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能力検証『どんな相手も強制的に』

 ユニークスキル

『原点に帰れ(シンプリファイゲーム)』


 ゴブリンを倒した後、俺は様々な検証を繰り返した。

 いくつかわかったことがある。


1、能力は強制発動


 モンスターと対峙した瞬間――具体的にはモンスターとの距離が七メートル以下になった瞬間、能力が発動してターン制バトルが始まる。

 俺の意思でオンオフを切り替えることはできない。

 しかし能力圏内にモンスターがいたとしても、相手が俺を認識していない場合、あるいは俺のことを無視している場合……要するに、敵意がない場合は戦闘は始まらないようだった。


 そんなモンスター相手にも、俺の方が戦おうと思えば能力発動した。

 つまり、どちらか一方の戦う意思――戦意が能力発動のきっかけとなるらしい。


2、戦闘はHPゲージ制

 最初のゴブリン戦では気づかなかったが、敵の頭上に見えた青色のゲージは、俺の頭上にも表示されるようだ。

 前世の記憶によれば――俗にHPゲージ、体力ゲージと呼ばれるものらしい。

 順番に攻撃し合って、互いのゲージを奪い合う。


 1、2を要約すると、つまりこの能力は前世の俺風に表現するならば――


 相手をRPGゲームのターン制バトルに強制的に引きずり込む。

  

 ――となるのだろう。


 

3、ステータスの変化。

 ユニークスキルの発現前、俺のステータス画面はこんな感じだった。


――――――

 名前 :レイル 

 年齢 :18

 職業 :魔法剣士

 攻撃   :32

 魔法攻撃 :54

 防御   :40

 魔法防御 :67

 魔力   :88

 敏捷   :65

 運    :43

 

 補正

『肉体強化レベル3』『腕力強化レベル2』『脚力強化レベル2』『五感強化レベル4』『剣術補正レベル2』『大剣レベル2』『短剣レベル3』『体術補正レベル3』『敏捷補正レベル1』『魔力操作レベル3』『攻撃魔法補正レベル5』『防御魔法補正レベル4』『火炎系魔法補正レベル4』『氷雪系魔法補正レベル3』『雷撃系魔法補正レベル2』『治癒系魔法補正レベル1』『呪術系魔法補正レベル1』『鑑定レベル3』『暗視レベル2』『隠密レベル3』『霊視レベル1』『索敵レベル2』


 耐性

『物理耐性レベル2』『魔法耐性レベル5』『熱耐性レベル1』『氷耐性レベル3』『麻痺耐性レベル1』『毒耐性レベル1』『恐怖耐性レベル1』『睡眠耐性1』『石化耐性2』『空腹耐性レベル2』

――――――


 ざっとこんなもんだ。

 自慢になるほどのステータスじゃない。

 補正や耐性はパッと見多く見えるが、どれもレベルが低い。

 実力のある冒険者はもっととんでもない量の補正や耐性を所持している。


 そしてこのステータスが、ユニークスキル発現後、驚くべき変化を遂げた。

 数値が飛躍的に伸びた……わけでも下がったわけでもない。

 どうなったかというと――

――

 名前 :レイル 

 年齢 :18

 職業 :魔法剣士

 ちから :42

 まもり :55

 まほう :76

 はやさ :40 

――

 ……めっちゃシンプルになった!

 項目が激減した!


 ええ……なにこれ?

 なんだこの、ステータス表示。初めて見るぞ。

 補正も耐性も消えたし、項目が4つだけって。

 ステータス表示のシステムは冒険者ギルドでも機密情報らしく、俺も具体的にどういう仕組みなのかは把握してなかったが……こんな、表示ごと大きく変わることなんてあるのか?


『はぁーあ。最近のゲームって複雑になりすぎなんだよな』

『細かい項目を増やせばいいってもんじゃないでしょうよ』

『そのくせ大して使わない項目とかスキルがたくさんあるしさ』

『昔のゲームはよかったな』

『すっごくシンプルでさ。完成度が高かったよ』

『コツコツレベル上げて殴る。それが一番』

『ああ、昔はよかった』


 くっ……前世の記憶が……!

 なんかめっちゃウザいこと言ってる。

 時代の変化に取り残されたおじさんっぽいことを言ってる気がする。

 

 まあ、とにかく。

 受け入れるしかないんだろう。

 俺のステータスはシンプルになった。

 うん、それで終わり。


4、スキルの変化

 元々俺はいくつかのスキルを持っていた。

 たとえば――

――――――

 スキル

『閃光斬り』

 効果:閃光のように素早く斬る。

――――――


 覚えていた剣技スキルの一つだが……正直、よくわからないスキルだった。

『閃光のように』とか言いながら、全然閃光の速さでは斬れない。

 攻撃力もこれといって上がらず、気持ち普段より少し早く攻撃できるぐらい。

 なんのためのスキルか全くわからなかった。

 外れスキルだと思っていた。

 どういうわけか俺が覚えるスキルは、そういうイマイチ使い道のわからないものが多かった。


 しかし、このスキルが今――


「――見つけた!」


 様々なモンスター相手に様々な検証を繰り返した後、ようやく狙っていたモンスターとエンカウントすることができた。


 ハイスピードラビット。


 小柄な体と茶色の毛皮。そして頭に生えた角。

 二本脚で立ち、手には小さなナイフがある。

 戦闘力自体はさほど高くないが、その素材は極めて希少とされている。

 なぜか。

 それは――名前の通り、圧倒的な移動速度を誇るからだ。

 見つけたところでまず逃げられる。

 その逃げ足は一級品で、熟練の冒険者ですら手を焼くほどだ。 

 俺も今まで何度か見つけたことはあるが、そのたびに速攻で逃げられてきた。森の中であの兎に追いつける者は、相当な熟練者だけだろう。

『青き雷帝』のメンバーですら、コストとリターンを考えて、ハイスピードラビットを追いかけることはしなかった。

 しかし――今なら。


「……ははっ」


 思わず笑ってしまう。

 やっぱりだ。


『原点に帰れ(シンプリファイゲーム)』


 ハイスピードラビットは今――俺の前方で止まっている。

 小刻みに上下にリズムを刻みながら、俺のコマンド選択を待っている。

 あんな風に長時間停止している姿は始めて見た。 

 

 予想通り、ひとたびエンカウントしてしまえば、相手の速度なんて関係ない。

 俺がなにか選択をするまで、相手はその場に待機していてくれる。

 

 とは言え、安心はできない。

 検証の結果わかったが、ターン制バトルでは、お互いの『速度』で先攻後攻が決まるらしい。

 俺とハイスピードラビット、どちらが速いかは言うまでもない。

 このまま戦えば、確実に向こうが先行。

『逃げる』の一手で終わりだろう。

 だから――俺はスキルを使う。


―――――― 

 スキル『閃光斬り』

 効果:必ず先行で攻撃ができる。

――――――


 効果が――変わった。

『原点に帰れ』の発動中、俺のいくつかのスキルは内容が変化する。

 いや。

 というよりはまるで、こっちの効果こそが真の能力であったかのような――



「…………っ」

『閃光斬り』を発動した俺は、大地を蹴り、剣を振りかぶる。


 ハイスピードラビットは――逃げない。

 

 待っている。

 その場で俺の攻撃を待っていてくれる。


 強制的に従わされてる。


 俺のルールに。


『ターン制バトル』のロジックに!

 

 ザシュッ、と。


『閃光斬り』が命中し、ハイスピードラビットが倒れる。

 元々防御力や体力はないモンスターだ。

 攻撃が当たりさえすれば倒すのは簡単だと言われている。 

 

「……よし」


 拳を握りしめる。

 言いようのない興奮が全身を駆け巡る。

 なにかが――噛み合った感じがする。 

 ハマった感じがする。

 どう足掻いても追いつけない天才達に囲まれ、絶望感と無力感に苛まれていた頃とは違う。

 この能力があれば、俺だって強くなれる。

 俺だって――追いつける。

 物語の主人公と表現したくなるような、選ばれし者達に――


「……待ってろよ、エリザ」



バトルの概念が変わる……!


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