3-2「世界観2 初魔法と魔法・魔術の詳細」
弥生さんからの回答
『地点とすれば三角錐世界の4面の内、1面にある唯一の大陸です
地球でいうところの東西南北で言えば南の端に当たります
洞窟は大陸を取り囲む連峰の一つにできたものですが、これは人為的に作られています
洞窟を出て徒歩で半日ほど歩けば最寄りの町があります
お気づきかと思いますが、面にも大陸にも町にも名前はありません』
徹底して名、とつくものが普及してないのはなんでだろうかね?
魔術ではベッドという私らにとっては品名がこの世界では構文の一つとしての認識だったし
なるほどねぇ
ところでなんで三角錐なんだ?
『それについては規制項目になっていますので、女神様に直接確認していただければと』
あれ?世界書庫全部見れるんじゃないんだ?
『ご主人様にわかりやすく言えば私はエンドユーザーでしかありません
権限レベルを設定されていれば権限外の操作ができないのと一緒ですね』
あれ?もしかしてこっちの記憶とか経験読めてる?
『はい』
よし、たとえ弥生さんが外部と直接やり取りができるようになっても、私の記憶や経験などプライバシーについては許可なく他人に公表しないように
『わかりました』
素直でよろしい
さて、阿部ちゃんのほうも落ち着いたのか、長命種さんのほうに行って話しかけてるね
頷いたと思ったら座ったから、座っていいかどうか聞いたのかな
私も歩み寄り長命種さんに声をかける
「ごめんね、作ってもらって
創るのにどういう制限があるとか知らないで簡単に頼んじゃったけど、大変だったんじゃないの?」
「今ここにあるもので言えば魔素の1/10を消費したくらいでしょうか」
ゼロからモノを創るんだからそれで済んでるのが凄い
やっぱり椅子も木製
ベッドフレームと同じ感じの仕上がりでやっぱり足はない
角材に近いものを並べて固定して座面と背面を作ってそれらをまた固定して、という見た目
成程ねぇ
「こういうのを手で作ったことってあるかな?」
「手で?どうやってですか?」
そうだよねぇ、原始的な刃物ではまずは木を切り倒すところから難しそう
縄文時代とか柱に木を使ってたけどどうやってたんだ?石斧か?
そうか、JC女神がモノづくりって言ってたのはこれか
魔法や魔術がどうやって普及したのかわからないけど、そもそも先に来るはずの知識や技術がないままでもモノが作れてしまう
それが例えば椅子だったら今ここにある形しか想像できないし、それを改良する術も恐らくないのだろう
なぜそんな歪んだ状態なのかはわからないが、今のこの【世界】では椅子と言えばこれ、ベッドと言えばこれという固定概念どころか固定形状でしかないのかもしれない
もしかしたら・・・
「長命種さん、ちょっとお願いがあるんだけど」
彼女がこちらを見た
「ケイ様、どのようなことでしょう?」
様付けにちょっとくすぐったさを覚える
「えっと、様はなんとなく偉そうだからなしでお願い」
「ではケイ殿、アヤノ殿ではいかがでしょう?」
「侍か!」「かっこいいですね!」
私と阿部ちゃん同時に感想を口に出してた
「まあ、それでいいや
で、魔素はまだ十分あると思うけど、火を出すということはできる?」
「はい、何かしらを燃やすのでしょうか?」
「いや、ただ火を出すだけでいいんだけど、出来る?」
「了解しました、では」
今度は人差し指を伸ばし一拍置いて指先に火が出た
空中に何もなく、だ
サイズはゴルフボールくらい
「ありがとう。その火を大きくしたものって出せる?」
「大きく、ですか?」
「そう、これくらいに」
そういいながら腕で大きな輪を作る
「いいえ、火はこれしか出せません」
「火を出すのは魔法になるのかな?それとも魔術?」
「魔法ですね」
思ってたことを口に出す
「じゃあ、ここにある椅子はもしかして魔術で
製作:椅子
とだったりするのでは?」
言い終わった途端目の前に椅子がでてきた
しかもその椅子は普段職場で使ってるいわゆる事務用椅子だ
金属フレームで高さ調整あり、ビニールを貼ったクッション
そして何故だかうちの会社では課長以上しか使えない肘置きまでついてる奴だ
ご丁寧に大手什器メーカーさんのシールが背中に貼られてる
阿部ちゃんがこっちを見て
「先輩、いつ魔法使いになったんですか?
てかなんで課長椅子?」
そうだよねぇ、うちの会社では課長席以上にしかない「あれ」だよねぇ、やっぱ
そして長命種さん、固まってる
私が出した椅子を見つめて完全フリーズ
目の前で手をひらひらと振ってもピクリともしない
「大丈夫?」
声をかけて少々、目をぱちくりさせて漸く正気に戻ったらしい
ただ、息も荒いしなんならただでさえ大き目な目がさらに大きく見える
「こ、これはなんですか?」
初めて見ただろうからね、課長椅子
「これ、私らが普段使っている椅子なんだよね
椅子、っていうのは長命種さんに作ってもらったこれのこと
私らの国では椅子と呼ぶんだけど、違う国ではチェアーって言うんだよ
椅子にもいろんなのがあって、これはその1つだね
試しに座ってみてよ」
説明はしてみたものの、試用を促しても動く気配はない
そうだろう、そもそも座椅子のようなこちらの椅子とは違うから、座り方すら理解できないのかも
「こんな感じなんだけどね」
座って見せる
普段肘置きがないから軽くぶつけたのはご愛敬
「背中が当たるところが動いていますが?
座ったまま向きが変えられるのですか??
え?そのままそこから動けるのですか??
なんですかこれは!?」
半ばパニックのように声のトーンが上がる長命種さん
うちらは学校でこれ使う授業の時は歩かずにこれで移動してたけどね
「大丈夫だって、座ってみてよ」
取って食われないとわかったからか、おずおずといった感じで彼女は座る
お尻を浮かせたり座り直したり、先ほどやったように回ってみたり移動してみたり徐々に速度が速くなって・・・
あ、椅子ごと転んだ
見事につんのめって
「むぎゅっ!」
顔に似合わない声が出た
「大丈夫?
ごめん、これこういったところで使うには適してない奴なのを忘れてた」
ここはほぼ屋外
ちゃんと見るとある程度は整地されているもののがたがた感が残る地面だ
椅子を回すなら問題ないけど動くには不適なのは当然か
「だ、大丈夫です
驚いただけです」
自分らの使ってるものがまるで違うものになったら興味をひかないわけがないよね
つんのめって顔を打ったのか、少し赤い
擦りむかなかったけど美人の顔を痛くさせたのは心が痛む
それよりなにより
なんで私が賢者さんを真似てしゃべっただけで椅子ができた?
それのほうが問題だわ
『ご主人様がこちらの【世界】に来るときに女神が魔力体への変換をしたと思いますが?」
そうだったね
『それによって魔法と魔術が使えるようになりました』
あ?そんな簡単に?
『基本的にこちらの【世界】の生物は魔法体を持っていますので使える素養はあります
ただし魔法については認識でできる分どんな生物でも行使ができる可能性がありますが、魔術については基本的に構文を唱えられ且つその魔術が発生する効果を理解・想像できる必要があります』
成程
もしかしてその効果ってのは・・・・・
『今の椅子のように理解できる、想像できるものであれば術者によって魔術行使の結果が変わってきます』
あらまあ、想像力次第ってことかな?
ちなみに消費魔素とかの制限とかは?
『ご主人様の魔素量が正確に認識できていません』
んん?
『こちらの人間では5桁が最大なのですが私の認識できるのは10桁まであります
しかしご主人様の魔素量は9,999,999,999と認識していましたが製作:椅子を詠唱後も数字に変化はありませんでした
ですので魔素量の表示が不正確なのか、それとも魔素消費が通常より大幅に少ないのか、それらの両方なのかわからないのです
従いまして上限その他が存在するかは今後要検証、と考えます』
ということは、阿部ちゃんも同じってことかな?
『恐らく』
よし、それでは。
「阿部ちゃん、魔法少女になってみない?」




