15-5「異質と不気味」
長のところに全員集合して情報を交換する
人影はなし、人の形跡もなし、ただただ無人の建物があるだけ
これはどの地区でも共通だった
今のところ手掛かりはなし
改めて長にも聞く
「ここにはどれくらい住んでいるのかな?」
「わからん
先代の時、はるか昔になるがその頃には既に住んでいたと聞いている
塒としては若いものどもは岩山の中をあちこち移動しておるが、わしらはずっとここを使っておる」
「シャールカーニが生まれた時から居たと言ってたけど、それ以前からだよね?」
「そうじゃの、わしが幼き頃ここに移って来たはずじゃがいちいち数えておらんのじゃ」
最低でも5000年、か
そりゃあ、風化するようなものだったら跡形もなくて当然かもしれない
「当時のことでここについてなにか覚えていることや、見た記憶とかない?」
少々動かなくなった
思案顔、なのか?
鱗が多い顔だと流石に表情が読めない
「ううむ、そう言えば最初の頃はなにかしら音がしておった気がするの」
音?
「人が居るかとも思ったのじゃが魔素も感じなかったし、気のせいかと思ったのじゃがだいぶ長い間聞こえておったのぅ」
なんだろうか
場所などは覚えているかな?
「この塒の中じゃったぞ?」
ドーム内なのか
「少し探して歩いてもいいかな?」
「好きにするがよい」
「なにか気が付かれたのですか?」
フレイアが興味深そうに聞いてくる
「この建物やさっき見回った建物も、私が居た世界のものに似ては居るんだよ
実際、町の管理棟が似た感じじゃない?」
「言われてみればそうじゃの、わしらは岩山だとしか思っておらなんだが実際には人の使う建物じゃったのか」
シャールカーニはそう言うが、ドラゴン形態だとサイズも違うし興味なければ調べもしないよね
「少なくとも人サイズの生物か、それに近いものが使っていたんじゃないかな
長が来た頃に人の声が聞こえてたってのは、その当時に通信機能みたいのがまだ機能してたんじゃないかな?って思ったんだよ
ここにその形跡が残ってればなにか手がかりになるかもしれないし」
比較的明るいドーム内を探索する
ドームと言えば日本だと野球がメインのスタジアムを想像するが、ここは屋根のある陸上競技場に近いかもしれない
外周360度からドーム中央が見えるが、中央部はまるで中南米の遺跡によくある祭壇のように高くなっている
なんか、本当に生贄でも捧げてたんじゃないか?
そう思えるくらい似ている
マイカから聞き出した魔王達が名前持ちで風呂にも入ってる件を鑑みるに、町長達やドラゴン達と文化がまるっきり違うどころか、まさに【世界】が違っているのではないか?
古い文明が滅びたところに別の生態系がすっぽり入れられた
で、旧文明の生き残りが魔王達、とか
そう考えると辻褄が合いそうにも見えるが、今度は万単位の年月を生きているドラゴンの証言はどうなんだ?って話になる
日本の縄文文化が異常に長かったと言って10万年とか言われているが、それを除けば数百年からせいぜい数千年程度がその文化形態の継続期間程度でいろんなものが切り替わって文化そのものが世代交代している
同じようなスパンで考えると、もし魔王達が旧文明だとすれば発展度合いが低すぎないか?
それとも物質文明ではなく精神文明だと数千年数万年でもこんなものなのか
それに、魔術
製作:寝台のように「ベッドという固有名詞を知らない」にもかかわらず魔術構文として定型化されているものが口伝で伝わっている、でも最初この魔術を設計した者はそもそもベッドをどうやって知った?
現代地球の英語圏での単語が偶然にも異世界で同じ意味で通用する
そんな確率はどう考えても高くはないだろう
どこかで大転換期でもあったんじゃないかね?
それをJC女神は知らないのか知ってて黙ってるのか
はてさて
一通り中を見回り、ゲート付近へと戻る
中に入る際に違和感を感じたのはなんだったのだろう?
「ここに入る時って、魔術とかで制限とかかかってたりする?」
シャールカーニに聞いてみたが
「特にないはずじゃが?」
彼女は違和感を感じてないらしい
ドームが暗いので内側からだと逆光になるので一旦外に出て眺める
角型のゲートだがドアは存在していない
よく見るとなにかしらカメラレンズらしき光を反射するものが見える
近づいてよく見ようとして、ギョッとした
眼球だった
眼球がゲート2列ずつ、まさに無数、全周配置されている
全方向からステレオ撮影しようとしているかのようだ
少し離れたところにいたフレイアに
「この辺を歩いたり飛び跳ねたりしてみてくれる?」
と頼む
彼女が動く
上に下に前に後ろに、という動きと共に埋め込まれた眼球が一斉に動く
まだ生きているのだ、この眼球は
なかなかに不気味なものですよ、100はくだらない眼球が一斉に動くのを見るって
入場時の違和感はこれか
視線を感じたのだろうが、まさかこんな数とは
「これは大きさから言えばドラゴンの眼球よりも大きいですね」
フレイアも頼んだ意図に気が付き、現物を見遣る
サイズとすればサッカーボールくらいか?
そのサイズの眼球はもはや不気味を通り越して異質な感じしかしない
カメラレンズではないところも気味が悪い
機械なのか、生体部品なのか
いずれにしてもこれもまたオーバーテクノロジーだ
「長年出入りしていて気が付かなかったの?」
シャールカーニに問うが
「飛んで出入りしてるから、邪魔しなければこんなところいちいち見てるわけがないのじゃ」
ごもっとも




