第33話 おぞましいムギュッ
夜も深まった頃、今すぐにでもコウに逢いたい気持ちを抑え、レヴィアは王都のギルドでヤナと話をしていた。
「はい。時間に遅れることなく来ていただきました」
「それは良かった。で、コウ達は予定通りに?」
「……はい。上手くはいきましたが……」
「いきましたが?」
「……ハァ」
「?」
気になる口調にヤナが言葉を返すが、レヴィアはガクッと肩を落とし、テーブルに突っ伏すと大きく溜め息を吐いた。その様子にヤナは小首を傾げ、美しい長髪がサラリと流れる。
「……そのですね……コウ様に……嘘をついたのが……」
額をテーブルに押し付けたみ、ボソリ、ボソリと懺悔のように言葉を並べていくレヴィア。ヤナは「あぁ、そういう事」と呆れた様子で背もたれにトンッと身体を預けた。
「分かった分かった。惚気話はいいから」
「の、惚気話ではないですよ!こ、これは真剣な問題でして……」
「はいはい。その話は今回の件がぜ〜んぶ片付いて、どこか遠い山奥の小屋で二人で話してくれ」
「うぅ……」
「で、予定通りでいいんだな?」
余程惚気話に興味がないのか、ヤナはレヴィアに気持ちを切り替えろと言わんばかりに言葉をかける。
「は、はい!それはもちろん!」
それを察したのかレヴィアは上体ごと顔を上げ、テーブルと身体の隙間に実っていた柔らかく大きな果実をプルンッと震わせながら返事をした。
「本来の目的を忘れなければいい……住民の避難は完了しているが、アイツらが行動を起こすまで半刻程、時間はないぞ?」
「はい……そのようですね」
レヴィアは人の流れを感知しているのか、外にチラリと目をやり椅子から立ち上がる。
「では行ってまいります」
「あぁ」
レヴィアは会釈をして部屋から出ていき、それに答えるようにヤナは片手をサッと上げるのだった。
* * *
王都上空ーー
「……」
レヴィアは目を瞑り、王都全体に意識を張り巡らせていた。
「……あそこですね」
探し人を発見したレヴィアは小さく呟き、ゆっくりと辺りを警戒しながら目標に向かう。
王城付近に近づくにつれ人の気配が消えていき、いつもは賑やかな王城周辺が物音一つしない異様な雰囲気になっている。
レヴィアにとってそれは、これから起きる何かの前準備に感じて仕方がなかった。
「何を考えているんでしょうね」
相手の意図が読めないレヴィアは少し苛立った声で呟くと、フワリと王城へ着地する。
「……」
もう一度目を瞑り、再び位置を確認すると、ゆっくりと目を開け王城の中へと歩みを進めた。
誰もいない廊下は辺りの静けさも相まってカツカツと小気味のいい靴音を響かせる。それはまるでこの城に、自分一人しか存在しないのではないかと錯覚させる程だった。
しばらく歩き続け扉を発見すると迷いなくドアノブに手をかける。扉はキィーと薄気味悪い音を立てて開き、階段が顔を覗かせた。レヴィアは、コウが歩んだ道をなぞっていった。
* * *
途中、巧妙に隠された扉をいくつか吹き飛ばしながら、多少の近道をへてレヴィアは目的地へと到着していた。
「……ふぅ」
扉の前で一呼吸。
それはいつものように理由なく苛立つのを抑える為。一旦自分を落ち着かせたレヴィアは、ドアノブに手をかけると、意を決したようにグッと扉を開く。
中は薄暗く、ぼんやりと部屋の壁が見える程度。レヴィアは手を前にかざし、ボッと小さな火を創り出した。
暗い部屋に眩い炎が揺らめく中、目の前のベッドには微動だにしないマオが横たわっていた。
「……」
感知により生きている事は確認できるが、状態はそこまで詳しく分からない。レヴィアは恐る恐る歩み寄り顔を覗く。
「無事……のようですね」
レヴィアの心配をよそに、スヤスヤと幸せそうに眠るマオがいた。
「……本当に寝てますよね?」
レヴィアは少し考えてから目を覚ます程でもない声量でマオに声をかけた。
マオに反応は無く、本当に眠っている事を確信したレヴィアは手をかざし、念じる。するとマオの身体がレヴィアの腰辺りまでフワリと浮かびあがった。
「ふぅ……」
マオの保護も完了し後は脱出するだけ、レヴィアは安堵の息を吐き出し、本来の目的へと移る事にした。
「……」
再び目を瞑り意識を集中、目標の位置を確認。それが終わるとスゥーと瞼を開き天井に手の平を向ける。すると次の瞬間轟音が鳴り響き、そこには空に輝く星々が顔を覗かせていた。
「ん……」
流石の音量に反応するマオだが、目覚めることはなくレヴィアはさほど気にする素振りも見せないまま開けた穴から外へと飛び上がる。
加速度的に速さを増していきながら城を通り抜け、更に上空へ飛び、王都全域を眼前に収められる程の高さまで到達してからようやく身体を落ち着けた。
くるりと身体の向きを王城へと向け、深呼吸しながら瞼を閉じる。その状態で右手の平を上に向けながら眉間に皺を寄せはじめると、レヴィアの手の平に白く輝く小さな光球ができ始めた。
更に力を込めていくと、額にビキビキと青筋が現れ、現れた汗がすぐさま頬を撫でる。
ポトリ。
伝った汗が落ちた頃には光球が直径一m程の大きさまでになっていた。
「……うぅ……」
一緒に浮かんでいるマオがモゾモゾと身体を動かし、眩しそうな顔でうめき声を上げたと思うとーー
「あつい……」
あまりの熱気に思ったままの一言を放つ。現状がわかっていない為ここはどこだ?と顔をキョロキョロと動かし始める。直ぐに自分の脚の方に光源がある事に気づいたマオは目を細めながらも影になって見えないはずの人物に気がついた。
「え?レヴィア?」
「起きましたか……今状況を説明している暇はありませんので、そこで静かにして待っていて下さい」
「あ、あぁ……」
初めは好きな人がいる嬉しさに飛び上がりそうになるが、レヴィアのキツい物言いに少し落ち込んでしまうマオ。だが一緒にいるという事実が自然と口角を上げてしまっていた。
「……今から少々の熱と蒸気は感じますが、ある程度遮断していますので落ち着いていてください」
「う、うん!」
「では」
そう言ったレヴィアの手から光球が放り出され穴に向かって落ちていく。
ゆっくり、ゆっくりと落ちていく光球は穿った穴に入ると回りの石材を少しづつ蒸発させながら進んでいく。
しばらく進み、レヴィア達がいた地下室に到着するとピタッと動きを止め静止した。
「……死ね」
レヴィアは冷たい目で王城を見下げると、下に向けていた手の平をギュッと力強く握った。
次の瞬間、静止していた光球がスライムのようにフワッと弾ける。パッと見は森で行なった魔術と同じように見えるが、明らかに熱量・規模が違う。核となる物が金属ではなく、こちらは純粋な熱であった。
シュウゥと何とも形容し難い収束音を出しながら凄まじい量の蒸気を出し始める。
蒸気は王城に開けた穴からモクモクと真っ直ぐ出ていき、ある程度の高さまで上がると雲で出来た絨毯のように丸く均等に広がり輝く星々を覆い尽くしだした。
「……凄い」
マオはその光景を見ながら、誰しもが思うであろう平凡な感情がつい口からポロッと出てしまった。だが心はそれ以上に歓喜していた。今まで見たことのなかったレヴィアの一面を見れた喜びと、大好きな人はこんな事も出来るんだぞ!?と今すぐにでも叫びたい気持ちで、頭の中は拍手喝采で賑わい散らかしていた。
しかし喜ぶマオとは裏腹にレヴィアはこめかみに血管を浮かび上がらせながら集中している。なぜなら少しでも操作を間違えれば王都は業火に包まれ、その漏れ出た熱波によって多くの生物が帰らぬものとなってしまうからだ。
「……」
マオがレヴィアの後ろ姿に見惚れている中、王城は崩壊をし始め、下に見える溶岩にドポドポと沈んでいく。
それから数分が経ち王城が跡形もなくなった頃ーー
「ちっ……」
レヴィアが舌打ちをすると、それを合図にするように光り輝く水面に一つの黒い点が見え始めた。
「……ん?」
マオもようやくそれに気づいたのか段々と大きくなっていく黒い点が気になりだし声をあげるとーー
「ーー!」
マオの視界が突然暗転し、何かが前を通り過ぎたのを感じた。
「口は閉じておいて下さい、舌を噛みますよ」
マオはその言葉に直ぐに気がつく。
先程の暗転はレヴィアが高速で移動したのが原因。そして、前を通り過ぎたのはアレだということに。
「うぅ……う……」
幾人もの頭部を雑に取り付けた肉の球体。そう地下室にあったあの悪趣味な物であった。
「へ、へぇ……アレって動けーー」
動揺を隠しきれずに言葉に出すマオ。だがその言葉を言い切る前に頭部が一斉にコチラに向くと、口から何かを吐き出した。かなりの勢いで吐き出てきた赤黒い液体に対してマオが目をつぶると、バシャッと何かにぶつかる音が聞こえた。
「!……ん?」
だが自分に濡れた感覚は無く恐る恐るマオが目を開けると驚くべき光景が目に入った。
球体から吐き出た液体はレヴィアの少しばかり手前で透明な何かに遮られように止まり、球体もろとも固まっていたのだ。
「……凍ってる?」
赤黒い液体や気持ちの悪い頭部を含め、全てが時を止めたかなのように静止していた。
「やったのかな?」
「いえ、まだです」
そう言い切る前にレヴィアは攻撃の準備をし始めていた。球体の回りには既に数千にも及ぶ大きさが大人の腕程ある円錐状の槍が出来始め、それは高速で回転しながら明らかに熱を帯びている。
そして一本一本が三m程の長さにまでなると、槍は直ぐに発射された。
いきなり最高速で、すん。と何の抵抗も無く刺さっていく槍は、球体を焼きながら突き抜け、直ぐに戻って来ては再び球体に向かっていく。
何十、何百と往復していく槍。球体は跡形も無くなっており、そこに残るのはレヴィアとマオだけであった。
「やっぱりレヴィアは凄いや……」
ホッとしたマオが感嘆の声をあげる。
だがーー
「出てきなさい」
マオの感情とは裏腹にレヴィアの冷たい声が空に響いた。
「……」
返事は無いが、レヴィアは無言で王城があった場所を見続けている。
するとーー
「ん?」
マオが溶岩に黒く小さな穴がある事に気づく。よく見ているとそれは徐々に大きくなっていき、ある程度の大きさまでになると、中から何かが飛び出してきた。
「……え?」
目の前に飛んできたそれを見て、マオは困惑の声をあげてしまう。魔物が日常生活の片隅にあるこの世界の一般常識からしてもマオの反応は正しく、それを見て反応しない方がおかしい。
それもそのはずサッカーボール程の歪な球体に、長さが指程のうねうねとした触手のような物がまばらに付いており、頭らしき部分は全てが黒くぬりつぶされている。
しかしさらに異様なのがそれのオマケでもと言いたいような身体であった。じゅくじゅくと真っ赤な肉の上から張り巡らされた血管にそれらが繋がる心の臓は強く脈打ち、血液が勢いよく流れ出ている。波紋のように広がる血液が全身へと綺麗に運ばれていくさまがよく分かり、呼吸をする度に毛細血管に包まれた肺が膨張と収縮を繰り返す。骨の欠片も無く何で支えられているか分からない臓器達は元気よく鼓動し、我々は生きていると主張している。
まさにそれは人の身体が裏返っているようだった。
だがそれを見て表情一つ変えず冷たい目で見ていたレヴィアが口を開く。
「何が目的ですか」
普通に話しかけるレヴィアだがマオは言葉が通じるのか?と疑問を感じているとーー
「#&:☆☆→……→,(_*☆→#!)」
口が何処かも分からないそれはまるで返事に答えるように話し出した。
しかし出しているソレは低音と高音が入り交じった異音であり、その事にたいして2人の頭の中は明らかに疑問符だらけであった。
「__##_!*☆@…………」
その表情に直ぐ気づいたのか、それは話すのを止め何かを考えている様子になる。
「……あーあー、分かる?」
それが再び口を開くと聞き慣れた言語が発せられたのだが、その声質にマオは驚きを隠せなかった。
「こ、子供?」
そのグロテスクな見た目とは裏腹に声は、少年とも少女とも聞き分けをつけることができない程中性的で、音質は誰もが聞きたくなるほどの可愛さがある美声であった。
「えー言葉、理解できてる?」
「ご、ごめんごめん、できてるよ」
二度目の質問に我に返ったマオが返事をおこなう。
「あれ?君は驚かないのかい?」
「……」
「この声はね、この身体の人の声なんだよ?まあ私が貰う時に最適化させてもらったから、多少形は違うけどね」
「……」
「今話している言語や口調はこの人の記憶から読み取った物なんだ。どう?凄いーー」
突如言葉を遮るように化け物の頭目掛けて拳大ほどの石が目に追えない速さで発射された。
「ーーでしょ?」
しかし化け物の言葉を遮るようコトは出来ず、礫はぶつかる直前に透明な壁に遮られ粉々に砕けてしまった。
「無駄だよ、僕すごく強いんだから」
化け物は平然とした態度で話すがレヴィアは意に介さず、次の行動に移る。
周囲にはすでに大小様々な礫が出来ており、化け物はそれをただ見ているだけであった。そして次の瞬間それらは一斉に発射され、化け物を襲った。
「あーあ、無駄だって言ってるのに」
その言葉通り、カンカン、キン、ガン、と様々な音をだし粉々に砕け散っていく礫。
「……」
だがレヴィアの表情は変わらず再び礫を創り出す。
「しつこいな……ん?」
化け物が少し呆れ声出すが、先程とは様子が違う事に気づいた。創り出されたのは一つ、しかしその大きさは2mを超えるであろう巨石であった。
「量より質かな?」
皮肉めいた言葉に反応することなく、レヴィアが創り出した巨石は激しく回転し、直ぐに放たれた。
「満足した?」
やはりと言うべきか、巨石は先程と同じように粉々に砕けてしまう。
「で、話きい……」
化け物は続けて喋ろうとするが何故か途中で喋るのを止め、身体を動かしにくそうにしている。
「……私はコウ様に害なす物を全て排除致します。お前が原因でコウ様はわざとナトスに捕まり、お前が原因でコウ様に人間の汚い部分を見せてしまいました。ですのでーー」
ようやく口を開いたレヴィアは、何故か化け物が黒幕だと断定しており、表情を変えないまま手を前にかざす。
「死んでください」
殺意のこもった声と共に手を力強く握ると化け物は先程の防御が嘘のように一瞬にしてつぶれたカエルのようなってしまった。
「……」
「や、やったんだよね」
沈黙する化け物。それを確かめるようにマオが口を開くがーー
「ちっ……」
そこにいれば全員が身震いするような舌打ちが鳴り響くと同時に、身体が潰れた化け物が頭だけをウネウネと動かしている。
「☆#(#*#(…,!!#(@)))…………」
化け物は喋るが身体がなくなった為、言葉になっていない音しか聞こえない。
「……*!!☆→_………し…………ね」
本当は知っていたのか、今この言葉を放つ為だけに学習したのか、ひねり出したような音で言葉を放つとウネウネとしていた頭が潰れた身体からずるりと離れ、空中で助走する素振りを見せる。
それに対してレヴィアは身構え、目の前に分厚く身体が隠せる程の透明な障壁を五枚創り出した。
準備が完了した1人と1体の距離はおおよそ15m。見てわかる通りレヴィアは後手であり、化け物が動くのを待つ状況になる。
「……!」
レヴィアが浅く呼吸を吐き出した瞬間、フッと姿を消した化け物はすでに一枚目の障壁にぶつかり、頭をめり込ませている。
速さは完璧に殺され、ゆっくりと全身していく化け物。
1枚目で抑えられるとは思っていなかったレヴィアだが、概ね予定通りであった。1枚目2枚目は柔らかい障壁を創る事で威力を殺し、残りの3枚を頑強なものにしていたのだ。
「……あれ?思ったより雑魚?」
思ったより呆気ない化け物と、余裕そうなレヴィア。更にこれまでの事を含め、驚き、恐怖していたマオは安堵の言葉を吐き出す。
「いえ、まだです」
だがマオの緊張を解かない為なのか、レヴィアが一言告げる。
そしてその言葉通り、化け物はゆっくりとだがコチラに前進してきており、2枚目の障壁へとかかろうとしていた。
「だ、大丈夫だよね?」
「任せてください」
そんな余裕ともとれるやり取りの中、化け物は順調に進んでいく。
ゴムのように伸びる1枚目2枚目を身体にまとわせながら3枚目の障壁にさしかかるとパキキキキキと音を響かせながら突破しようとしていた。
「#**☆@&(…#…!)」
言葉は分からずとも明らかに悦びに満ちていると理解出来る音をだし始め、そのまま3枚目を突破するとーー
「→→。@#(@@)」
まるで「もう少しで」と言っているように4枚目へと頭をつけた。
「******☆☆*☆*☆*」
届く。そう確信したのか化け物は同じ音をだし明らかに笑っている様子。
「レ、レヴィア!」
「……ここまでのようですね」
「ならレヴィアだけでも逃げて!」
諦めの言葉。そう聞こえたマオはレヴィアだけでも助かって欲しいと叫び、必死に身体を動かそうとしている。
だが事実は違った。
バスケットゴールのように固定され伸ばされていた1枚目の障壁が突然緩められクルッと化け物を丸め、化け物が完全に動きを止められた。
「……へ?もしかして余裕?」
1枚目の障壁だけで完全に身動き取れない化け物を見てマオは気の抜けた声がでてしまう。
「コイツ程度本気を出すまでもありません」
「なぁ〜んだ、心配しちゃったよ」
「初めから心配など無用ですよ」
「そうだよね、レヴィアだもんね」
余裕のある会話で場が和んでいると、マオが近づいてくる何者かに気がついた。
「……ん?アレってなんだい?」
「新手ですか?一応周囲は確認していたのでさが……ってコウ様!!??」
マオの発言を聞き通り後ろを振り向くと、もの凄い土煙を上げながらコチラへ向かってくる人影が見えた。
多少明るいとはいえこの暗闇の中、通常なら人影すら見えないはずだが、有り得ない速度で移動する事や持ち前のコウ専門書を脳内で開き、動きや一部のパーツでコウと判別できてしまい、頭の中は軽いパニックに陥ってしまう。
「え!なんで!クナと一緒に……もしかして死ねとか聞かれて……!もしかして嘘がバレた!?」
普通なら驚くだけで終わる所だが、レヴィアにとってそれは何よりも優先すべき事項であり、何よりも一大事であった。
それが致命的となり、常時発動している並列思考の演算全てがコウに向けられてしまい、一瞬……いや、かなりのスキが出来てしまう。
化け物がそれに気が付かないはずも無く、一瞬にしてレヴィアの目の前へと接近するとーー
「きゃっ」
化け物は頭部の触手で絡みつくように胸を鷲掴みにする。それは余程の力なのか触手の隙間からムギュッ胸が溢れ出し、レヴィアの顔が苦悶の表情へと変わっていくのだった。




