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137  作者: 大塚
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ゴーグル

 朝日は、椅子に腰掛けて望遠鏡をのぞいている。組まれた足がうっすらと光る。

 星の表面で反射した太陽からの光が、この部屋に、射し込んでいるのだ。

「何か面白いもの見える?」

「いや、いつも通りかな」

 ちょっと悔しそうに彼女は、はにかむ。

 僕は立ち上がって、部屋の隅に置かれている本で散らかった机からノートパソコンを取ってきて彼女に渡した。

「ありがと」

 太ももの上に乗せて、パソコンを開く。バックライトは彼女のために暗く設定している。

 現実味がないほど華奢な指が、キーボードを数回、叩いた。

 画面に、より鮮明に星が映る。

 冷静に見ると巨大な大陸が目立つ。地球でいうパンゲア大陸のようなものだ。

 大陸の山々を彩る植物の色。

 地球よりやや深い緑で、染まっている。

 周りを取り囲む、おだやかな海。

 豊かな自然が揃いも揃ってこの星には、存在する。

 彼女が、首を振りながら髪をかきあげ、胸ポケットからゴーグルのような物を出して目にかける。視力補正具だ。

「半月か。」

「月っていうのか?」

「まぁ、慣例通り、そう呼んでるね。月と同じで満ち欠けするから。」

「なんか、ぎこちないな。」

「何が?」

「はっきり星の名前が決まらないのが」

 ゴーグルをつけたまま、朝日がパソコンから目を上げた。今にも、視線で貫かれそうでこそばゆい。この状態の彼女はどのくらい僕のことが見えているのだろうか。

「私、いくつか候補決めてるの」

 薄いピンクの唇がそれ単体で生き物のように動いた。

「聞いてもいいかい」

「センスないって言うからヤダ」

 反論しようとしたら、パタンという音とともに胸に鉄板が押し付けられた。

「はいはい、くだらない話は終わり。ご飯食べに行こ」

 時間は限られているんだから。

 ゴーグルから解き放たれた目が、いたずらっぽく笑う。

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