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【8】



友人が来る時間が近いのか、女神が楽しげに色々と準備をし始めた。


ふふっ表情がコロコロ変わり、見てるとこちらまで楽しくなってくる、本当に可愛らしい人だ


女神は先程、変な音を出した薄い板のような物を手にし何かを確認すると「先に始めよう」と言い、私の目の前にとても美味しそうな煮込み料理を置いてくれた。


鶏肉と一緒に野菜が煮込んだのか、いい匂いだ


熱いから気をつけてと言う女神の言葉通り、料理から上がる湯気で熱いだろうという事は一目瞭然、だが匂いの誘惑には勝てない!と口を付けようとした時「ピンポーン」と音が鳴り響いた。


すると女神は部屋の奥の方へと行ってしまった。完全に料理に口を付け損ねてしまった。


女神が奥に行くとすぐにバタバタと騒々しい音と共に、別の女性の声が聞こえてきた、これがマユと言う名の友人か。


賑やかな話し声と共に近づく足音。

いよいよ女神とマユが私のいる部屋へとやってきた。

マユは私を見るなり「でかっ!」と口にしたが、それは確か大きいという意味だったな。


確かに元々身長は高い方なので、獣の姿になっても結構な大きさだ。なのにこの女神はそんな私を持ち上げて、外から移動させたのだから驚きだ。


マユは肩に届かない髪の長さで、背は女神より少し高いくらいか。割りとはっきりとした顔立ちは、どちらかと言うと綺麗という括りに入る、そして話し方からしてさっぱりとした性格なのだろう。


私の好みは断然マユより、見た目の美しさとは逆に、何とも可愛らしい中身の女神の方だ。



マユが私を撫でくり回す間に女神は奥の方でマユが持ってきたであろう料理を皿に盛っている。ここから料理は見えないが、微かに香る新たな匂いに少し気分も上がる。


テーブルの上いっぱいに料理を並べ終え女性が座ると、二人はお疲れ様と言い合い片手に持った飲み物をぶつけ合いぐびぐびと飲み始めた。



やっと知る事が出来た女神の名は『ルナ』

月の事をルナというが、明るく可愛らしくコロコロ変わる表情などは、どちらかというと眩しい太陽のよう、だがこんな私を優しく包み込んでくれる彼女には『月』もまたぴったりの名だと思った。


流石、私の女神だ。


どうやらルナとマユが飲んでる物は、この匂いからすると酒のようだ。出来る事なら私も一緒に飲み交わしたい・・・今は残念ながら飲めないので目の前の料理に集中しよう。


しかしこの料理も美味い。

煮込んだ鶏肉はもちろん、一緒に煮込んである野菜も柔らかく味が良く染み込んでいる。


酒を飲む目の前の二人は、何やら私の新しい名で盛り上がっており、マユが私の名に同情してくれたので、そうだろ?と言わんばかりに頷いた。

新しい名を可愛いと言うルナに、それだけは絶対に同意できないという強い意志を込めた視線を送った。



暫くするとルナが私の目の前に、マユが持ってきたであろう料理が置かれたが、この赤いのは魚のような気もするが・・・まさか生か?!生で食べるのか?!

だがルナとマユは美味しそうに食べている。

ならば美味いはずと思いっきって口に入れてみると、生魚は初めてだったが、とろける様な食感と広がる旨味、時折鼻にツーンと来る辛みが癖になる!何だこれは!美味すぎる!


美味い生魚の何かと、香辛料の効いた鶏肉のカリッとした何かを夢中で食べていると、聞こえてくる二人の会話に出てきた『アイツ』と言う言葉。


アイツとは誰かのことを指しているようだ。

今は何処か遠くに行っているようだが、近いうちに帰って来るみたいだ。


話の流れから読み取るに、男か?!

ルナの恋人かっ!?


いや、どうやらルナは心底そいつを嫌っているのが明らかで、内心ホッと安堵のため息をついた。

そいつは相当しつこい奴なのか、ルナはかなり迷惑を被っているらしい。そんな厄介なのが帰って来るのか。


相手に迷惑だと、気にもとめないような奴・・・

魔の国の連中みたいな人間はやはりどこにでもいるんだな。

全世界共通ってことか。


私が守ってあげられたら良いのだが、なんせ今は獣の姿だ。そしてロクに体も動かせない自分が酷くもどかしい・・・


マユが『いい人はいないのか』と聞いている。


頼むからルナに変なことを吹きこまないでくれ。

もしルナが部屋に男を招き入れるような事態が起きたら私はここには居られないだろう・・・そんな悲しい事は想像もしたくないな。


次から次へと酒を煽る二人に若干引きながらも二人の会話に耳を傾け、楽しいひと時を過ごした。


マユが足元をふらつかせながら帰って行くと、ルナも虚ろな目をしながら残った料理をササッと片付け、テーブルの側にちょこんと座り辺りを眺めた。


これは相当酔ってるな、くくっ。


と、思った次の瞬間にルナはパタリとその場に倒れこんだ。


おいっ!ルナ大丈夫かっ?!


思うように動かない体に喝を入れ、必死に匍匐前進のように何とかルナへと近づき、ルナの顔に自分の顔を近づけてみると、スースーと規則正しい寝息が聞こえた。


くくっ、あっはははは

本当に行動が可愛いなっ!


起こすのも可哀想なので、せめて体を冷やして体調を崩さないようにと、ルナの体に寄り添うようにぴったりとくっつき、ルナの心地よい体温と微かに感じるオーラに癒されながら自分も眠りについた。












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