す」には燃焼の3要素が必要ですが、「魔法で火をつける」のに必要なのはイメージだけです
極端な話、真空中で物体がなにもない状態でも、火を発生させられるのが「魔法」です
魔術で穴あけをしようとすれば、物理的に破壊不可能な躯体に穴を開ける術はありませんが、魔法なら「消してしまう」ことで穴を開けられます』
理不尽
でも可能なら、ちゃんと設備として成立させられるわけだ
『しかしながら』
弥生さんが続ける
『触媒となるものを作っておけばご主人様の世界のようにタンクだったり電線だったりを作らなくてもガスや電気、水を供給できますよ』
触媒?プラチナとかパラジウムとかロジウムとかの?
『それは自動車用の排気ガス浄化用触媒でしょうか
それはさておき、ご主人様は私の指示通り製作:をお願いします』
阿部ちゃんが後を付けてくるのを尻目に、キッチンで次々と弥生さんが指示を出してくる
上水道はワンレバー式の水栓と、キッチンの下にポンプが付いた水タンクを2つ
ポンプといっても電源が必要ではなく、魔素を吸収して勝手に圧送してくれる超技術だ
水栓が開けば水圧変動を感知して圧送を開始して、閉じれば止まる
2系統の片方は過熱器を内蔵したポンプになってるので、レバーで調整してお湯の温度を変化させられる
おまけに、タンクそのものが自動で魔素を吸収、魔法で水を自動生成する素材として作ったし、浄水機能まであるから作った水がいつまでも痛まない
魔素がある限り、だけど
同じように、ガスも供給できたしレンジフードに至っては、ファン自体に回転する魔法がかけられて、熱を感知すれば作動するようになってる
懸念だった排水については、排水タンクで受けるようにして、やっぱり中で魔法にて水と残渣物を分離して圧縮するらしく、その圧縮度がとてつもないようで弥生さん曰く
『1年に1度、中身を廃棄していただけば十分だと思います』
だそうです、はい
一応理屈を聞いてみたのだけれど、製作:を行使した際に弥生さんがサポートしてくれているそうだ
一番は表のサマーランド施設
あれ、給排水や動力は一切考えてなかったんだけど、私の記憶と世界書庫から関連施設や設備を作り上げたんだって
あれの小型版がキッチンに集約されてる、ということもあり一応、指導がてらで今回は自動で作らなかったとか
弥生さん、意外とスパルタ?
『いえいえ、ご主人様は使い方さえわかればいろいろお試しになられますよね?』
確かに
ところで、水も火も使えるキッチンはできたけど食材って?
洞窟内、見えた限りでは草木も動物もいなかったよねぇ?
『それについては女神様から預かりものがあります
【転送:食料倉庫】
と唱えてください』
詠唱が終わった
結果、キッチンが狭くなった
正確に言えば、狭くなったけどまだまだ広い
ホテルの厨房よりも広いくらいだ
そこに一般家庭用よりは大きく作ったつもりでも、広さに比べると小さかったシステムキッチンだけだったが、その広さの1/3くらいを占める位置に壁ができていた
よく見るとドアが付いている
普通の室内ドアより幅が広い気がするけど、その程度
中は野菜や果物がどっさり
見慣れたジャガイモやニンジンなど、保存が出来そうな野菜が山ほどある
そういえば室温は若干低い程度で、キッチンとさほど変わらないようだ
その奥にはステンレスでできた、でっかくて見慣れた扉が左右に2つ
これまた見慣れたレバーを引くと、今度は強烈な冷気とともにビニールの暖簾が噴き出してきた
こちらは冷凍室らしい
でっかい籠に入ったマグロ?ぶら下がった丸ごと捌かれた牛や豚?
見たことのある光景が広がっていた
しかし、普段着でこの【世界】に来た私らには厳しい
ついてきていた阿部ちゃんに至っては、私の後ろに隠れて冷気をよけようとしてるけど震え始めていた
温度もあがるだろうし、ドアを閉める
じゃあ隣は?
こっちも同じ扉だけど、温度が冷凍室より高い
冷蔵室のようだ
そして驚いたことに用意されていた棚には、魚の切り身やカットされた肉、麺類など真空パックされたり普通にパッキングされた、冷蔵を要する食材が山ほどあった
なんなら牛乳瓶も山ほどあったりする
「女神様って、スーパーとか使ってるのかね?」
阿部ちゃんに問いかけてみる
「どうでしょうね?
これ、普通に個人経営のスーパーより品物多いですよね?」
大型ではないにしても、今いる5人で数年くらい食えるんじゃね?ってくらいの量に見える
ただ消費期限がどうなのかは不明だけどね
『消費期限はありません
女神の加護で、ここから持ち出すまでは時間が止まっています
劣化しない代わりに、追熟や熟成もしませんのでご注意ください』
あら、至れり尽くせり
衣食住はちゃんとしてくれる、って言ってたから持たせてくれたんだね
ありがとう、JC女神様!
魔術で設備を作る、作れる基準を書きましたが調整するかも?
後述の話と齟齬があったらそうします




