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第六話 東の街、イースト

 あれから、一見するとバリキャリな彼女ーーキャリさんーーに連れられ、手を握られ、安全にそして快適・・・かは分からなかったが、何とか街までついた。



「ミヤビくん、着きましたよ。ここがベータ王国東の街、イーストです」


 

 防御壁に囲まれた大きな街だ。

 そして外からでも感じられるほど活気に満ちている。

 こうして見ると、ようやく、安心できる場所についたなぁと、なんともいえない達成感に包まれた。

 まあ実際のところ、男であるこの身が果たして安全であるかは正直わからないが、とりあえず魔物はいない。



「ではあちらが入口ですので、そちらへと行きましょう・・・と、その前に、こちらを」



 そう言うと、キャリはミヤビの顔が隠れるように、布を被せてきた。

 恐らく、男だとバレたら大変なのだろう。

 こうして二人、改めて門へと向かった。

 


 街へと通ずる門の前へと来た。

 それはなんとも異世界チックで(実際に異世界なのだが)、ミヤビは得も言われぬ感慨深い気持ちになった。

 更にそこには恐らく警備団みたいな人が立っているが、なるほど、どうやらここで身分確認や手荷物検査的なのをやっているらしい。

 そして今は偶々空いているようで、すぐにでも中に入れそうだ。


 と、キャリがちょうど立っている警備の女性に、親しげに声を掛ける。



「ナナ、お仕事ご苦労さまです」


「やっほ〜キャリ〜。用事終わったの?」


「はい、お陰様で無事に」


「だからオフモードなのね〜。まぁとりまお疲れ〜」



 そんな感じで、二人はかなり仲が良さそうだ。

 だがミヤビはそんなことは今はどうでも良くて、それよりも気になっていることがある。


(あの人、あの金髪の警備の人・・・綺麗だ・・・じゃなくて、なんかこう、ギャル因子を感じる! 異世界ギャルだ!!)


 勿論ポーカーフェイスで、しかし頭はそんなことしか考えていないのだ。

 と、二人の会話も一区切りつき、すると警備の人ーー異世界ギャルーーの注意がこちらへ向く。



「てかさ、その隣の人は?」


「彼は先程森でーー「え待って、今”彼”って言った? 私の聞き間違い? でも今”彼”って・・・」


「え・・・えぇ、たしかに彼と言いましたがーー「彼って・・・えっと、つまり・・・男!? もしかしてキャリのかかか、彼氏!?」



 反応が早い上に食いつきがすごい。

 まだ”彼”としか言っていないのに、話を遮り即座に聞き返し、ついにはもう彼氏だとか何だとか、そういう方面へと話が飛んだ。

 更に、こんな感じでやたら興奮気味に、且つ大声で喋るもんだから、他の警備団の方々も揃って出てきてしまった。

 言うまでもなく皆、男に餓えている目をしている。

 ただ”男”という言葉だけで、ここまで呼び寄せられるのかと驚いた。

 そして、こうしてみると、やはり何度も言うようだが、男ってレアなんだなぁと、ミヤビはしみじみと感じだ。


(そういえば、シェラさんも、「男はいるにはいるんだけど、顔がいいと貴族やらの屋敷や超高級な娼館に連れてかれるから、結局なかなか男に出会えないのよね。それになぜか男って寿命が短いから、数は少ない上にすぐに死んじゃうの。だから運が悪いと一生で一回も出会わない人もいる」とか、「妻の同意さえあれば、男は何人でも妻を持つことができる」とか言ってたな・・・子孫を残すたために)


 と、話は戻って、想定外にも人が集まってきたせいで、少々身動きが取りづらくなってきた二人だが、とりあえずキャリが自体を沈静化を試みる。

 


「ナナ、彼は確かに男だけどーー「ね、ねぇキャリ、アタシたち親友でしょ? だからさぁ、今度、勿論キャリの後でいいからさ、彼を貸してくれないかなぁ? てか結婚させて!!」



 珍しくキャリさんが慌てているが、そんなのはお構いなしに、ナナと呼ばれる警備の女性は目を血走らせ、半ば発情しているが如く冷静さを欠いて、キャリの手を両手できつく握り懇願する。

 それに便乗する形で、「私も私も」と周りの女性達もむらがる。


 すると、そんな混沌としたところへ、恐らく彼女たちの上司であろう、小太りの中年(勿論女性)が騒ぎを聞きつけやってきた。



「君たち、静かにするんだ。そして持ち場に戻るんだ。業務中だぞ」



 そう正論を彼女らへと振りかざす。

 すると当然不満の声が上がるが、上司であろうその人は()()をチラつかせて黙らせる。

 そしてミヤビの正面に向かう。



「君は男なのか? ・・・顔がよく見えないなぁ。そんな男とも女ともわからない奴を街にいれるわけにはいかないんだがなぁ」



 そう言って、彼の顔を覗き込むようにする。

 なるほど、どうやら顔を見せろとのことだ。

 そして確かにもう周囲にはバレてしまっているので、ためらう理由はなかった。 


 ミヤビは顔を覆っていた布を取り、その美的で暴力的なまでの顔を世界に晒す。

 

 一瞬の静寂の後、警備の方々は各々発狂し始めたーーそのあまりの美しさに。

 恐らく彼女らの多くは、生まれてこの方男など見たこともなかっただろう。

 そんな存在に恋い焦がれ続け、ようやく現れたのがこれほどの顔面なのだ。

 誰だって、抑えが効かなくなるだろう。

 

 そんな中、中年の小太りは比較的冷めた感じで、かつある意味冷静に、だがニッチャリと笑いミヤビに近づく。



「男であることの確認は取れた、が・・・君、身分証は持っているのか?」


「それは・・・」


「身分を保証されていない君を入れることはできないなぁ」



 どうやら身分証なるものがないとだめらしい。

 というよりも、考えてみればそれは当然の事だ。

 現在のミヤビは言うなれば、顔を隠し、パスポートを持たずに別の国に入国しようとした不審な輩に他ならない。

 そう考えると、怪しまれても仕方がない。



「では、私が保証人になります」


 

 そこでキャリはすぐに声を上げる。

 


「普段ならばそれでいいのだが、今回は事情が事情なだけにねえ・・・。なんでも某国で王家の関係者の男が逃げ出したとか。・・・それが彼でないとも限らないからねぇ。ギルドの職員ぐらいでは、万が一の時に責任がとれないだろ?」


「くっ、それは・・・そうですが・・・彼は怪しい人ではありません!」



 一瞬スケールの大きな言葉に怯みながらも、キャリは何とかしてミヤビが入れてもらえるよう必死になって掛け合う。


 するとその小太りは、「分かった分かった」と言った感じでキャリを宥める。



「まぁ私も、彼を入れてあげることには賛成だ。そして、ここからが相談なんだが・・・君が私に誠意を見せてくれるのであるならば、私が保証人になってやらんこともないが・・・どうする?」



 そう言って、またミヤビを見てニッチャリ笑う。

 なるほど、どうやらこの小太りは謂わば、異世界版キモおぢならぬ”キモおゔぁ”のようだ。

 

(あーなるほど。確かに、うちの学校にもこんなのいたなぁ。あの体育教師の・・・島田・・・だっけか? あいつも女子をそういう目で見てたなぁ)


 そんな遠い目をしていると、キャリが「ミヤビくん、街に入るのは諦めよう。こんな奴が居るところなんて・・・」と小声で説得してくる。


(確かに、実際のところ危ないんだよな・・・なんか変な称号だかのせいで、女性に対して圧倒的に不利だから、多分襲われたら確実に・・・うん)


 そうして暫し黙り込んでいると、キモおゔぁは、「悩むのも仕方がない。ならば一旦あっちの部屋に入らないか? 立っているのも辛いだろう?」と言って、いよいよ行動を開始してきた。


(・・・街に入るだけなのに、なんでこんなに面倒なことが起きるんだよ・・・)


 そう現実を憂いていると、思わぬ救いがやってきた。



「彼の身元保証人には私がなろう」



 防御壁の内側、つまり街の側から、そんな声がきこえた。



「こ、この声はっ!!」



 するとそれに、キモおゔぁが即座に反応し、振り返る。



「はじめまして、美しき君。私はこの街の長を務めている、ユイという者だ」


「えっと、はじめまして」



 このバリバリの主人公登場シチュで、颯爽と現れたのは、王子様(女性)だった。



「うん、よろしくね。そして改めて、彼のすべてに、私が責任を持とう!」

 

 ミヤビは彼女の不意の笑顔を見て思った、かっこいいと可愛いの最適解だ、と。

"ゔぁ"ってすごく強者感ある。

そもそもVの発音がかっこいい。


次回もできるだけ近いうちに・・・頑張る

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