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依頼人A-情報屋

 真夜は特別朝に弱いわけでは無い。

 学校のある日は勿論早く起きるため、遅刻をしたことともないくらいだ。そして、今日も当然のごとく6時前には起床していた。


 ベットを降り、着替えを済ませ、一通り身なりを整えた真夜はリビングに降りた。

 静かにソファに腰を下ろし、テレビをつける。

 テレビでは天気予報をやっていた所だった。


『天気予報によると、今日の雨川はいい天気になりそうです。でも念のために傘をもって外出しましょう』


 予報図には晴れマークがついているが、予報はどうにも煮え切らない。

 それもそのはず。雨川市はその名の通り雨の街。1年の中で雨の降らない日など合計1ヶ月もないだろう。


「今や天気予報なんてネットで見れるうえに、雨川の天気予報は見る意味ないですからね。予報士の方も大変です」


 真夜は誰に言うわけでもなく、テレビを消した。

 テレビのリモコンをテーブルに戻した真夜は、テーブルの上で小さな紙切れを見つけた。


『先に調査に行ってくる 大神』


 大神の書き置きに真夜は驚く。

 大神は普段朝は真夜より早く起きることも無く、調査も昼過ぎ頃から始める。


「大神さんが朝早く起きれるとは思えませんから、まさか夜から……」


 真夜は書き置きを戻して急いで支度を始める。

 朝ご飯を済ませて身支度をし、傘を持った時にはまだ7時にもなっていなかった。


「では、行ってきます」


 誰もいない事務所に言いながら、真夜は鍵をかけた。


ーーーーーーーーーーーーーー


 事務所から200メートルほど歩くと、少し大きめの商店街に出る。

 大きいと言っても、雨川の中心街からは距離があるため最近では売り上げは減少している。


 10年前は朝から人だかりができていたこの場所も今やこの時間にいる人は酔っぱらいくらいだ。


 しかし、街にいるのが人だけとは限らない。

 例えば、雀。彼らは商店街の売り上げなど気にもとめず、飛んでいる。

 例えば、猫。彼女らもまた気ままだ。

 そして、カラス。奴らにとっては人がいない方が好都合なこともあるようだ。


 そんな中、真夜が最も目にしているのは、別にある。

 それは人の姿をした人ならざるもの。

 それは特殊な人間にしか見えないもの。


『幽霊』


 どうにもこの商店街の寂れた雰囲気は彼らを引きつけるのには充分のようだ。


 まるで死んだことに気づいていないかのように、商店街を我が物顔で歩く彼ら。

 邪魔と思いつつ真夜はそのまま進んでいく。


 商店街中心あたりまで来た頃、真夜はある閉店した店のシャッターの前に寄りかかった。


 真夜は少し落ち着いて周りを確認したあと、スマートフォンを取り出してメモ帳に文字を打ち始める。


 1分程度して全て打ち終わった真夜は、スマホをそのまま持ってじっとしていた。


「どれどれ……。『遊園地、少年、大量殺人予告……』これまた厄介な事件だ」


 周りに人は居ないはずなのに突然声が聞こえた。

 真夜は姿勢を崩さず目だけで自身の横を確認する。


 シャッターから上半身だけを覗かせた、若いスーツの男が真夜のスマホを見ている。


「心当たりはありますか?」


 真夜がスーツを着た幽霊に問いかける。


「うーん。あるにはあるんだがねぇ」

「どんな情報でも構いません。情報屋のあなたならなにか知っていると思って来たんです」


 真夜が情報屋と呼ばれた男を催促する。


「条件にピッタリなのは2人ほどいる」

「はい」

「1人目は最近死んだ子だ。ここから5キロほど行ったところか。遊園地に向かう途中、車で交通事故にあったはずだ」

「それなら覚えています。1ヶ月ほど前ですね。家族3人が乗っていた軽自動車と飲酒運転車がぶつかって、運悪く子どもだけが亡くなられたとか」

「ああ。死後楽しみにしていた遊園地に行って、生者に嫉妬したとしても何らおかしくはない」

「遊園地へ向かっていたとは知りませんでした」


 真夜と情報屋は小声で話を進める。


「なんでも子どもだけが亡くなるっていうメディアの餌の様な話題でマスコミたちも喜んでたが、遊園地のオーナーが情報操作して結局表にはでなかったらしい」

「相宮さんが……。なるほど」


 真夜は得た情報を整理しつつ、メモ帳に打ち込んでいく。


「生前新聞社で働いてたやつは落胆した上司の顔をみて大爆笑。危うく成仏しかけたらしいぜ」

「平和そうですね。あなた達は……。ところでもう一つの方は」


 真夜の言葉に、笑っていた情報屋の顔が一瞬固まる。


「それなんだが……。ええと……」

「いつになく歯切れが悪いですね。先程まであれほど楽しそうに語っていたのに」


 そう言われた情報屋は、


「すまねぇ、嬢ちゃん。もう1人の方は大旦那が関わってるらしいんだ……。それで……」


 といいながら、シャッターから上半身だけだしている状態で、両手を合わせて頭を下げた。


「はぁ。そんな気はしていました。それなら最初から一つしか心当たりはない、と言っていればよかったのに」

「そこらへんは情報屋としてのプライドがある。これでも生前は探偵だったんでね」

「職業病というやつですか。死んでも治らないなんて不便ですね」


 真夜がそう言うと、情報屋は微笑みながら、


「違ぇない」


 といった。


「とりあえず情報ありがとうございます。これからその事故現場と、あなた達のボスのところまでいくのでまた何か掴んだら教えてください」

「任せてくれ!ただ……大旦那には俺が教えたってのは……」

「いいません。……でも言わなくてもばれるとは思いますよ」

「そうだよなぁ……」


 情報屋は項垂れる。


「そんなことで消されはしないでしょうが、もしもなにかあったら頑張って私か大神さんのとこまで逃げてきてください」


 そういうと、真夜は笑って情報屋の元を去る。


「はぁ……。笑えねぇ」


 残された情報屋の上半身はまたシャッターの奥に消えていった。

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