9日目 終わりの始まり
「貴方達はこの世界の仕組みを全て理解していた。だから奴が不老不死になったタイミングで、奴の親族、友人、そして僕を殺せば全てが終わる。何もかもが解決できると思っていた」
黒騎士が破壊した建物を眺めながら、僕は言った。
「悪魔と契約する前ならば、ただの人間。無防備。今ならば銃で一発頭を貫けば、世界の勝利だと確信していた。確かにその通り。僕は頭を打ち抜かれたら死んでいた。だけども僕は生きている。黒の騎士に守られて、僕は生きのびる事ができた」
どうしようもなく、あらゆる状況になっても対処できるようにしていた人類には敬服する。
なんでここまで優秀なのに。コイツを殺せなかったのだろうか。
「南条さん。白髪さん。今ならまだ、僕を殺す事が出来ます。僕はまだ、ただの人間。お二人が本気の一撃さえ与えられれば、僕は間違いなく死ぬでしょう」
何故、こんなにも力がありながら、僕の家族は殺されたのだろうか。理解に苦しむ。
元主催者……黒騎士の王は、黄金の髪を揺らめきながら、2人に向けて一臂足を踏み入れた。
「勝てますか? スポーツカーより早く、片手で戦車を壊し、ミサイルが直撃しても死なない不死身の魔物に」
南条さんは銃を持ち。「――貴方を、止めて見せる」
白髪さんはナイフを片手に。「悪いが、俺はまだ本気を見せちゃいなかったぜ」
黒騎士を通してみても、2人の殺意がこちらにビンビンと伝わってくる。
彼等なら、ひょっとしたら僕を殺す事ができるかもしれない。
そんな事を微塵とも思わずに、勝手に世界を賭けた最後の決戦を始めようとする2人に対して――
「リチュエルさん!」
「はいはい。いますよいますよー」
死神装束を身に纏い、長い銀色に輝く髪の下に妖怪のような紅い単眼を光らせ、彼女は何も無い空間から姿を現した。
「なんの御用かな?」
「いますぐ、あの2人を殺してください」
引き金を引くより早く、僕は2人に死刑宣告を下す。
瞬間、眼を見開き、2人は此方に飛び掛かる。
「あい、分かったよ」
黒騎士達が止めるまでもなく、まるで魂が抜けたかのように、2人はそのままヘッドスライディングするように地面に転がった。
人形のようになった体を屋上の網がささえた事を確認した所で――。
「次に、あの2人を僕の命令を絶対に聞くような形で生き返らせて欲しいんですけど…… できますか?」
「できるよ。できなくもないけど、分かるだろう? それなりの代償が必要になってきちゃうんだよ。私は人間を殺す事に関しては対価を求めないけど、なんだか複雑そうな事なら話は罰さ。まぁカゲトはその点において重々理解はしてくれていると思うけどね」
「その点なら問題ありません。この場に居ない癖に、この場の声を聞いている卑怯者の魂、全て捧げます」
「……へっへっへ! なかなか面白い趣向だね! いいね! いいよ! 面白いって大切さ! 重要さ! だからその条件を受ける事にしよう! へっへっへ!」
きっとこの会話を盗聴している奴等はマイクの向こう側で大慌てを始めているだろう。
だからこそ、言ってやった。
「お前達は1人の学生の命より、世界の都合を選んだ。合理的、実に合理的です。だけども、賭けに失敗した代償は僕に全て払ってもらう」
リチュエルさんは、空高く飛んだ。
青色の空を、黒く染め上げるような闇を纏いながら――。
楽しそうなリチュエルさんは、世界に向かってこう叫んだ。
「へっへっへ! 残念だったな、人間共! 君達は気づくべきだった、注意すべきだった、そして配慮すべきだった! カゲトが偶然選ばれただなんて思わなければ、思い込まなければ、謝罪していれば、誠意を見せれば、助ける事ができれば、見捨てなければ! 彼は望まなかったかもしれない! だけどももう遅い! 」
黒い太陽のような禍々しい殺意が、辺りを黒く焦がし尽くす。
これが影なのか、それとも焼けているのか、もはや理解の範疇を越えている。
「君達人類は史上初めて、不老不死の真相を知った人間を私の友としてしまった。お前達は無能さ。無能だからこそ、死ぬ。死ななければならない。だけど、君達は幸せさ。死ぬ前に、こうやって覚悟ができるのだからね」
黒い太陽は、そのまま無数の矢となって世界に放たれた。
1つ1つが命を貫く。
今までの行動と比べればその代償は軽いとは思うけど、世界とは平等に創られてない。
僕はそれを踏まえて――。
「さようなら」
血の通っていない彼等とは違い、僕は必要最低限に別れの挨拶を彼等に贈った。
「こんにちは、影人」
「よう、学生君」
先程まで死んでいた南条さんと白髭さんが、目を輝かせながらこちらに挨拶をした。
「おはようございます」
「もうお昼よ? 影人は何を寝ぼけているのかしら? まぁ最近色々あったから疲れているのかもしれないけど、屋上にまできて「おはよう」ってのは無いんじゃない?」
「学生君は少し抜けている所があるからな」
なんだか覚えのあるような会話を交わしながら、僕は彼等にお願いをする。
「南条さん、一日でも早く授業が開始できるように手配して貰えませんか? 白髪さん、僕が生活で使う全ての場所の盗聴器その他全てを排除してほしいのですが…… その、なるべく早くです」
目を紅く光らせながら――
「分かったわ」
「了解した」
そのまま、20階以上あるビルから飛び降りる2人。
相変わらず、やることがいちいちダイナミックすぎる。
「さて、障害と呼べる存在はそこそこ壊しきった訳だけど。カゲトは次に何をするつもりなのかな?」
「んー。まぁ、とりあえずは……」
傷だらけの背すじを伸ばしながら、僕は綺麗な青空を見ながら、こう言った。
「お昼ご飯を食べる事にします。この時間はそうすると決めているので」
「へっへっへ。成程ね。確かにそれは重要だよ。君にとっても、私にとってもね」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この作品はここで完結という事になりますが、続きはあります。
というのも、この本作は書いていた小説が1年エタってしまい、復帰に向けたリハビリがてらに書いた作品でした。
僕と魔王の復讐協定
https://ncode.syosetu.com/n3199dj/
本作の少年に支配された世界(日本)から飛び出した異世界人、というような設定になってます。
よろしければそちらもよろしくお願いします。更に1年エタっていますが、代わりにコチラを更新していきたいと思います。
別の作品書きたくなったら、本作の続きを別途作るか、同じ世界での話を書きたいと思います。
ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
貴方の来世は、きっと天使となる事でしょう ~終~




