3-7「イメージ、時々悲劇」
その間に、こっちはこっちで話を進めよう
まだベッドの上で飛んだり跳ねたりしている3人娘
子供かな?
それを眺めている阿部ちゃんも含め、みんなに声をかける
「お楽しみの最中だけど、名前を付けるって話を進めていいかな?」
ピタッ、と動きが止まる
3人娘はベッドの端に寄り、足を下ろして座り直した
阿部ちゃんは空いた真ん中に横座りしてこちらを見る
「さっきアヤノちゃんと考えてたんだけどさ」
3人娘を見回しながら続ける
「長命種さんはフレイア
妖精種さんはアウラム
有角種さんはカホル
髪や目の色から取った名前だけど、どうだろう?」
3人は順に自分の名前を口にした
「フレイア・・・・・」
「アウラム・・・・・」
「カホル・・・・・」
そう言い終わって少しの間の後、3人がゆっくりと後ろに倒れて天を仰ぐ
え、何が起こった?
同じベッドに座っていた阿部ちゃんと共に覗き込むと、3人とも目を見開いたまま天を仰いでいる
目がぐるぐる回っていて、以前見たことがある脳震盪みたいな状態だ
肩を叩いても反応はないが、呼吸はしている
ひとまず安心
「弥生さん、緊急事態!
最優先で3人の状況を把握してくれる?」
『バイタルサインに異常はありません
脳波パターンは睡眠時と同じですので、恐らく気絶しています
原因ですが、魔素量が気絶直前の十倍に増加していますのでこれが主要因ではないかと推測します』
魔素量が十倍?
名前が付いただけで?
凄すぎない?
急激な魔素量増加で気絶するものなの?
『このような事例がこの【世界】で発生した記録は【世界書庫】にもありませんので、あくまで推察となります
急激な魔素量増大によって魔力体がショック状態になり、その反動で身体をコントロールする脳がびっくりして防御反応の一種で一時的に気絶した、と考えます』
とりあえず体に問題はないんだね?
『3人娘の肉体や精神に対しての、の個体名確定による急激な魔素量変化の相性が分からない以上、大丈夫とは言い切れません』
名前をつけただけでこんなことになるとは
『この【世界】で初の現象と言うことは間違いありません
現に【世界書庫】に【命名】という項目が新しくできています』
世界書庫に項目追加・・・・・そんなことあるんだ
数分経っても起きる気配がないので、弥生さんにモニタリングを任せつつ阿部ちゃんと相談する
「阿部ちゃん、3人は命名が原因で気絶したらしいから、起きるまでこの後のことを考えよう」
「そうみたいですね
この後のことですか?」
小首をかしげる
「そう
家――というか城ができちゃったけど、住むには設備がまったくない
食料、水、外の世界の情報、その上で今度は外出準備とか、やることが山のようにあるかな
まずは住環境を整えるのが最優先だよね
トイレもキッチンも風呂もないし、このままだと・・・・・」
「お風呂や食料も問題ですが、流石にトイレがないのは困りますねぇ
この洞窟、隠れるところないですし」
外で用を足すのは問題ないのか、この娘
・・・・・いや、聞かないでおこう、うん
「まずは魔術で設備を作れるか試すか
住むには最優先で水、無いとまずいよね?」
水源、浄水、貯水、排水
一口に水と言っても考えることっていろいろある
それら全て、魔術でクリアできるのかしら?
「先輩、詳しいですか?」
「工場やDIYで水配管はやったけど、工業用水だったり既存配管の入れ替えだったりと根本的に条件が違うんだよね
一から作って飲料水として安全にできるかはわからん
水源どうするかって話にもなるし
3人が起きるまで、試しに外で水場を作ってみようか?」
階段を下りて外へ出る
のぼりがきつく感じた城の階段、下りだと更に怖く感じる
攻めあがられないようにしてるというが、逆バリアフリーだよね
城の前は回廊まで十メートルほどで、そこまで広くはない
「とりあえず水場として小さいプールを作って水が生成できるか試そう
製作でできるとして、水場って英語で何て言うんだ?
池?ポンド?
いや、もっと小さいバケツとかから始めるべきか?」
阿部ちゃんに相談すると
「大は小を兼ねるって言いますし、思い切って大きいの作っちゃえばいいんじゃないですか?
プールくらいあれば、飲用できなくてもいろいろ使えますよね」
「確かに
でも腐らないかな?
生活用水って一人一ヶ月十トンあれば多すぎるし、大量にあっても流れがないと腐るし・・・・・」
しばし思案の後、思いつく
「流れるプールならどうだろう?」
動力さえどうにかなれば、人が入るわけじゃないし問題ない
水が流れれば腐りにくくなるし、よさそうでは?
「いいんじゃないですかね」
賛同を得られた
イメージ・・・・・イメージ・・・・・
「製作:遊泳場」
唱えると
目の前に巨大なプールが出現した
「・・・・・先輩、どこのプール思い浮かべたんですか?」
阿部ちゃんは頤を少し上げ、まつげ越しにそれはそれは寒々とした瞳でこちらを見ている
「え?去年行ったプールだけど?
流れるプールだし」
しらっと返す
「確かに去年一緒に行きましたけど・・・・・
これ、いくつもプールが分かれて、ウォータースライダーも波のプールもありますね
脱衣所も売店も監視台もあってって
・・・・・ここまで詳細に再現して作る必要、ありました?」
いやいや、プールといえばこれが浮かんだだけなんだよ
別に大きくしようと思ったわけじゃない
なのに細部まで再現されて、屋外の更衣室までできている
全てのプールには水が満たされ、ウォータースライダーは水が流れ、なんならでかい波まで起きている
動力、どうなってるの?
『魔素を使った機構で再現していますよ』
・・・・・理不尽極まりない
・・・・・待てよ
なんか景色に違和感あるんだけど?
「回廊、なくなっちゃってますねえ」
プールができた場所は、阿部城の回廊があったところ
第一警戒線となる外構の壁と門は残っているが、そこから城の前までがすべてプールに置き換わっていた
そりゃあ阿部ちゃんが絶対零度の視線を向けてくるわけだよね
初めて作った建物を消されたんだから
「本当に申し訳ない」
もう謝るしかないわけで
ため息をついた後
「・・・・・後で直してくださいよ?」
よかった、ご機嫌悪くはなってないようだ
とは言われたものの、できちゃったプールはどう処理すればいいの?
こちらも前後関係含め3-6共々再構築しました




