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色織  作者: 千坂尚美
二章 紅灼城編
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新色

おはなし2-9  


 僕たちは傷口が治るまで待った。マツボも気を取り戻して四人で地面に座っている。迷路内のアナウンスがたった今四組目のチームがゴールしたことを告げた。

「ひーふーみー…八つの鍵がゴールしたか。」

「で、あの大トカゲヤローが私達からキーを奪って八つになった。他のキーはあと四つね。」

「うん、どうしようか。残り四つのキーを狙うか、また奴らと戦ってキーを奪い返すか。」

「はぁ?どの道出会った奴ぶっ倒していけばいいんじゃね?」

「はぁ?バカなの?またあのはハチュー類と戦ってこれ以上ダメージ食らったらもう戦闘不能、そしたら負けになるのよ!」

「……ぅ、…それもそうか。いや、奴らはどーしてもぶっ倒したかったが、しゃーない、残り四つのキーを狙おう。」

「うん、あのトカゲ組と出会っても僕らは戦闘しない。」

「オッケーや!」

そういうことになった。ツムグらはゆっくりと立ち上がって、早速残りのキーの持ち主を探しに行った。



 かなり迷路に迷った挙句、途中、泣きじゃくっている子供たち四人組と出会った。ツムグ達は近づいて行って話してみることに。

「…どうしたの?」

「えーんえーんえ……な、何だお前たちぃ!」

子どもたちは泣き止む。

「え、なんだって…えっと、式彩紡です。」

「いや、そうじゃねーだろ。」

サトがあきれて言う。

「お前ら、何わめいてんだって聞いてんだよ。」

四人の子供たちに聞く。すると、

「聞いてくれよ!オレ達鍵を二つそろえたのにそれを大きなトカゲに奪われたんだよ!これが泣かずにいられるか!」

「ああ…何かどっかで聞いたことのある話__。」

「俺達だろが!!」

サトのツッコミに笑いをこらえるツムグ。そんな彼はおいといて、

「ねぇ君達、その大きなトカゲって、そいつら鍵たくさん持ってなかった?」

今度は花が聞く。

「うんうん!たっくさんジャラジャラ持ってたぜ!」

うんうんと激しくうなづく子供たち。

「もう一個聞くね。鍵を奪われたのはついさっ…。」

ピンポンパンポーン

『!』

「ただ今、5組目のゴールがありました。残りの皆さん、引き続き健闘してください!」

ピンポンパンポーン⤵

迷路内にアナウンスが木霊する。そんなのは無視して一人の子供が花の問いに答える。

「そうだよ。たった今奪われたんだ……うわーん、うわーんっっ。」

それを聞いて顔を見合わせるツムグ達。

「今までゴールした鍵が8個。」

「大トカゲがこいつらから奪って10個。」

「鍵は全部で20個だから今ゴールしたのは残りの2個か大トカゲたちの10個か…。」

「でも奴らが鍵をこの子たちから奪ったのはついさっきなんだよね、じゃあ奴らが残ってる確率の方が高いわ。」

「うん、次にゴールが出ればこの試合は終わる。」

「くっそ結局再戦になるのか。」

3人の会話をマツボは口をぽっかり開けて聞いている。

「うん、でもやるしかない。」

ツムグの声に頷くサトと花。

「おい、お前ら、奴らどっちに行ったか分かるか?」

サトの問いに子供たちは泣きながら方向を指さす。

「よし、ありがとう。行くよ!」

ツムグの掛け声でダッシュの体勢に。

「待って!」

子どもの一人が彼らを止める。

『!?』

「お兄ちゃんたち、まさかあいつらと戦う気?ムリだよ、あいつら…というかあいつ(・・・)は強すぎる。僕ら手も足も出なかった。それでも行くの?」

「………。」

ツムグらは4人の子供の方を向いて立ち止まる。サトが口を開く。

「あああ、それでも行くんだ。俺らは奴らに貸がある、そいつを返してもらわないとな。」

『???』

「じゃあな。」

僕らは大トカゲの足取りを追って鉄張りの通路を駆けた。分かれ道を右に曲がる。そしてまた右に、また右に…行き止まり。少し引き返してT字を折れる。また前進し右に折れ、右に折れる。

「あのさぁ!右ばっか曲がってるけど、これで本当に合ってるの!?」

「……。」

また行き止まりになり戻ってを繰り返す。すると、目の前に一枚の鉄板が立ち塞がる。

「っ、カギがねーと入れないやつか…。」

「まさか、奴らが閉めてこの先に行ったんじゃ…。」

「いいや、それはないよお嬢ちゃん。」

『!!』

突然の声に四人は左に伸びる通路を振り向く。

「へへ、来やがったぜ。」

ヘラァと笑うサト。

「貴様ら、まだリタイヤしてなかったとは、痛めつけ足りなかったようだな。」

前方には大きな黒橙のトカゲ人間に、それをとりまく三匹の下っ端トカゲ。

「クロクイ様、やっちゃって下さい!」

「フン。」

大トカゲはクロクイという名前らしい。ゆっくりと前に出てきて薄汚い橙のカラーをまとう。ツムグ、サト、花も無言で歩み出て、青赤黄色、それぞれのカラーを纏う。

ふっ

速く息を吐いて一気に距離を詰める。犬の爪と山鳥の羽、銀杏の木を敵の体に放つ。

ガッ、ゴッ、ジャァアアアア!!!

三つのカラーが敵をしとめる。が…、

「グゥオオオラアアアアアアアアアアアア!!!」

半身ジャイアントホーンリザードとなった竜人は、体の一振りで白手、赤羽、銀杏を弾き飛ばしてしまう。

「ウグゥオオオオオオオオオ!!!」

敵の尻尾にカラーがきらめく。

バキバキバキ…

尾は刺々しい堅牢な武器に変わる。振り回される武器、今度は不意打ちを食らうことなくそれぞれ擬態した手足を使って敵の重い攻撃を受け流していく。

ギャギイイイ!

「チィ、重ぇなぁ。」

「グルアアアアアアアアアア!」

トカゲはツムグに殴りかかる。ツムグは圧倒的な怪力パンチをギリッギリでかわしていく。

ブンッ!スンッ!スゥンッ!ブゥオン!!

「う……おおおお!」

ツムグはパンチを避けると同時に身をひるがえして左手の一撃を擬態していない敵の太ももに決める。

「グ…ウゴオオオオ!!」

苦しみながらもさらに敵のカウンターが決まる。

「ぐぶぅぉえ!!」

強力なパンチに数メートルふっとぶツムグ。花はすかさず木の蹴りを放ちクロクイを横の壁に叩きつける。植物で捕らえたところにサトが切りかかる、が、竜人はすさまじい怪力で木を振りほどきかかって来たサトを殴り飛ばす。

「ぐぶぅあ!」

とっさに右翼で防ぐが地面に叩きつけられる。

「チィィィィ。」

荒れ狂う尻尾をかわす花、サトは再びかかっていく。花はかわしきれない一撃を樹木化した左足で防ぎ、サトは敵の拳を翼で防ぐ。

ズザアアアア

攻撃の反動で後退する二人。

「くっそあの怪力…サト、アレ(・・)使えないの!?」

「ん、アレか…悪い、ちょっと時間がかかる!」

「分かった。じゃあ私が時間稼ぐ!」

「でもお前…。」

「いいからタメロ!」

ダッと駆けていく花。

「お、おう。」

一人でクロクイと戦う花。サトは両目を閉じて集中する。

「お……おお……お…うぐお…う…が…あ…あ…ああ゛あ゛あ゛あ゛ガ!!」

頭を抱えるサトの右わき腹からユラユラと白い煙の様なものが漂い始める。煙はサトの苦しみに呼応しモゴモゴモゴモゴ、いびつに形を変形させていく。その時、

ドガァ!

「ぐあああああ!!!」

花が強力な尾っぽのハンマーで鉄壁に叩きつけられる。

「フフ、あとは…。」

ゆっくりとサトに近づくクロクイ。

「オ…オオオオレヲ、ヤルッテノカ?…ケ、ケケケケゲ…ゲ…ガハ…テメ…マジブッコロス。」

ユワリ、フワリ…

白いモヤは薄くなって消えていく。その変わりに彼の右腹部から点に向けてカドミウムレッドパープルの光の粉がチラチラと舞う。

「フン、ワラワセェエエエエエエエエエエエエ!!!」

ボゴボゴボゴボゴ

赤黒い物体が光の粉の中に形成されていく。

「グオラアアアアアアアアアアア!!!」

雄叫びを上げてサトに突っ込むジャイアントホーンリザード。サトはギンッと赤い右目を見開き、固い緋緋色の鱗目掛けて腹部から生えたそれを一直線に放つ。

ゴギャラアアアアアアアアアアアア!!!

すさまじい衝撃音が鳴り、竜人の体は数メートル後ろへと弾きとばされゴロゴロと転がる。サトの新しい擬態は彼の体を這うようにしてぐるぐると蜷局とぐろを巻く。それは黒い甲羅に鮮やかな赤い頭と無数の足を持つ大きな大きなトビズムカデ。横幅は50cm近くもある。敵の堅牢な鱗には大きなひびがいくつも入っている。クロクイは自分の体を見てぎょっとする。

――お、オレのこの体にヒビが…!?野郎、こんな力を隠し持ってたのか。ぐっそ、だがまだ負けたわけでは……!?

チリチリチリ

クロクイの緋緋色の鎧は薄い橙の光の粉となり蒸発して消えていってしまう。

「な…な…まさか…!!?」

驚くクロクイをサトは冷たく見下ろす。

「カラー切れ…どうやら調子に乗って戦いすぎたようだな。ま、どの道オレが勝ってたが…な!!!」

「な!!」と同時に右手をかざしたサトはムカデを放ち、無防備になったクロクイにとどめの一撃。クロクイは「ぐぎゃあ!」と断末魔をあげノックアウト。大将がやられ、「ひぃぃぃ!」と逃げ惑う下っ端トカゲたちをサトはムカデを操り一瞬にしてなぎ払う。サトの右目は赤い色彩を失い、ムカデの体は赤黒い光の粒となって蒸発する。

「ま、借りは返してもらったぜ。」

マツボはタッタッタッとのびているトカゲの元へ走り、カギのたくさんかかった輪っかを奪い取る。掲げたクマの手にはキラリと光る赤と銀が輝いていて…。


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