8話 勉強させて
悲鳴の聞こえた方に向かっていたオチアイ。
「誰か助けて!人攫いよ!!誰か!!」
「静かにしろ!」
口を布で覆われ手足を縄で結ばれている。
「あの、すみません。国立資料館ってどこですか?」
忙しくしている誘拐犯の前に申し訳なさそうに出てきたオチアイ。
「なんだお前!この状況を見て邪魔してくるとは、いい度胸じゃねぇか!お前ら殺っちまえ!」
逃げ道を塞ぐように囲まれた。
「身体強化!っと創造!「武具」刀!」
オチアイの持っているスキルを発動した。
創造で作られた武器は刀身が黒色の日本刀が現れた。
「なんだこいつ!どこから武器を出しやがった!」
「こいつは見世物小屋で売れそうだぜ!」
偉そうにしている男がそういうとオチアイの周りを囲んでいた人達が襲い掛かってきた。
「おりゃ!うぐっ」
後ろから襲い掛かってきた男を刀の鞘が腹を打撃した。
「あっごめん。大丈夫?ただ鞘が腹に当たっただけだけど」
そう言っている間に、ほかの囲んでいる男達が襲い掛かってきた。
オチアイは鞘を相手の腹に打撃させ、オチアイに掴みかかってきた相手は柄頭で打撃をし気絶させた。
「お、お前なんなんだよ!」
偉そうにしていた男が青ざめた顔で言ってきた。
「いや、道を聞きに来ただけなんですけど後、悲鳴が聞こえたので。」
「道?どこに行きたいんだ?」
青ざめた顔の男が聞いてきた。
「国立資料館なんだけど」
「それなら、ここを出て左まっすぐだ。」
指を路地の方を指差して教えてくれた。
その時、青ざめた男は縄をくくられた人を肩に担いで急いでオチアイの前から消えようとした。
「あっ、この人たちはどうするの?置いてけぼりにするの?」
走り去ろうとしている男の隣を並走してオチアイが追いつく。
「なんなんだお前!着いてくんな!」
目が飛び出しそうな驚きをし並走してくるオチアイに怒号を飛ばした。
「肩に乗ってる人、嫌がってますよ。」
と言っている時に誘拐犯のアジトに着いてしまった。
そこは、ボロボロで今にも崩れそうな程の建物だった。
「おい!お前ら!出てこい!」
建物の方に呼び掛けている青ざめ男。
「なんすか頭?ん?」
建物から2Mは超えている身長の大男が出てきた。
「お前死んだぜ!おい!こいつを殺せ!報酬は倍にしてやる!」
オチアイの目の前に大男が道を塞ぐ。
「その人、解放してあげてくださいよ。嫌がってるみたいだし」
「あ?これが俺たちの商売なんだよ。邪魔するなら死んでもらうぜ。」
大男は建物に掛けかけてあった大きな斧を手に取り脅してきた。
「ん~死にたくないけど助けを求めている人をこのまま、ほっておけないしな。」
「英雄願望が死にさらせ。」
大男は大きな斧を軽々しく振り攻撃をしてくる。
「ネズミの様にちょこちょことしやがって!ぶっ殺してやる!」
表情が変わり頭に血管が浮き上がり振る速度も上がった。
壁に追いやられるオチアイ。
「逃げ場はもうないな!これでお終いだネズミ野郎!」
力強く振り下ろされる斧を真剣白刃取りをし、両手で刃をへし折った。
「なっ!くそがぁ!」
大男は折れた斧を投げ捨てファイティングポーズをとった。
大きく振りかぶる拳は軌道が読みやすい。右ストレートを避け、お腹にクリティカルヒットしその場に倒れ意識を失った。
「ふぅぅぅぅ、何とか倒せたな。」
大きなため息をつき青ざめ男の方に近づくオチアイ。
「近づくな!こいつがどうなってもいいのか!」
青ざめ男は誘拐した人の顔にナイフを近づけた。涙目になっている人質。
「まぁまぁ落ち着いて、ナイフは危ないのでその場に置いてくださいね。」
じりじりと青ざめ男に近づくオチアイ。
「じりじりと近づいて来るな!その場に伏せろ!」
指示通りにその場に伏せようとした時、オチアイの足元に石があった。
伏せるついでに石を手に取り身体強化魔法で右腕を強化した。
「下手なマネするなよ。こいつの顔に傷が付くぜ。」
ドアの方に背を向けながら向かっていきドアに手を青ざめ男がドアノブに手をかけた瞬間、拾った石を投げつけた。
「痛っ」
青ざめ男ドアノブに掛けた手にヒットした。その隙を見て青ざめ男のナイフを持つ手を取った。
「このまま、腕をへし折ってもいいけど。」
「ひぃぃぃ勘弁してください。」
泣きながら懇願した。
その後、誘拐犯を縄でくくり、騒ぎに聞きつけた騎士団が身柄を確保しにきた。
色々と事情聴取を騎士団からされていていつの間にか日が傾いていた。急いで国立資料館に向かった。
「すみません。本日は閉館いたしました。」
膝から崩れ落ちるオチアイ。
「そんなぁぁぁぁぁぁぁぁ」
悲しみに暮れている中、後ろから息の上がった声が聞こえた。
「はぁ、はぁ、はぁ、さ、さきぃ、さきぃほどはぁ、あり、ありが、ありがとう・・・・」
振り向くと誘拐されていた人がいた。
マントに着いているフードを深くかぶっているのでよく顔が見えないが身長は156㎝くらいの小柄な子だった。