ZERO-DAY1「出て行ってくれ」
「30歳の誕生日までに、退寮してください」
人事部発令、部長承認印あり
課長経由で、係長から直接手渡された書類
それにはこんな文言と、退寮期限が明記されていた
所属部署の上司全員が了承している、正式書類
組織人としては逆らいようがないほど、完璧な書類
―仕方ない
会社規定で入寮定年ってものがありまして
我が社の場合、それが30歳の誕生日って訳
さて
寮は規定で出なきゃいけない
けど、仕事柄夜中に帰ったり、夜間や土日祝関係なく
急に呼ばれたりもあるわけ
家賃が高いから
条件が良いから
と、勤務先から遠くに行くのも憚られる
いや、そんなこと言ってるから、便利屋扱いされてるのだ
わざと、片道1時間以上のところに住んだほうがいいのか?
そうしたら流石に、会社側も考えるだろ
と企んだりなんだり
そんなこんなもあり、関連部署と各現場のお偉方に
「社則(ここ重要!)で寮を出なきゃいかんので
就業時間以外は物件探すから絶対に呼び出すな」
と現場に「強く」通達するよう、書類を渡してきた
わざわざ書類作って持って行ったのは
言った言わない
聞いてない
と言うつまらないトラブル予防のためだ
仕事終わりや休日に、不動産屋巡ったり
移動中に入居者募集物件とか探してみるも、全て条件が今一つ
一人暮らしは、20台前半の出向で3年ほど経験済みだから
単身で生活する、そのこと自体は特段問題はない
ただ、折角寮から出て、新生活をするならば
生活環境そのものは、少しくらい良くなってほしい
欲を言えば、庭とDIYできるようなスペース
車庫とかついてる、一軒家がいいんだけどな・・・・・
だが、物件探しは難渋したまま2か月が過ぎ
退寮の期限が迫っていた
荷物は、車に乗せて何往復かで終わる位しか持ってない
だから、引っ越し業者を手配しなくても良い分、まだ楽だ
人生で、どれだけ引っ越してきたか解からない位なので
転居先さえ決まれば、すぐにでも引っ越しできる
一旦、適当な物件で妥協し、改めてきちんと家探しするか
そんな事を考え始めた矢先の、週末始業前に
一通のメールが来た
「家はめっちゃ古いけど、おっきな庭とおっきな蔵が
付いてる物件があるんですって
良ければ仕事終わった後に、ごはんでも食べながら
説明しますけど、今日って空いてます?」
声を掛けていた、地元出身の甘いモノ巡り仲間の後輩からだ
店はおまかせでお願い
と短く返信して、仕事を始めた
夕方まで珍しくトラブルなく、すんなり定時退社が出来た
急ぎ足で、昼休みに連絡があった店に向かう
店の前には見慣れた車が止まり、運転席に後輩が乗っていた
ドアが開いたので、軽く手を上げ
「おまたせ
手間かけてごめんね」
と声を掛ける
「今日はもちろん、先輩の奢りですよね?」
ちゃっかりしてらっしゃる
まあ、こちらも頼み事してるわけだしと、了承する
待ち合わせしたのは、静かな立地の和食店
上品な佇まいで、半個室ばかりの作りだ
少しだけ値が張るけど、人と会うにはちょうどいい塩梅の
静かさと暗さに、好んで使ってる人も多い
顔見知りの店員に
「毎度様、奥空いてるかな?」
と声を掛ける
案内された席は、店の正面から入って一番奥の席
別に、やましい話をする訳じゃないが
人目を気にしなくて良いのは、少し楽だ
後輩にメニューを渡し
「面倒かけて悪いね
頼み事してるし、好きなもの注文していいよ」
そう言うと、にこにこしながら
「ありがとうございます!!!
遠慮なく注文しますね!」
後輩はメニューをにらめっこをしながら
悩み始めた
なんとか決まったようなので、様子を見に来た
いつもの店員に声をかける
遠慮なく好きなモノを、好きなだけ
注文してくれましたよ
注文を終え満足した後輩は、バッグから封筒を取り出して
写真と地図を見せる
「場所は市内で●●町
会社からもそんなに遠くないですね
古墳?って言われてる丘と大通りに挟まれてて
閑静なのか五月蠅いのか微妙なところですけど」
地図を見ると、確か教育委員会の看板があって
古墳かも?
って、あいまいな説明を見たことがある
家自体は古い様式
和の建築だけど、かなり結構大きく見える作りだ
後輩曰く、母親の友人が所有者だけどほぼ放置で
物置代わりにしてた、だとか
税金が勿体ないので、安くてもさっさと売却したい
まずは見て貰って、との希望だとか
現物見なきゃなんとも言えんけど、それ以前に
家付きの土地を買う、って先立つものはどうしよう?
今日は金曜
明日は天気も悪くない予報なので
双方とも急ぎだし、物件見るには悪くないだろ
後輩から食後、連絡して貰うことになった
注文したものが来て、話をしながら食べる
「明日は久しぶりに遊びに連れてって貰おうと
思ってたんですけどねー」
後輩はぼそっと言い出した
休日出勤上等のプロジェクトばかり続いて
恒例の甘いものツアーもやってなかったし
気持ちはわからないでもないけど
現状最優先なのは寝床
だけども、後輩のご機嫌を損ねるのも
得策ではないだろう
「仕方ない
手間賃代わりに食後
別の店へ、甘いもの食べに行こうか?」
二つ返事で返された
食後、後輩が持ち主に連絡し、内見出来るよう
明日の朝には、鍵を預かっておいて貰うことになった
・・・・・その分、手数料と言って
店で一番高いデザートをねだられたが
翌日、約束の10時
既に鍵を預かってくれてる後輩を拾って、物件に向かう
迎えに行った後輩の家からは、車で20分
今の寮から10分ちょっと
道路を挟んだ竹林は、結構広い面積のようで、建物などは一切透けて見えない
家の周囲は結構開けてるが、柵を挟んで古墳?と言われるものが隣接
広々とした土地に囲まれ、ポツンと建つ結構目立つ家だ
家は確かに古い
写真だと大正くらいと思っていたが
下手をすれば、江戸末期か明治初期位に見える
古びてる、けどがっちりした作り
某昔話に出てくる庄屋さんとか、1からモノ作りをするアイドルが移築した古民家みたい
全体的に黒に塗られ、雨戸が全て閉まってるのもあってか
一見要塞みたいな雰囲気
鍵を預かってきた後輩が錠前を開け、家の中に入る
メーターボックスと分電盤があったので確認したが、予想通り電気メーターが撤去され
玄関から奥は陽の光が入らず真っ暗
仕事用のナップザックを持ってきていたので、中からLEDライトを出して、後輩にも渡す
しょっちゅう使うので、何個か積んでてよかったわ
土足OKって事を言われたけど、流石に人様の家だし、今後、自分が住むかもしれんし
念の為、シューカバーを持ってきておいた
初めて使う後輩が履くのを手伝った後、自分も履いて家の中へ
どれくらい人の出入りがないのか
床板には埃が堆積して、いくつか足跡が見えた
その足跡すらも埃が積もってきている
古い家だから気密も低いのか
色々なものが侵入しやすい故に、余計に堆積したのだろう
まずは窓側に向かっていく
縁側がぐるっと回って、雨戸があった
ガラス戸と雨戸の二重のようだ
しかし、どちらも建付けも悪くなって動かない
いくつかの窓枠を、順に力を込めて動かしてみる
ようやく少しスムーズなものが、見つかった
多分10年、20年単位で閉じられていた縁側
隣接した部屋にまで、陽が差し込む
その陽が差し込んだ先にある壁には、場にそぐわないものを見つけた
後輩は、それを凝視したまま、その場で固まってる
漏れ入る陽を受け、鈍色に鈍く光る
天井まで届く、巨大なレリーフ
それも木造の家の、畳部屋に
この世界のものではないのでは?
レリーフに感じる、強烈な違和感
「なんですかね?これ」
ようやく、我に返った後輩が抱いた疑問は尤も
私も同感
ここまで異質なモノがあって良いわけがないだろ
思いついたのを都度ガンガン打ち込んでるだけです
プロットとか何にも考えてないので矛盾とか気が付いたら知らんぷりして直してるかもしれません
世界観も適当にでっち上げたのでそのうち見直しするかも?
お目汚し失礼




