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色織  作者: 千坂尚美
二章 紅灼城編
43/144

悪魔

おはなし2-17(43)  


「いやー、マジでビビったぜ。本当に王と話ができるなんて、あの人、本当何者なんだよ、俺と同い年だろ?」

「そりゃあだって、さやな様だし。」

花は理由になっていない理由を述べる。サトは「王様厳いかつすぎだろ、マジでビビるなアレ。」とぼやいている。さやなといえば、彼女は紅灼王との面会を後にすぐに緑森宮へと帰ってしまった。ツムグはさっきからぼうっと東の空を眺めている。花は、バシンと彼の背中を叩く。

「え、何?」

「もうツムグ、さやなさんブルー?」

「ああ、うーん。」

しゃきっとしないツムグ。そんな彼の背中にはマヨセンの旗がかかっている。

「一応私たちのリーダーなんだから、しっかりしてよね!」

右手を腰に当てて左手でメガネをカチャリとする花。

「うん、ごめん、じゃあそろそろ行こっか。」

旗を一つなびかせてツムグ達一行は、長くお世話になった宿を後にする。そして、都を出る際、花のおじいちゃんに別れの挨拶をしに行ったが、花じいが号泣していたのは言うまでもない。そして一行は、新たな旅へと、都をさらに南へと下った。



「マヨセンさん、マヨセンさん!」

山道でたぬきさんがツムグ達を呼び止める。

「何ですか?」

「はい、ここから少し離れたかんな峠に住んでいるのですが、最近、不気味な化け物が現れて、辺りの草木を腐らせて困っているんです。」

「腐らせる?」

「はい。そりゃあもう恐ろしい容姿で、峠の皆ぁ怖くて震えています。どうか駆逐してやぁくれませんか?」

仲間の顔を見るツムグ。頷く一同。

「よし、じゃあそこへ案内してくれますか?」

そうして依頼を引き受けたツムグ達は、依頼人によって鉋峠へと案内された。そこでツムグ達を待っていたものは…、

ドロドロドロ

青紫の濁色に腐敗した一メートルほどの山状の体に、三本の長い黒い鋭い爪。コウモリのそれのような形の二枚羽を持っており、羽はぼろぼろに朽ちている。顔は持っておらず、頭のある部分に口の様な空洞がどろどろの体に空いている。臀部でんぶにあたる部分からはサソリの様な黒い細長い尾が生えていて、その姿は不気味という他ないおぞましい生物だった。

「おいおいこれって、」

「うん。」

「悪魔?」

身構えるツムグ達。悪魔はツムグ達の方には関心を見せず、どろどろとすさまじいのろさで蠢いている。

「本でしか見たことないけど。」

「ああ、俺もだでも、何で悪魔がこんなところに?」

「分からない。でも、とにかく仕事をしよう。」

「うん。」

「ああ。」

それぞれの瞳を自身の色彩に染め、赤青黄色のカラーを煌かせる。三人は、タッととびかかり、一斉に攻撃を放つ!赤翼と白手、銀杏の樹幹が謎の生物に突き刺さる。

「ジェ、ジェァァァァァァァァァァ。」

悪魔はまるで、アイスクリームが溶けるかのようにいとも簡単に溶けてしまう。

「………。」

ツムグ達はポコポコと蒸発する藤鼠の残液を見てめていて…。



 報酬を得たツムグ達は次の目的地へ向けて、さらにさらに南下していく。いくつもの山や村を超え、仕事を請け負い、こなし、進んでいく。そして…、

 山道の途中に、木でできたぼろい看板を見つける。

〈ここから先、蒼の国〉

「ふぅ、とうとう来たな。」

「うん。」

ツムグ達は、新しい国へと一歩を進めた。

 



                           第二章 紅灼城編 完


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