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16【フレディ度肝を抜かれる】

16話目です。

<<マサル視点>>

昨日バーバラ村に到着した。

村長のフレディさん一家から歓迎を受け、村人総出で歓迎会をしてもらった。

ちょっと飲み過ぎたみたいだ。

横で騒いでいるリズの怒鳴り声が、頭にズキズキする。

リズの矛先は、飲み過ぎた俺だが、今はフレディさんがとばっちりを受けていた。


俺は、ダメ元で二日酔いを治す魔法が無いか探してみたら、浄化魔法が効きそうだった。

早速、自分も含めて二日酔いの全員に浄化魔法をかけた。

効果はてきめんであったが、リズに「二日酔いなんてしょうもないものに高価で有り難い浄化魔法を乱発するなんてバカじゃないの。」って余計に怒られた。

飲み過ぎには注意しよう。


まぁ、昨日の歓迎会でフレディさん一家はもちろん、村人達ともすっかり仲良くなれて良かった。

なにせ、村人達にとって俺は、領主様の特命を受けた得体の知れない若造なわけだから、酔っ払ってリズに怒られるまではかなり警戒されていた。


でもリズとのやりとりがその警戒を取り去ってくれた。リズがライアン達の子供だとわかってからは、歓迎会は最高潮を迎える。

リズが生まれる少し前に、この村を魔物の大群が襲った。その時助けてくれたのが赤いイナズマだった。

赤いイナズマは、討伐後の村が壊滅的な打撃を出さない様、小麦畑が魔物に蹂躙され、瘴気で使えなくならないようにする為に、わざわざ魔物達を空き地に誘導しながら戦った。その姿は、村人達にとって神にも等しい尊敬の念を持って語り継がれているらしい。そのリーダーの娘が現れたものだから、そりゃ宴会が異常に盛り上がるのも理解できる。

まして、そのリズの危機を救った俺の話しをリズがしたものだから、その場にいたほとんどが二日酔いでもしょうがないというものだ。


とにかく、村人全員が俺を信用してくれて、同じ方向を向けたのは本当に僥倖だ。


さて、二日酔いの治った村人が広場に集合している。

フレディから促されて、俺はリーダーとして今後は指示を出していく事になった。


最初にする事は、チームの確認だ。

今回村人は4チームに分かれてもらっている。

1つ目は、水車を作る工作チーム。

これは鍛冶屋や木工職人、大工などで構成される。

2つ目は、治水工事チーム。

離れた川から畑近くまで水路を掘り水車を設置出来るようにするのが仕事だ。

力自慢の男手や雇われ冒険者達が中心になる。

後で知ったのだが、ジョージという騎士が1人混ざっていたらしい。リズが見つけた。

フレディ曰く、へンリー様の強力な推薦で、好きな様にこき使って構わないとのこと。

何をした罰ゲームなのだろう。

3つ目は、年配の農民やナーラ領の知恵者を中心とした作付け環境改善チーム。

腐葉土や堆肥などの肥料の効果検証や二期作に向けた、稲の栽培検証、二期作の実施要領策定などを行う。

4つ目は、主婦が中心の料理研究チーム。

白いパンを作る為の酵母や焼き加減の研究、米を使ったこの世界でスタンダードになりそうなレシピの開発などを行う。

食い意地の張ったリズはこのチームに入った。


チーム編成を確認し、それぞれのリーダーを決めた翌日、俺は各チームリーダーを集めて、仕事の進め方について説明した。

あのタブレットの効果は絶大だった。

各チーム単位で検索すれば、そのチームメンバーの名前から得意分野、これまでの経験等を一覧表示され、検索までできる。

これにより、チーム全体の総力を引き出せる様な、アドバイスができた。

リーダーは、チームに戻って作業を始める際に、俺のアドバイスを半信半疑ながら実践してみると、想像以上の成果が出た為、今までに経験した事の無い作業で不安もあるだろうに、俺の指示によく従ってくれた。


水車工作チームは、事前に俺が引いておいた図面を元に、それを設置する為の水車小屋や粉を引く為の石臼、自動で動くようにする為の歯車等の仕掛け、水車やそれらをメンテナンスする為の治具まで作成する。

それぞれ得意分野を上手く割り当てられたので、初めて作る物の筈なのに、効率的に製作が進められたと思う。

それは、作製している本人が一番実感しており、自分で創意工夫して提案してくれる者も多くなり、1号機が完成する頃には、水車作製のノウハウを蓄積した専門チームができている。


「これは驚きました。このチームは頑固な職人ばかりで一番統率が難しいのですが、見事にまとめあげただけでなく、やる気を最大限に引き出し、強力なチームに仕上げてしまうとは!」


フレディさんが横に来て驚きながら話し掛けてきた。

「いやぁ、たまたまですよ。みなさんが協力的で感謝しています。」

ここは、無難に答えておく。

正直、フレディさんの言う通り、ほとんどの職人が、否定的であった事は否めない。

ただ、俺も向こうの世界で同じような人間をよく見てきたし、まとめた経験もある。

本当はもっと親しくなってみんなから信用を勝ち取ってからでないと難しい仕事なのだ。

だけど、俺にはマリス様からもらったタブレットがある。

チームのみんなを調べてみたら、誰と誰が仲が良いかとか、孫を溺愛してるのは誰と誰とか、とにかく、深い付き合いをしないとわからない情報が満載だったのだ。

だから、向こうの世界との経験を合わせて、上手くいった。

全くタブレット様々だ。


狭い村の中のこと、工作チームをまとめあげたという情報は瞬く間に広がり、それだけで他のチームにも受け入れてもらえた。

もちろん、フレディさんの後方援護もありがたかったのは、言うまでもない。


工作チームの次に治水チームだ。

肉体派が多いから、喧嘩が起こらないよう注意が必要なチームだ。多少なりとも殴られる覚悟を決めて赴いたが、ここには意外な才能を発揮した伏兵がいた。

騎士のジョージ・ハリウンその人だ。

荒くれ者の中に貴族である騎士が混じって上手くいくはずが無いとのみんなの予想を裏切り、見事にリーダー役になっている。

少し驚いて、タブレットでジョージを調べてみた。

ジョージは、ハリウン准男爵家の4男で6人兄弟の5人目である。ハリウン家は、ジョージのおじいさんが、戦争で手柄を立てて貴族となった家だ。

彼の父親と長男は、王家騎士団に所属しており、二男とハリウンは、ナーラ領騎士団に所属している。三男は、商売の才覚を見込まれ、王都の商家に婿養子に入った。

騎士というのは、実はお金がかかる職業で、鎧とかお揃いの装備は騎士団から支給されるが、武器や支給品以外の装備なんかは、自前になる。

もちろん、ポーション等の薬類も支給されるものだけでは足りなくて、自前で用意しておかないといざという時に困る。

また、勝ち戦で戦功を挙げればそれなりの褒賞はあるが、それ以外の収入は、大したことはないだろう。

また清廉潔白を求められる為、副業やリベート等ご法度だ。

なので准男爵家なんて名誉称号でしかなく、貴族と言っても貧乏家が多いらしい。

商才のあった兄は僥倖であったが、四男で秀でたものを持っていないとどうしようもない。

そんなジョージは、騎士団の中でも平凡でお人好しだけが取り柄で、庶民からは人気があるが出世は望めそうにない人物だ。


だが、ハーバラ村に来たジョージは一味違った。


書き溜めが減ってきたので今後は、月、木の7時と16時の2回に分けて1話づつ出していきたいと思います。

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