3-3「魔術を試してみる」
ベッドフレームを私らが作ろうとすれば
設計する
木を切って製材する
組み立てる
など、作る方法によってはいろいろな工程が生じるんだが
それらをすっ飛ばして製作:寝台という魔術で「ベッドフレーム」が出来上がっていた
こっちはこの世界の人は恐らく「作る」という過程・工程を理解していないで
ただこう唱えたらこういうものが出てくる、という天からのプレゼントみたいな認識なのだろう
その「こういうもの=成果物」の認識の違いが同じ製作:椅子ではっきりした
阿部ちゃんに向きなおり
「葉月さんにも確認必要だけど、多分使えるんだと思うよ、魔術
作りたい椅子を強く想像しながら製作:椅子って唱えてみて?」
長命種さんも興味深そうに阿部ちゃんを見ている
葉月さんから了承でたのか、阿部ちゃんは一息つき、上に向かって右手を伸ばし
「製作:椅子!!」
と唱えた
目の前には見事に椅子が出てきた
何故か彼女の愛車についてるバケットシートだったが
見ていた長命種さん、指さして一言
「えっと・・・これも椅子、でしょうか?」
そうだよねぇ、また違うのが出てきたらそれはそれで驚くよねぇ
賢者があの椅子しか知らないんだから、本当にあの椅子だけなんだろうし
想像力が結果を変えるなら毎日座って運転している愛車のシートが出てきて当然!
そんなことよりも、だ
「魔術使えたじゃない
魔法少女の夢が叶っちゃったかな?」
阿部ちゃんの目が輝く
「いえいえ、魔法スティックないですし、変身もできていませんよ!
一緒に戦う仲間も足りていません」
彼女の理想への道のりはまだまだ続くようだ
翻って長命種さん
シートが出てきたのは驚かなかったけど、やはり見たことがない形状であることに興味が湧いているようだ
座って回そうとしたり動かそうとしているが、その椅子は基本回らないし足で動かせないよ?
「ちょっと待ってね」
そういってシートを確認する
シートレールがついていたが、取り付けるボディがないので当然地面に直置き、少し斜めになっている
阿部ちゃんの車はスポーツタイプなので純正とはいえバケットシートタイプ
シートリフターなどはなく前後スライドとリクライニングだけだ
一応その機構も再現されているようだったので、前後スライドをと思ったが固定されていないのでレールが微妙にずれていてロック解除レバーが動かせない
仕方ないのでリクライニングレバーを引き上げると思ったより背中を強く押し当ててたようで、勢いよく長命種さんが後ろに倒れて
「うにゅ!」
これまた美人から出たとは思えない擬音を発していた
「ほんっと、ごめん!」
謝るしかないわけで
彼女は
「大丈夫です」
とは言ったものの、結構な勢いだったから若干顔がひきつっている
今度はちゃんと声掛けしよう
そうしよう
さて、これでまずは魔術が使えることは検証できた
しかも同じ魔術でも思い描くもので結果が変わることも
「もしかしたら・・・やってみるか」
呟いて試してみる
「製作:王城!」
思った通り、というか失敗するだろうと思って唱えたのだけども
成功して目の前にヨーロッパ調のでっかい城が出来上がってしまった
洞窟の中に城
魔王とか住んでそうじゃない?
そして・・・・・
長命種さんは目を見開き、顎が落ちそうなくらい口を開いてまたも固まっていた
阿部ちゃんはというと・・・不満そう
「先輩??」
こちらに向き直ると
「私、学生の頃発掘のバイトしたり、日本の歴史とか大好きなんですよね
なんで日本のお城にしなかったんですか!!!」
うん
だってまさか本当に作れると思ってなかったんだもん
家程度が出来れば御の字と思ったらこんな壮大な城ができるとは・・・
『ご主人様、ご報告です』
弥生さんだ
『この規模の魔術を行使したにもかかわらず魔素量が減っていません』
嘘だろ??
『この規模の魔術でまるで消費されないのは明らかに異常ですが、使っても減らないなら事実上無限に魔法や魔術が使えるということで、結果的に良いのではないでしょうか』
楽観的でなによりですね、弥生さんは
「製作:江戸城!」
すぐ隣で詠唱した人がいるんですよ、ええ
幸いぶつかって壊れるとか対消滅するとかなかったけど、ヨーロッパにある古城と城が隣接してできてるシュールさったらありゃしない
違和感、仕事しろ!




