悪魔
おはなし2-17(43)
「いやー、マジでビビったぜ。本当に王と話ができるなんて、あの人、本当何者なんだよ、俺と同い年だろ?」
「そりゃあだって、さやな様だし。」
花は理由になっていない理由を述べる。サトは「王様厳つすぎだろ、マジでビビるなアレ。」とぼやいている。さやなといえば、彼女は紅灼王との面会を後にすぐに緑森宮へと帰ってしまった。ツムグはさっきからぼうっと東の空を眺めている。花は、バシンと彼の背中を叩く。
「え、何?」
「もうツムグ、さやなさんブルー?」
「ああ、うーん。」
しゃきっとしないツムグ。そんな彼の背中にはマヨセンの旗がかかっている。
「一応私たちのリーダーなんだから、しっかりしてよね!」
右手を腰に当てて左手でメガネをカチャリとする花。
「うん、ごめん、じゃあそろそろ行こっか。」
旗を一つなびかせてツムグ達一行は、長くお世話になった宿を後にする。そして、都を出る際、花のおじいちゃんに別れの挨拶をしに行ったが、花じいが号泣していたのは言うまでもない。そして一行は、新たな旅へと、都をさらに南へと下った。
「マヨセンさん、マヨセンさん!」
山道でたぬきさんがツムグ達を呼び止める。
「何ですか?」
「はい、ここから少し離れた鉋峠に住んでいるのですが、最近、不気味な化け物が現れて、辺りの草木を腐らせて困っているんです。」
「腐らせる?」
「はい。そりゃあもう恐ろしい容姿で、峠の皆ぁ怖くて震えています。どうか駆逐してやぁくれませんか?」
仲間の顔を見るツムグ。頷く一同。
「よし、じゃあそこへ案内してくれますか?」
そうして依頼を引き受けたツムグ達は、依頼人によって鉋峠へと案内された。そこでツムグ達を待っていたものは…、
ドロドロドロ
青紫の濁色に腐敗した一メートルほどの山状の体に、三本の長い黒い鋭い爪。コウモリのそれのような形の二枚羽を持っており、羽はぼろぼろに朽ちている。顔は持っておらず、頭のある部分に口の様な空洞がどろどろの体に空いている。臀部にあたる部分からはサソリの様な黒い細長い尾が生えていて、その姿は不気味という他ないおぞましい生物だった。
「おいおいこれって、」
「うん。」
「悪魔?」
身構えるツムグ達。悪魔はツムグ達の方には関心を見せず、どろどろとすさまじいのろさで蠢いている。
「本でしか見たことないけど。」
「ああ、俺もだでも、何で悪魔がこんなところに?」
「分からない。でも、とにかく仕事をしよう。」
「うん。」
「ああ。」
それぞれの瞳を自身の色彩に染め、赤青黄色のカラーを煌かせる。三人は、タッととびかかり、一斉に攻撃を放つ!赤翼と白手、銀杏の樹幹が謎の生物に突き刺さる。
「ジェ、ジェァァァァァァァァァァ。」
悪魔はまるで、アイスクリームが溶けるかのようにいとも簡単に溶けてしまう。
「………。」
ツムグ達はポコポコと蒸発する藤鼠の残液を見てめていて…。
報酬を得たツムグ達は次の目的地へ向けて、さらにさらに南下していく。いくつもの山や村を超え、仕事を請け負い、こなし、進んでいく。そして…、
山道の途中に、木でできたぼろい看板を見つける。
〈ここから先、蒼の国〉
「ふぅ、とうとう来たな。」
「うん。」
ツムグ達は、新しい国へと一歩を進めた。
第二章 紅灼城編 完




