4話 ただいま
⸺⸺ステリア城⸺⸺
「シェリー様! おかえりなさい!」
そう言って城のロビーに控えていた使用人らが一斉に頭を下げる。
私がいたのは10年前だから、私のことなんて知らない人も多いでしょうに。なんだか申し訳ないわ。
「皆、ありがとう。ただいま」
私はクラウスの後を歩きながら、使用人らと挨拶を交わしていく。
そして玉座の間へと辿り着くと、私の叔父であるヨゼフ国王に、ナターシャ王妃。そして従姉弟のアルフォンス王子に、私の両親が私の帰りを祝福してくれた。
「シェリーおかえり!」
「おかえりなさい!」
「みんな、ただいま! ……あっ」
私は懐かしさのあまり、不覚にも涙が溢れてしまった。
「ごめんなさい……」
慌てて涙を拭うと、隣からスッとハンカチが差し出される。
「クラウス、ありがとう……」
私はありがたくそのハンカチを借りて、涙を拭いた。
「まぁ、シェリーちゃん……辛い思いをしたのね、可哀想に……」
「すまないな、シェリー。私たちが婚約をさせたばかりに……」
気付けばお母様もお父様も泣いていて、私よりもなだめるのが大変だった。
⸺⸺
皆で応接間へと移動をし、まずは紅茶をいただく。
今日既に2杯目なんだけど。
「それでシェリーよ」
ヨゼフ国王陛下が口を開く。
「はい」
「先方のセバスチャンの報告によると、ジョン王子が君との婚約を破棄して、君を国外追放した、とのことだが、事実かね?」
「はい。事実です」
可哀想に、と周りがざわつく。
「そしてその理由が……少々言い辛いのだが……」
ヨゼフ国王陛下はそう言って言葉に詰まっていたので、私が代わりに続けた。
「私の体内に悪魔が宿っていて、私がジョン王子と婚姻後にジョン王子を殺すため、だそうです」
私はバシッと言い切った。
「……は!? 何だそれは! ……と、すみません……」
クラウスはバンっと机を叩き立ち上がるが、すぐに我にかえって再び座った。
「もちろん事実無根だね?」
と、国王陛下。
「はい、もちろんです」
私がハッキリそう言うと、皆安心してうんうんと頷いていた。
「どうしてそのようなことを言われてしまったのか、何か思い当たる節はあるかね?」
「はい、ただ、私がなんとなく気付いていたことなので、100%の断言はできません」
「それで良い。皆に話しておくれ」
「はい……」
私は、ここ数ヶ月のリーテン城での出来事を話すこととなった。