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【4】



目の前に出された見た事もない料理、恐る恐る口にすると驚く程の美味さで、味覚を感じた事によりやっと生きている事を実感できた。

だが空腹が満たされると途端に睡魔に襲われそのまま意識を手放した。


ふと目が覚めると、意識がなくなる前は外に居たはずなのに今は部屋の中、しかも体に温かい布まで掛けてあり、その布からは花のようないい香りがする。


女神が持ち上げて部屋に引き入れてくれたのか?

女神には特別な力があるのかと考えていると、肉が焼けるようないい匂いが鼻腔をくすぐり、すぐに思考を遮った。


匂いの方へ目を向けると、女神が皿を片手にこちらに向かって来るところだ。


私と目が合うと何故か踵を返し奥に戻って行く女神

すると、また漂ってくるいい匂い。


少しするとこちらにきた女神が持つ皿には、いい匂いの元と思われる茶色い肉のような何かが。


皿は私の目の前に置かれた。


昨日も食べた変わった料理、変わっていても美味しいのは知っている。迷いなく皿の肉に齧りついた。


やはり美味い!パリっとした歯ごたえで肉汁が飛び出した。これはなんと言う食べ物なんだ?!


勢い良く食べ腹が満たされると、何かを考える暇もなくすぐにまた夢の中へと引きずり込まれた。



***************



ふと目を覚ますとすでにお昼前。

すっかり寝てしまった、この犬のモフモフが気持ち良すぎるせいね!モフモフを名残惜しく思いながらも、起き上がりキッチンに向かった。


冷蔵庫から水分補給の為ペットボトルの水を出してグビグビ飲みながら、食材を見てお昼はオムライスに決定した。


お昼ご飯を食べたら少し掃除機かけてもいいかな?

犬起きちゃうかな?


冷蔵庫から卵とケチャップ、ベーコンと玉ねぎを取り出しオムライスの準備に取り掛かる。ケチャップライスは小分けにして冷凍しておけば、仕事の日の夕飯にできるので多めに作ることに。


2個分溶いた卵をフライパンに流し込み、卵に火が通る前にケチャップライスをのせ、フライパンの柄の部分をトントンしながら綺麗にケチャップライスを卵で巻いていく。


「よし、上手くできた。完成~」


上手く出来た事に気分が良くなり鼻歌を口ずさみながら、皿にのせたオムライスに少しケチャップをかけた。

色鮮やかな黄色に赤いケチャップ。

何とも食欲を唆る見た目なのだろうか。


居間に向かおうとそちらに目線を移すと、こちらを見ていた犬とバッチリと目が合った。


朝にもこんなことあったね?デジャブかな?

決して犬に与えては行けない食材みたいな物は入っていないが、でもこんなの犬が食べる?


「これ食べる?」


つぶらな瞳でじっと見つめる犬の可愛さに負けて、仕方ないなと犬の目の前にお皿を置いた。

クンクンと匂いを嗅ぐと、すぐさまハグハグと食べ始めた。

その夢中に食べてる様子が可愛くて思わず「ふふ」と声をもらすと、犬が一瞬こちらに目を向けた。


「ごめんごめん、気にしないで食べな。君があまりにも可愛いくてついね。ふふふっ」


犬は首を傾げたが、その黒い犬の口元には真っ赤なケチャップがついている。


「あ、ちょっと待ってて」


近くにあったティッシュを数枚引き抜いて犬の口元に近づけると、犬は少しビクッとしたが、私が口を拭くのだと分かると大人しく顔をこちらに突き出した。


「君は賢そうだねぇ。飼い主さん見つからなかったらこのままウチにいる?」


真っ直ぐに私を見つめる犬の瞳に思わずキュンとなった。


「いつまでも居て居て~!」


その仕草が愛おしい過ぎて思わずギュッと犬にしがみつくと、犬はビクリともせず私を受け入れるかのように抱きついた私の頭に鼻先を擦りつけた。


残っているオムライスを食べるように犬に促すと、キッチンに戻り、多めに作ったケチャップライスをオムライスにせずそのまま食べながら、オムライスをガツガツ食べている犬の様子を観察する。


夕べより少しだけ元気になったみたいね?どこも怪我はないみたいだし、衰退してるのかな?でも衰退するようなそんな歳には見えないよね~、毛艶も良くまだ若そうだし・・・


「まぁいいか、元気になったら一緒に散歩に行こうね」


私の言葉を肯定するかのようにシルバーの瞳で見つめる大きな黒い犬に、ニッコリと微笑んだ。


食事を終えた後、夕べも今朝も食べた後にすぐ爆睡していた犬が起きている。体はまだ起き上がる事はないが、目はしっかりと開けていた。


「いっぱい寝たから眠くないのかな?なら今のうちに掃除機かけちゃおう」


犬の側から立ち上がり、居間の近くにある収納スペースから掃除機を取り出した。

それを目にした途端ビクッとした犬だが、やはりその場からは動けない様子だ。


「ちょっと煩いかもだけど、すぐ終わるからごめんね?」


コンセントを差しスイッチを入れる。


ブゥォーーー


犬のシルバーの目が見開いたのが見えたが、普段は仕事でなかなか掃除機を掛けられないから、休みにはやっておきたい気持ちが勝り、犬に微笑みかけながらサッサと部屋中の掃除を済ませた。


「終わったよー、煩くしてごめんね~」


掃除機を片付け、コーヒーを飲むためキッチンへと向かい、自分のコーヒーと一緒に少し深めのお皿にお水を入れローテーブルの犬の所へ行く。


「君も喉乾いてない?お水だよ」


犬の前にお水の入ったお皿を置き、自分はマグカップに入ったコーヒーに口をつけた。


カップをじっと見つめる犬の視線を感じた。


「え!さすがにコーヒーは無理でしょ?!それはダメダメ、君はお水を飲みなさいっ」


しゅんとした表情で水に口をつける犬を見てホッとしたのと同時に、あまりにも分かりやすい表情に微笑みがこぼれた。


コーヒーを飲みながら、映画でも観ようかなとテレビをつけると、耳をピクピクさせシルバーの目が輝いたように見えた。さらにDVDを再生させて映画を見始めると、私の傍らにいる犬も真剣な眼差しで映画に釘付けの様子だ。


犬も映画観るんだ?!


映画は宇宙人と人間の戦いを描いたもので、何度観ても必ず同じ場面と最後のシーンでは感動して涙ぐんでしまう。


途中の場面で私が涙ぐんでいると、隣りからもズビズビと鼻を啜る音が聞こえ、犬を見ると瞳がウルウルしていた。


嘘っ!犬が映画観て感動するとかあるの?


犬が予想外の表情を見せたので、映画より犬が気になり犬の様子ばかり覗き見していたら、映画はいつの間にかエンドロールだったが、一番感動する最後のシーンを観て隣りで一筋の涙を流す犬に私の目は完全に釘付けだった。


本当に賢いのね、この子は。

ていうか賢過ぎじゃない?!









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