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第零話 異世界のハーレム

「貴様をこの私、アルファ帝国皇帝・エンペラー=オブ=ザ=ハーレムの夫とすることを、ここに宣言する!」   


 美しい装飾の施された椅子に座る、美しくも凛々しい女性が、今目の前で呆然と座り込む黒目黒髪の美男子に、そして周囲に向けて、高らかと宣言する。

 それとともに、周囲からは大きな喝采が起こった。



「私の夫となれること、光栄に思うがいい!!」


「・・・はぁ!?」



 遡ること少し前ーー。



 とある高校にて。


「ーーと、今日の授業はここまでだ。しっかり予習しとけよ」


 授業の終わりを告げるチャイムとともに、黒板に向かっていた教師は潔くチョークを置き、教室を出た。

 それと同時に数人の男子たちが早くも騒ぎ始め、いつもの昼休みが始まった。


 そして、窓際に一人静かに本を読んでいるこの男子高生(はな)(みやび)(17歳)こそ、まさにしばらくの後、厄介事に絡まれる男である。


 さて、昼休みということで、周囲のみなはそれぞれ友達と集まってご飯を食べだした頃だが、彼の周りにはそんな人影はまるでなく、彼も気にせず本を熱心に読んでいる。 

 だがこれは別に嫌われているわけではなく、むしろ逆、彼は彼なりの深い理由があるのだ。

 端的に言うと、父は俳優で母は元グラドルという、顔面ハイスペックな両親のもとに生まれた一人息子であり、言うまでもなく顔面超ハイスペックだった。

 特にキリッとした目元に、どこかミステリアスでクールな雰囲気は、数多の女性のみならず、クラスメイトの男子さえも魅了する。


 ではそんな彼がなぜボッチ状態なのか、それは簡単、皆が牽制し合っているからである。

 つまるところ、この学校の女子及び他校の女子さえも、彼とお近づきになりたいと常々狙って入るものの、女社会は難しいもので、「どこどこの誰々が雅様に話しかけてた」などと誰かがすぐに話を広め、最悪いじめへと繋がる。

 更に難しいことに、男子もそれを恐れて一度距離を取ってしまったため、再び近づこうとするならば女子の反感を買いかねないと、どうにも身動きが取れなくなったのである。

 そんなこんなで、彼の美貌が逆に人を寄せ付けない結界を作ってしまったのだ。


 と、廊下から他クラスの女子が雅を見に集まってきた。

 


「見て、雅様があんな夢中に本をお読みになっているわ」

「あっ、今少し笑った! 笑顔ちょーかわいい!」

「てかなんの本読んでるんだろう? ブックカバーが邪魔でタイトルわからないじゃん!」

「でもきっと難しい小説だよ! 医療ものとか、ミステリーものとか!」



 そんな感じで外野が盛り上がっているが、残念、彼はそんな本など読んでいない、というよりも、彼は現在漫画を読んでいるのだ。

 そして、別にクールに振る舞っている気もサラサラなく、彼の内心はこんな感じだ。



(うん、まじでセツちゃんかっこよ! やっぱ異世界だなぁ。こんな可愛いのにこんなカッコいいって・・・惚れる)



 普通に心のなかで悶えている。

 そう、読んでいるのは「異世界チートは標準装備」とかいうゴリゴリの異世界ものなのだ。

 そして中身も、まあある意味ミステリアスではあるが、その本質は厨二心である。

 つまり彼の実態は、勉強も運動も卒なくこなし、普段は寡黙なイケメン男子兼趣味はアニメ鑑賞、そして憧れは異世界転生して必殺の魔術と剣技で魔王を討伐したあとは、愛する妻とスローライフを送りたいと願っている男子高校生なのだ。



(ってやべ、そろそろご飯食べないと!)



 時計を見ると、昼休みはもう半分しかない。

 彼は漫画とお弁当を携え、教室をあとにした。

 


 急いで屋上へとやってきた。


 漫画とかだとよく、屋上で青春しているシーンは幾度となく見るが、現実の屋上なんてものはそんなに広くないし、そもそも生徒は立入禁止だから、なんのイベントも起きないという、実は最も不遇な場所なのだ。

 そして勿論、この学校においてもその不遇対応が変わることはなく、生徒立入禁止だ。

 だが彼は屋上にやってきた。



(なんか俺が歩くと道が開けるんだよなぁ・・・もしかして、嫌われてるのか? まぁ、なんでもいいけど)



 違います、それはいわゆる”好き避け”というやつでしてーー(説明略)。

 しかし気にせず、お弁当をさっさと広げ、漫画片手におにぎりを頬張る。



(しっかし”スタダ”のキャラで誰が最推しかって言われたら・・・どうしよう? ・・・やっぱセツちゃん、いや、クイーンさんのもふもふ堪能しながら甘やかされるのも悪くない・・・いや、寧ろいい! てか甘噛されたい!) 



 そんな悶々とした気持ちのせいか、自然と物を口に運ぶペースが早くなり、おにぎりをあっという間に完食、それと同時に、早くも予鈴がなる。

 そろそろ教室に戻らなければいけない。

 


「もうそんな時間か・・・漫画読んでると普通に時間溶けるからなぁ。もういっそサボるか?」 


 

 そんなことを考えながら、屋上をぼーっとふらついていると、ふと遠くのなにかが気になった。

 本当になんとなく気になった。

 なのでつい、もう十分経年劣化した手摺に手をかけ、少しだけ身を乗り出してしまった。

 するとふと、先程入口のところで見た注意書きの看板を思い出した。 



「ーーあっ」



 しかし気づいたときにはもう遅い、はやくも体が宙に投げ出されてしまっていた。

 地面がすごい速度で近づいてくる。

 

(これ、死んだわ・・・せめて来世は異世界で魔法が使える人生でありますようにーー)


 潔良いのか悪いのか、すぐに彼は来世のことを考え始め、目をつむり、抗うのをやめた。

 そして自然と、意識が虚空へととんでいった。



 ーーとなる者よ、異世界より来たれーー



(・・・何だ、今のは? ・・・それになんか・・・フワフワする・・・)


 しばらくして、死を覚悟してどこかへと消えていた意識が、また徐々に戻ってきた。 


(・・・・・・意識が・・・? これは死んだ、のか?)


 もし死んだのであれば、これが死後の世界というやつなのだろうか。

 そう思っていると、微かに誰かの声が聞こえてきた。

 


「誰か・・・いるのか?」 



 死を覚悟した身、とはいえ、自然とその声へと向かって、意識が覚醒する。

 そして理解した、まだ死んでいないと。



「・・・よし」



 雅は思い切って目を開けてみた。


 すると雅は、目の前に、たいそう立派な椅子に座る、そうまるで王様のような容姿とそして風格の女性と目があった。

 「美しい」そんな言葉が自然と出てきた。



「「「「おぉ〜〜」」」」



 すると突然、大小さまざまな歓声が上がる。



「流石は皇帝陛下!! 召喚は成功です! これほどまでの美しい黒目黒髪、それに・・・」

「えぇ・・・容姿も申し分ない」

「これならば我が国の将来も安泰、いや、それどころかさらなる繁栄も有り得ます!」



 そうして周りから次々に、嬉々とした声々が湧く。

 「何が起きたんだ?」と、雅はまるで今の状況を理解できていないが、少なくともここは今までいた世界とは違うように感じられた。



「皆静粛に」



 目の前の女性が一言そう言うと、この大きな空間は、直ぐ様静寂に包まれた。

 そしてまた、彼女と目が合った。

 


「私はエンペラー=オブ=ザ=ハーレム、この国の皇帝である。そなた、名はなんと申す?」



 初見だとただの同年代くらいの女性かと思ったが、どうやらそうではないようだ。

 そればどころか言葉で形容し難いが、覇気があり、声も力強く・説得力があり、まさに人を導き従える皇帝といった感じである。

 先程言ったとおり、同じくらいの歳であるにも関わらず、これほどまでに堂々としているとは、と、雅はとても感心し、僅かに憧れの念も抱いた。

 そしてここは取り敢えず、素直に従っておいたほうがいい、そう思った。 



「・・・私は華雅です」


「う、うむ。ではミヤビと呼ぼう。異論はあるか?」


「いえ、全くございません」



 不敬にならぬよう必要最低限の返答だけしたのだが、それがどうやらよりクール・アンド・ミステリアスさを助長させたようで、皇帝もまたその周囲の人達も、一瞬だけそのセクシーさに顔が緩んだ。

 しかし雅はそうとは知らず、いやそれどころか、歓喜や不安といった感情が収集つかずの状態になっており、心臓はバクバクだ。



「ではまずは、一応聞いておくが、妻はいるのか?」


「・・・いえ、妻はおろか恋人すらおりません」


「そうか、それは良かった! とは言ってもわざわざ召喚したんだ、妻がおっても結果は変わらなかったがな!」



 そう言って、皇帝は豪快に笑う。


(召喚・・・俺は落下中に召喚されたから助かったというわけか。・・・ん? てことはやっぱり、ここは、異世界!?)


 皇帝の「召喚」という言葉で、雅はここが異世界であるということの確信が持て、いよいよ喜びが不安を打ち負かした。

 

(異世界召喚されたってことは、やっぱり魔王と戦うのかな? それに俺は剣と魔法どっちが得意なんだろう? ワンチャンどっちも!? まぁどっちでもいいや!)


 と、皇帝が今色々と話しているが、彼の心はもうここにあらず、今か今かと「魔王」的なワードが来るのを待っている。


 するといよいよ皇帝の話も一区切りつき、これから大事な話があるとのこと。



「では最後に、貴様を召喚した理由についてだ。貴様をここに召喚した理由は他でもない、この国の未来のためだ!」



 やはり予想通り、国を助けてくれ的な要件であるようだ。

 となるとやはり、異世界で国を助けると言ったら勿論()()しかない。


(勿論ですとも! ・・・さぁ皇帝様、はやく俺に魔王を倒せと指示を出してくれ!!)

 

 そして告げられたのはーー



「そうつまり、貴様はこの由緒ある我が一族の血を絶やさぬよう、つまり皇帝である私と子を成し、そして帝国にさらなる繁栄をもたらすために呼ばれたのだ!」


「はいっ! 勿論ですと・・・も?」



 おっと、これは予想外であった。

 流石に動揺を隠せず、少しばかり冷や汗が出てきた。

 子を成す?繁栄させる?

 それはあまりにも怒涛の展開であった。


 更に、そんなK.O.寸前のミヤビに、皇帝はおそらく無意識のうちに追撃を与える。



「それからお前は世界一かっこいいし可愛いし、だから私の世界一の夫兼心の癒やしの存在で、私と24時間ずっと一緒にいなきゃいけないの・・・だからもうすぐ君を私の部屋に監禁して、一生愛でる対象になるの・・・あぁ・・・好き」



 そんな事を早口でボソリとつぶやいた。

 他の者達には多分理解できなかっただろうが、残念ながらミヤビは、本当にたまたま聞き取れてしまった。

 

(えっ・・・監禁されるの? 異世界は? 魔法は?) 


 ミヤビは異世界歴未だ10分強にして、早くも夢や憧れを根こそぎすべて持っていかれそうになっている。


「では皆のもの、よく聞くが良い! この男ハナ=ミヤビを、この私、アルファ帝国皇帝・エンペラー=オブ=ザ=ハーレムの夫とすることを、ここに宣言する!」 


「・・・はぁ!?」


 つい、心からの叫びが漏れてしまった。

 本当に、そう、思ってたんと違かった。

 

 無常にも、どうやらこの場に味方は一人もいないのだ。

 そしてミヤビの困惑を助長するように、拍手喝采が彼を包み込んだ。

ストレス発散を兼ねて脳死で書いてる作品です

あと導入長くてすいません

<第一話 変態なエンペラー>は明日更新します。

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