7話 異世界で資格を取りたいと思います。
王都に着いたオチアイ達一行、大きな門の前に衛兵が警備をしていた。門の下には受付がある。
「ジルド王国にようこそ。交通費が必要となります。冒険者、商人の方は交通費のお支払いは必要ございません。君達は冒険者か?ん?」
受付の衛兵の方が後ろに目を向けた。
「もしかして、グエン訓練指揮官の娘さんですか!?」
顔を上げ頷いたマヤ。
「どうぞお入りください。冒険者の方は左手の方をお見せください。」
オチアイ達は左手をカウンターに手を置いて冒険者書を表示した。
「確認が取れましたのでお入りください。ようこそジルド王国へ」
受付が済、足早に門の外に出る。
「ここが王都か」
周囲を見ながらつぶやくオチアイ。
「ねぇ、あそこからいい匂いがするから行きましょうよ。」
売店の方に向かおうとしている。エルフ
「そんなことより今日の宿を探すぞ。」
エルフの襟を掴み王都の中央になる広場に向かっていく。
広場に向かっている最中、マヤがオチアイに話しかけた。
「宿なら、私の家でいいと思うのですが。」
「あの村からこっちに来るのに丸一日かけて行くのはちょっと辛いでな。」
「あそこは我が家ではないですよ。王都に私たちの家はあるんです。あの村にあるのは訓練指揮所です。パp・・お父さんがあそこで訓練がある時に泊まる場所なんです。」
オチアイは目を煌めかせながらマヤにすり寄った。
「マジで!王都に家あるの?お願いします!マヤ様!家に泊めさせてください!」
マヤの前で床に頭を擦り付けてそれはそれは綺麗などけ座をした。
「別にそのつもりでしたので、頭を上げてください。」
オチアイの姿を見てアタフタしているマヤ。オチアイを足で踏んでいるエルフ、絵ずらがどうしても悪い。
「何?あの男、浮気でもしたのかしら。最低ね。」
「本当ね!最低だわ。」
周りから聞こえてくる陰口。
「あ、あ、あ、あ、あ、あの移動しましょう!オチアイさん!」
周りを気にしてその場から一刻も早く離れたいマヤ。
「行きましょう。オチアイさん!エルフさんもオチアイさんを踏んでないで行きましょう!」
顔を赤らめてオチアイの手を引いて、その場から去っていった。
「ここが私の家です。」
そこはお屋敷だった。
「マヤさんって大金持ちですか?」
目を点にしながら質問した。
「大金持ちというより私のお父さんが訓練指揮官だからですかね?」
確かに訓練指揮官だったらこのぐらい普通なのか?ジルド王国の福利厚生は充実しているのだろう。
お屋敷の中に入っていくマヤに着いて行くオチアイ達。
「家の中広ーい!!通路長ーい!!!」
マヤの後ろに着いて屋敷の中を案内して貰っている中、一人でお屋敷の中を走り回っているエルフ。
「では、こちらの部屋をお使いください。エルフさんは隣の部屋をお使いください。」
「ありがとう!こんないい所に泊めれるなんて夢のようだよ。」
「本当よ!マヤあなた、私の仲間にしてあげるわ!」
確かに仲間としては欲しいがこの国から出られなくなってしまう。
「わがままを言うなエルフ。ごめんな、マヤ」
「いえいえ、私も冒険したいですがお父さんが心配だから。」
確かに今回のような事が又あるかもしれないから1人しかいない家族を大事にしているなんて、素晴らしい娘じゃないか。
オチアイはマヤに感心していた。
「そうだわ!オチアイ!この王国の騎士になりなさい!そうすればここにずっと居られるじゃない!」
騎士ってそんな簡単になれるような者じゃないだろ。
「そうですね。オチアイさんの場合、騎士というより錬金術師になった方がいいのではないでしょうか?」
小首をかしげるマヤ。
「うーん、どうしようかな。スローライフ送りたいだけだしなぁ。」
「スローライフがわけわからないけどいいんじゃない。たまに冒険者家業をすればいいと私も思うわ。」
ギルドの規約には掛け持ちでも可能と、書いてあった。
「そうですよ!大魔法使いの資格を得て国家公認魔術師になるといいと思います。」
マヤも食い気味で言ってくる。
「試験ってどんな感じなの?資料とかある?」
オチアイは2人の言う通りにしようとしている。これがゆとり世代か・・・・
「試験の内容は筆記試験と技術試験があります。筆記試験は魔法の知識ですね。技術試験は題材に沿った物の製作だそう。」
「勉強の本ください。」
オチアイはマヤに言った。
「私持ってないですよ。国立資料館で写しを貰ってきてください。写しの木を持っていくと無料で写させていただけますよ。」
「木?紙じゃなくて?」
「紙なんて高級なものありませんよ。」
そう聞くとオチアイは木を触媒として創造スキルを使用した。
創造を使う時、触媒がある場合とない場合では魔力の使用量が異なる。
「製作!」
オチアイが木材に手をかざして唱えた。
木材が光、紙ができていた。
「えっ、今どうやって!?」
「ふっ、私はもう驚かないわ。」
マヤは紙を手に取り驚いている。
「とりあえず、このくらいあればいいだろう」
紙を手に取りオチアイは屋敷から出て行った。
「オチアイさん!オチアイさぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
マヤはオチアイを追い掛けようとしたが屋敷から出て数秒もしない内に消えていた。
「あれ?どこ行ったの?オチアイさん!」
「アイツは何でもできるから、多分ワープとかで消えたんだと思うわ。」
エルフは窓から顔を出してマヤに言っていた。
その頃、オチアイはエルフの言っていた通りワープで広場近くの裏路地にいた。
このワープスキルは一度見たところや、行ったところでないと使用は不可能で丁度、屋敷に行っている最中に見ていたオチアイは使用することが可能だった。
「さて、紙を手にずっと持っているのもあれだし、カバンでも買いに行くか。てか、マヤから借りるのもあったか。」
町の中を手に紙を持ち歩いている姿は滑稽だ。
「よぉ、兄ちゃん」
後ろから声をかけられた。
「兄ちゃんよぉ。紙なんて高級品を持ち歩いてちゃ危ないぜ!俺たちみたいな悪者に襲われても仕方ねぇよなぁ!ちょっと面貸してくれよ。」
公共の面前で輩が絡んできて裏路地に連れていかれた。
「なんて馬鹿な奴なんだ!おめおめ着いて来るなんてよぉ!」
チンピラの1人がナイフを片手に言ってきた。
その中でひと際、体格のいい男がオチアイの目の前に現れた。
「よぉ!怪我をしたくなかったら、その紙を俺たちに渡しな!」
オチアイの顔に鉈のような武器を近づけて言った。
「紙なら木材で作れるぞ。」
小首をかしげながらオチアイは言った。
「製造方法は知ってんだよ!出来た物を寄こせって言ってんだ!」
体格のいい男が鉈を振り落としながら言った。
オチアイは華麗に振り落とされた鉈の攻撃を避けた。
「危ないな!紙はやらん!これから国立資料館に言って大魔法師試験の勉強で使うんだ!邪魔するな!」
眉間に皺を寄せて言う。
振り下ろした腕を元に戻しオチアイの顔を見た。
「ふっ、よく避けれたな。」
「大振りは避けられますよ!ボス!」
「そうっすよ!BOSS!今のは誰でも避けれますぜ!」
輩2人が体格のいい男に言った。
「うるせぇぞ!」
怒鳴るとまたオチアイに攻撃を仕掛けてきた。
「身体強化!」
スキルを発動するとオチアイは攻撃を素手で受け止めた。
「なんで!刃の方を掴んで切れないんだ!!」
体格のいい男の腕に血管が浮き出るほどに力を入れいてるのだろう。
「身体強化してるから?ふんっ!」
鉈を掴んでいる手に少し力を入れて刃を折った。
「うわぁぁぁぁぁぁバケモンだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」×3
よくありそうな逃げ方をして輩は去っていた。
「こんな事をしている場合じゃない!資料館に行かないと!」
裏路地から去ろうとした時、近くから悲鳴が聞こえた。
「きゃぁぁぁぁ!放して!放してよ!!」
声のする方に向かった。