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色織  作者: 千坂尚美
一章 緑森宮編
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爬鳥

おはなし8  


 ちょっぴりかわいいリスのリッスン(50cmもある)をツタでぐるぐるに縛り上げたツムグとマツボ。レッツおしゃべりタイムだ。

「はなすポゥ!はなすポゥ!お前らやっぱり許さないポゥ!。」

「ごめんなさい。」

「許すポゥ。」

ありがとう。

「で、舞茸村をつぶすとか(笑)その五百円玉で何をしようってんだ?。」

「コレは我の武器兼第二の心臓ポゥ。どんな攻撃からも守ってくれるポゥ。」

「ガードに使うのか。」

大事ににぎりしめているから五百円ごとツタでしばられている。

「そうだったポゥ。我はガード専門だったポゥ。相方がいるんだポゥ。」

「へぇ、おいてけぼりなんやな。」

「そうだポゥ。」

「………。」

「どないする?ツムグはん。」

「そうだなぁ。」

「ポォウ?。」

リスのリッスン、悪いやつなのか、いいやつなのか、いまいちよく分からない。

「お前、ほんとに舞茸村を襲うつもりなんだな?。」

「あたり前ポゥ。」

悪いやつっぽい。

「とりあえず爪、食らわしとくか…。」

白いモケモケの煙のような物体がツムグの左手から出てくる。

「ポゥ?何するポゥか?…や…ゃゃゃ、やめるポ、ポオオオオオオオオオオオオオウ!!。」


「いや~気分爽快すっきりポォウ。」

うーんとのびをするリッスン(五百円はお腹にくっついている)。ツムグの爪を暗い悪い邪気から払われてすっきり爽快気持ちよさそう。蝶々の羽をパタつかせてツムグ達についてくる。

「ついてくるなよ。」

「何言ってるポゥ、旅は道ずれポゥ。」

バッサバッサと蝶の羽をパタつかせるリッスン。こうしてツムグとマツボに新しい仲間(?)が加わった。そのままツムグ達は一時間ほど歩いて次の町、舞茸村に着いた。

 舞茸村は人口も増え発展の最中にあるそこそこ栄えた町、のはずだった。しかし、村は全てが荒れ果てていた。土地はえぐられ民家と思しき建物は、そのほとんどが半~全壊している。壊れた木々の板があちらこちらに山を作っている。畑、田んぼもめちゃんこに荒れ崩れている。家の代わりに難民用テントがいくつか張られていた。

「ポーォウ。我がやったんじゃないポゥ。」

「うん、別に疑ってないよ。」

五百円玉一つでこんなに荒れ果てさせるのは不可能だ。

「何があったんやろ?。」

「うん、とりあえず、村の人に話を聞いてみよう。

「せやな。」

遠くの方で、村の復旧にいそしむ人たちがちらほらと見える。ツムグ達は村に何が起こったのか、聞き込みにテントへと向かった。

 テントを開けると、そこには傷ついた村人たちがたくさん倒れていて、看病をうけていた。

「あのう。」

テントの入口で口を開きかけるが、誰も自分たちに気づいてはいない。仕方なく入口を開けたままつっ立っていると、自分たちの存在に何人か気づいて、声をかけられる。

「はい、どなた様?。」

近くにいた60歳くらいのおじさん(?)おじいさんが聞いてくる。

「どうも、僕たち、旅の者です。一泊とめてもらいたいのですが…。」

「おう、旅のお方か、舞茸村へようこそ…と、言いたいところだが、見ての通りこのあり様でな。」

「…この村に、何が起こったんですか?。」

「ウム、それがなぁ…竜巻が起こったんだ。」

「…竜巻!?。」

顔を見合わせるツムグとマツボ、リスのリッスン。竜巻なんて異常気象、めったに起こるものではない。その男性の話によると、昨晩、急に竜巻が村に発生し、ほとんどの民家は壊廃し、時間が時間故多くの人が逃げ遅れ、多くの死傷者が出たのだという。

「そうでしたか。」

「危なかったなぁ、一日間違えてたらワイら竜巻食らってたかもしれへんかったで。」

「そういうわけでなぁ、宿もみんなきえてしまったんだ…。」

男の口調は字ずらでは申し訳なさそうだが、申し訳なさよりは悲しみに満ちているように思えた。

「あの、場所が空いていれば、このテントの中で泊まらせてはくれませんか?。」

男は少し黙り込んで、空いているスペースを指さしてそこを使うように言ってくれた。ツムグは少し深めに一礼した。


 ツムグ達は日が沈むまでの空いた時間、村の復旧活動を手伝うことにした。仕事内容は、壊れた家の残骸を一か所に集めて、また家が建てられるよう空き地を作ることだ。うんしょうんしょと重い木片を一個ずつ運んでいく。ツムグとマツボは木材の端をつかんで持ち上げている。

「しかし、ひどいな。」

「はぁ、はぁ…せやな。」

「ポォーウ。」

「竜巻なんて本当に起こるんだな。黄の国ではよく起こるって聞いたけど、緑の国でも起こるだなんて。」

「はぁ、はぁ…せやなぁ。」

二人は壊れた木材を集めている場所に、運んだ木材を下ろした。一方、50cmのリス、リッスンは、

「ポーウ、二人ともがんばってるポゥ、我もがんばるポゥ。」

自分の体より大きい木材がバラバラになっている。その一つを持ち上げようとするリッスン。

「ポゥ…ポ…ポォォォウ!。」

必死に持ち上げようとするも、わずかにういたまま持ち上がらない木材。

「ポォウ!。」

ガタン!。木材は倒れ、それの下敷hきになってしまう。

「おいおい。」

「ムリしたあかんで。」

ツムグとマツボはリスにかけより木材をどかしてやる。

「ポォウ、めんぼくないポゥ。」

「いや、いいって。」

「ポォウ、我じゃ運べそうにないポゥ。…スマンポゥ、かわりに食料調達してくるポゥ。」

パタパタと村の外へと飛んでいくリッスンであった。

「しかしへんやなぁ。」

「?。」

「あのリス、ついさっきまではこの村を襲おうとしていたのに、今になってはこの村の復旧の手伝いしようとするなんて、これもあのキラキラシャキーンの力なん?。」

「うーん、どうだろ、あいつ、元々はそんなに悪いやつじゃなかったのかも。」

「ふーん。じゃあなんであんなこと考えたんやろなぁ。」

「あいつ、仲間がいるっていってたよな…そいつの影響かも。」

「…………ん、じゃあ悪いやつが近くにおるゆうこと…なん?。」

「………ぁ…うん。」

「おお~い!。」

『?。』

遠くから、誰かに呼ばれる。

「君たちー、手伝ってくれてありがとー。お礼に一緒に炊き出し食べないかー?。」

テントの方ではもくもくと炊き出しの煙が調子よく上がっている。」

「炊き出しやて~、やったなツムグはん!。」

よだれを垂らすマツボ。それを見てツムグもわずかにほほ笑む。

「うん、そうだね。」

また一つ、木材を二人は運び終えた。


 日は暮れて、二人はテントの中で村人たちと一緒に炊き出しの汁飯をすする。

「ぷは~うまいでぇ、炊き出し最高やわー。」

「うん。」

ツムグも仕事後の夕食に予想以上においしさをかみしめる。

「しかしあのリス、どこいったんやろなぁ。」

あのリスとはもちろんリッスンのこと。食料調達に村の外の林に入って行ったあと、未だに帰ってこない。

「ああ、道に迷っているのかも。飯食ったら探しに行こっか。」

「せやな。」


 一方そのころ、林の中でリッスンは、相方であるヤモリに羽の生えた珍獣、ヤモドリ(1mくらいある)と出会い対談していた。

「ポォウ、やっぱり村を襲うのはやめた方がいいポゥ。」

「なぜだ?あのお方が人間の住む村を襲えと命ぜられただろう。」

「そうだポゥが、みんな天災にあって傷だらけだポゥ。」

「フフ、だからこそ、今が襲い時なのだ。」

ヤモドリは、背中に生えた大きな翼を広げ、村へ向けて飛び立った。

「ま、まま、待つポゥ!。」

村へ向けて飛び立つ珍獣、それを追いかけるリッスン。その後、二匹は食事を終え林の中にリッスンを探しに出てきたツムグとマツボとはち会う。

「なるほど、お前がそのリスに何かを吹き込んだんだな。」

翼をもった爬虫類を睨みつけるツムグ。

「何のことだ?。」

「何でもいい、八つ裂きにしてやる。」

左肩に狛犬の顔が現れ、左腕が白毛に覆われるツムグ。

「フフン、カラーか、人間、貴様こそ八つ裂きにしてくれよう。」

「ま、待つポゥ!二人とも!止めるポゥ!。」

「どけ!邪魔だぁ!。」

ヤモドリは長くしなる尻尾を振り回しリッスンをなぎ払う。

「リッスン、お前は甘すぎる。我らの理想を叶えるには、非情にならねばならん!。」

鋭く生えた三本のツメを尖らせ襲い来る爬虫類。その爪を容易に左手で受け止めるツムグ。

「我ら?お前みたいな思想のやつがまだいるのか?。」

「ルガァァァァァァァァァァァ!!。」

次の爪がとんでくるのを素早くかわすツムグ。振り回す尻尾も軽い身のこなしでツムグはかわし、カウンターの要領で思いっきり敵の体を切りつける。

「グ…グギャァァァァァァァァァ!!!。」

技を決めた彼の目は、いつになく冷たかった。



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