第三話 衝撃の事実
あの夜、いつものように姉ちゃんにモデルを頼まれている時の話の続きだが。
まさか姉ちゃんが、将来の夢がそういう夢だなんて知らなかった……。
俺は自室の机に向かって一人あの夜の事を考えていた。
話はあの夜に戻るが。
◇◆◇◆◇◆◇
「個展王に私はなる!」
「はは、変わってないな」
姉ちゃんはいつか個展を開くことが夢なのは昔から知っているが、
いつも人物画ばかり書いているような気がするんだよな?
普段ならここで終わる話だったんだけど、今日はなぜか具体的に聞きたくなった。
「なあ姉ちゃん。個展って具体的にはどんな絵をみんなに見てもらいたいんだ?」
「アニメキャラのデザイン原画だよ」
は?
なんだって?
ん? よく聞こえなかったフリをしてもう一回聞いてみよう。
「ご、ごめん姉ちゃん、よ よく聞こえなかったからもう一回聞いていいか?」
「だから!アニメキャラの原画! いつかアニメーションの仕事について原画を描いて個展を開きたいの」
なんだってーーーーー!?
まさか、成績優秀な姉ちゃんがアニメキャラデザの仕事をしたいだなんて、し 知らなかった。
俺は唖然として、モデルのポーズを崩して姉ちゃんを見ていると。
「お、可笑しいかな? 私がアニメの原画の個展を開きたいだなんて ……」
姉ちゃんはイラスト用紙で目の下を隠しながら上目遣いで俺を見る。
「い いや。可笑しくない。 ま まさか、マジメな姉ちゃんがアニメのキャラデザの仕事がしたいだなんて、全く想像もつかなかったからさ。驚いたんだよ」
まさか、姉ちゃんがアニメキャラ原画の個展を開きたいなんて想像もつくはずがない。
「ほ、ほら 瞬。ポーズが崩れてる。もう一回」
「あ ああ、ごめん」
俺は再度ポーズを取りながら目だけで姉ちゃんを見る。
姉ちゃんは俺とイラスト用紙を交互に見ながらデッサンを続けているが、
姉ちゃんの頬は少し赤くなっている。
「姉ちゃんの夢がアニメキャラの原画を描きたいだなんて知らなかったけど、誰か好きな絵描きの人とかいるの?」
俺は変わらず横目だけで姉ちゃんに話しかけると。
「うん。 『夜田 シュン先生』の絵が大好きなの」
ビク!?
「そ、そうなの? 『夜田 シュン先生』の絵か……」
==『夜田 シュン』==
今人気急上昇中のアニメキャラデザイナー。
主に萌え系とされる女の子キャラのデザインをしている。
その正体は不明とされているが……。
ま、まさか。夜田シュンの絵が好きだなんて。
「夜田先生の描く女の子がとっても可愛くて、私もいつかあんな可愛いい女の子が主人公のアニメのキャラを描けたらいいなぁて。その為に今瞬にモデルをやってもらっているの」
なるほど、だから姉ちゃんは人物画しか描かなかったのか。
アニメキャラにどういうポーズをさせるかの試作段階でのモデルか。
「恥ずかしいから誰にも言っちゃダメだからね!」
かなり恥ずかしかったのか、顔を伏せて俺に念押しをしてくる。
◇◆◇◆◇◆◇
そして、冒頭に戻ってくるのだが。
「まさか、姉ちゃんがアニメのキャラデザがしたいだなんてな……。しかも夜田シュンのファンだったなんて……」
と一人言を言いながら、俺は自分の机の引き出しを開けファイルを取り出す。
そこには、夜田シュンが描いたアニメキャラの原画がしまってある。
そう。
夜田 シュンの正体は……。
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