第2話 美しい女神と過酷な試練
「……」
ふと目を開けると俺は見た事もない程真っ白な部屋にいた。辺りを見渡すが何も無く、不思議な雰囲気を感じる事ができる。
「ようやく目が覚めたわね」
声がする方に顔を向けると先程まで何も無かった場所に女神がいた、比喩でもなんでもなく美しくも神々しい本当に女神のような女性が。
言葉では言い表せない美しく整った顔。
ダイヤモンドのように煌めく金の瞳。
引き寄せられそうなほど美しく小さな唇。
陶器のようにきめ細やかな肌。
それらを引き立たせる腰まである白金の髪。
程よい肉付きのスタイルにこれでもかと言うほどの大きな胸。
そんな現実離れした女性……否、胸に見蕩れていると、女神は笑みを浮かべながら俺の疑問を答えてくれた。
「あら私に見惚れるのはいいけど、その身体じゃ何も出来ないわよ?」
「?」
何故だと思いふと自分の手を見ようと思うと、何故か手は無く、何なら身体もなかった。
「今のあなたは魂の状態。普通ならどこかに行ってしまうのだけれど、私がココに呼び寄せたの」
やはり死んでいたか……ん?だか目も口も無いのにどうやって視線を感じたんだ?そんな疑問が頭に浮かぶとーー
「私には貴方の視線や声を感じる事が出来るから安心して」
「……で俺はどうすればいいんだ?」
俺は胸を凝視しながら話したい事を思い浮かべる。
「貴方には選択肢がある、このまま死ぬか、試練を乗り越えし転生するかを」
「死ぬとどうなるんだ?」
「わかりません、天界に行くか暗黒界に行くか、はたまた無に帰すか、しかし転生をすると記憶もそのままに新たな力を得て新たな世界で生まれ変わります。まあ姿形はそのままで転生するので転移と言っても変わりはありませんが。」
「記憶を元にならもう少しカッコよくとかできるのか?」
「いえ、ランダムに選ばれた場所に魂が召喚されその場で魂の記憶を元にその世界の物質で身体が構築されます。ですから姿形は一緒でも全くの別物になりますね。」
「なんで俺が選ばれたんだ?」
「それはたまたまですね。私は強い生命力と意思を持つ魂を探し出し、それをココへ引き寄せているのです」
「俗に言う運命と言う奴だな」
「まあ貴方で最後になるだろうから、あながち間違いではないかもしれないわね。それでどうするの?」
「まあどうせ死んでるんだし、やってみる価値はあるわな」
内心俺はワクワクしていた、死んでしまってもまだこんな楽しそうな事ができるならどんな事でもしてやる。あ〜だが死ぬ前に一度は目の前にいるような女神のような女性を抱いて見たかった……
まぁ童貞だから抱いたこともなんですけどね!
「ではどんな試練にするのかしら?」
「え!?試練って決まってる物じゃないの?」
「初めは決まっていたのだけれど、攻略者が出なさ過ぎるので私の力でなんでもアリにしました」
「え、マジで」
「マジで」
「………本当に何でもいいんだな?」
「はい、私に二言はありません」
「言質は取ったぞ、後悔するなよ」
「はぁ?どうぞ」
女神は俺の言葉に困惑しているようだった。「なんでもアリ」の言葉を聞いた瞬間俺に残された道はこれしかないと断言できた。
「……エッチ」
「???」
「……セックス」
その言葉に女神はハテナ顔で腰を振る動作をする。
「そうです、私は貴方様とできる事なら“おセックス”がしたい所存でございます。何卒、何卒……」
今まで攻略者が出てないという事は誰も攻略出来ないような試練だろうし、死ぬなら童貞を卒業してからだ……。
まぁ死んでるけど……。
「……良いけどその状態でどうやってするの?」
良いという言葉に俺のテンションは爆上がりするが、続けて出てきた言葉にもう死ぬしかないと思うほど心が打ちのめされた。
「ふふふふっ冗談よ」
口に手を抑えながらケラケラと笑う女神。
気がつくと俺は俺の身体になっていた。
「……これは承諾して貰えたと思っていいんですよね」
「そうねぇ……最後だし特別よ」
「……この世の万物全てに感謝を」
自然と涙が頬につたわる。
ルールはどちらかがギブアップするまでとなった。 まぁ要するに俺は勃たなくなったら、女神様は足腰立たなくなったらだ。
フッと2人の姿が消え気づくとベッドしかない部屋にいた。
「申し遅れたわね、私はルナ。これでもこの世界の神よ」
とその豊満な胸を揺らしながら答えてくれた。
俺は自分史上最高のキメ顔でーー
「俺の名前もまだだったな」
「もちろん知っているわ。コウサカ アキ」
ここに呼んだのだから名前くらい知っていて当然か。そんな事を思いながら俺たちは横並びにベッドに座った。
出会ってから十数分しか経っていないが何度触りたいと思ったであろうこの胸、それがようやく我が手に……
自分の鼓動がこれでもかと大きく聞こえ、何度も生唾を飲み込み“それは”顕現する。
そして俺は夢見た世界へと落ちていった。
俺は夢見心地の中ルナに膝枕されていた。
「あー、もう最高マジでココで終わりでもいい」
「残念ながら攻略されちゃったから、そうはいかないわね」
ルナは膝枕をしながら俺の顔を覗き込むとそう答えてくれた。
「でどうすればいいんだ?」
「あなたの欲しいスキル・職業等を選んで私が与えて上げるわ」
「ふむ、そうか」
「本当に何でも良いわよ」
「……別にいい、何がいるか分からんし、もしいるスキルがあるならルナが勝手に決めてくれ」
「あら、そうなのじゃぁ勝手にしちゃうわね。……これとあれと、これもあった方がいいわね、でも魔力が……これもあったら楽しめちゃうわね。あ死んじゃったら嫌だしこれも……」
ルナは一人でブツブツと喋りながら目を瞑り何かを設定しているようだ。
「良いわ、これで決まりね」
と言うとルナの周りから不思議な光が集い俺に収束していく。
そして消えていく俺の身体。
「おいおい急に消えていくぞ!もうこれでお別れか?もう会えないんだよな?」
「それは分からないわ。もし本当に逢いたいなら向こうで私の痕跡を探して……きっとどこかにあるはずだから」
最後に俺はルナと唇を重ねる。
「ルナ!次会えたらもっとしてくれよな!!……」
そして俺は消えていった。
ーーー
「もちろんよ、次はもっと色々しちゃうわ」
私は彼が消えた場所に向かって返事をした。
最後の最後でまさか試練を攻略してくれるなんて。これは運命なのかしら。
ああ出来る事なら、また会ってあの子の望む事をしてあげたい……もし……もし本当に私の事を見つける事が出来たのならば、私の全てを貴方のものにして……