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色織  作者: 千坂尚美
二章 紅灼城編
32/144

祖父

おはなし2-6(32)  


 ズズズ

 旅人用ユースホテル、室内で四人はお茶を飲んでいる。

「たぁ~、あったけぇ~うめ~。」

はぁ、とサトがため息をこぼす。

「あ~やっぱお茶だよね~。」

「んー、ごっつうまいわ~。」

ズズズ

四人が飲んでいるのはあったかい緑茶だ。

「ところでさぁ?」

「何?」

「一回戦も終わって一段落したし、私のおじいちゃん探しに行こうよ。」

「…そうか、花のおじいちゃん紅灼城で働いてるんだっけ?」

「うん、城下町のどっかの製鉄所で働いてるはずだけど。」

火山の斜面に造られた城下町にはドロドロとマグマが流れている。鉄を造るのにはうってつけだ。ゆえに町のいたるところ、流れるマグマの川沿いに多くの製鉄所がありそこで機械のパーツや武器の数々を製作している。個人経営の製鉄屋もいれば王宮から直々に雇われている者もいる。花の祖父はその腕前を認められて王宮に直に雇われているという。

「うん、そうだね。行ってみよう。」

僕達は熱いお茶を飲みほして、花のおじいちゃんを探しにホテルを後にした。

 


 町に出て、道行く人や製鉄所の人に花のおじいちゃんのことを聞いて回る。2,30分歩き回って、ようやく居場所をつきとめる。城近くまで登った所にある大きな製鉄所にいるらしい。早速そこへ行ってみる。それはマグマの川の上に建てられた二階建ての大きな工場の様な建物だった。

「あのさぁ、働いてる所にお邪魔しちゃ悪ぃんじゃねーか?」

工場を前に今更ながら気が引けるサト。

「何言ってんの!働いてるとこが見たいんじゃないの。ちっちゃい時、たまに見に行ってたんだ~、かっこよかったなぁ。」

思い出に浸る花。

「さ、早速行ってみよー!」

元気よく工場の外で機材を運んでいる人のところに歩いていく。

「あの、エンマスイの孫なんですけど、今、おじいちゃんいます?」

「!エンマさんの?君、名前は?」

「銀杏花です。」

「うーん、ごめんね君、ここ、一応王政土地だから部外者は入れないんだよ。」

「ふーん、だってツムグ、サト、マツボ、外で待ってて。」

「いや、君も…。」

「?え、私も…?」

「そう、君も。」

「…………何でよ!!何で私も入れないの!孫よ孫!血縁者よ!」

「いやー血縁者でもダメなんだ。」

「何でよ!昔はお父さんたちと見に来てたのに!」

「うーん、前はなんというか規則が甘かったからねー。」

「えーそんなー入りたい入りたい入りたい〰〰〰!」

ごねる花に困り顔の工場員さん。

「花、仕方ないよ、帰ろう。」

「ええー何でよ~入りたいよぅ〰〰!」

「ごめんね君たち、せっかく来てくれたのに。」

「そうよ!せっかく来たんだから入れてよっ!!」

「花…。」

「おいクソメガネ、ガキみてぇにわめくなよ。」

「フン、まだ子どもだからいいもーん。」

「ウゼェ!オレと2コしか変わんねーだろ!」

「ねね、じゃあさぁ、おじいちゃん、どこに住んでるか教えてよ。お父さんたちに住所聞くの忘れてて分っかんないんだよね。」

「うーん、エンマさんかぁ。確かここを降りてすぐの通り沿いに住んでるそうなっ…てアレ、教えちゃっていいのかな…。」

「ふーん、ありがと。あ、てゆーかさぁ、おじいちゃん連れてきてよ。そしたら中に入れるかもしれないし。」

「ええ!ダメダメ、あの人、仕事の邪魔するとすっごく恐いんだから!」

「ん~?私にはやさしかったよ。」

「……本当?」

「うん。」

「…分かった。じゃあ呼ぶだけ呼んでみるよ。………あ~こわいな~。」

工場員さんはボヤきながら歩いていく。

「よっろしく!」

彼の背に向けて手を振る花であった。



 二分(・・)くらいして、一人の長い金髪の老人が門から出て来た。

「あ、おじいちゃん!」

『早!』

老人は顔に深くしわを刻んだ厳めしそうな顔をしている。彼は花を見てパッと顔が明るくなる。

「おお花、久しぶりじゃのぅ~元気しとったか!?」

孫に向けて両手を広げる。花はそこへダイブして彼に抱きつく。

「わーいおじいちゃん久しぶり、元気してたよぅ!」

「そうかそうか、ワシャ花が来とると聞いてすっとんで来たんじゃぞい。」

なるほど、だからこのすさまじい速度の登場だったのか。孫が可愛くて仕方ないらしい。するとそんなおじいちゃん、しばらくして僕たちの存在に気がつく。

「ヌァ!アヤツらは何者じゃ!」

「ああ、あの人たちは私の仲間で____。」

「キ、貴様ら!花に手ぇ出しとらんじゃろなぁ!!花に指一本でも触れてみろ!このワシが成敗してくれよう!」

すさまじい剣幕の花じい。すると、おもむろにサトは花の方へと近づいていく。そして、

ポン

―――!肩に手ぇ置いたぁ――――!!

「ヌ、ヌオオオオオ、キサマ、指一本言うたじゃろうがぁー!五本触れよって!五回じゃ、五回殺してくれよう――!!!」

怒り狂う花じい。一方サトはポーカーフェイスだ。

「ちょっおじいちゃん落ち着いてよ!てゆーかサト、おじいちゃんからかわないでよっ!!」

ブンブンと長髪を振り乱す老人を羽交い絞めにして食い止める花。

「いや、悪い悪い。今のは冗談。落ち着いてくれよじいさん。」

花じぃはフーフーと息を乱しておとなしくなる。そんな彼に僕らは自己紹介。

「あの、はじめまして、花さんの友達の式彩紡です。」

「ワイマツボ言いますねん。」

「オレは紅里くれないさとだ。」

「フーフー、ワシは花の祖父、エンマスイだ。」

――銀杏って母方の苗字なんだ。

「ねぇおじいちゃん、中入っちゃダメなの?」

「ウムゥ、そうなんじゃ。二年前から制度が変わってダメになったんじゃ。一応ホラ、王様たちの機密の製作物もあるしの。」

「ええ~、おじいちゃんが作ってるとこまた見たいよー。」

「ヌォ〰〰〰、言うな!見せたいのは山々なんじゃが、もし花がここに立ち入って王様にあらぬ疑いをかけられ指名手配されそこのゴミ共と一緒に牢獄行きになるなんてワシには耐えられん。」

――…ん、今、ゴミって言われたような…。

頭をかかえる花じぃ。

「分かった、分かったよぅおじいちゃん頭を上げて。じゃあ今晩おじいちゃん家に遊びに行くね。」

「ウム分かった!本当は仕事があるが花が来るとなれば別件よ。ワシの家は6番通りの15番地じゃ。」

「6の15ね…うん、分かった。」



 そして午後七時。鉄の板を釘で張り合わせて作られた花のおじいさんの家へと着く。中ではホカホカとおじやが作られていた。(おじやといえば、おじやってオシャレに言うとリゾットだよね。ついでに上にパセリがのってなかったら単なるゲr……いや、うん、でもおいしいよね。Byツムグ)たたみ四畳ほどの狭い部屋に5人が窮屈きゅうくつに机を囲んで座る。

「なーんじゃワシはてっきり花が一人で来てくれるかと思うとったのに。」

「いいじゃない、人数は多い方が楽しいよ!」

「ウ~ムそうか~?花と二人の方が楽しいと思うが…ブツブツ…。」

「ところでじいさん、オレら紅灼祭に出てるの知ってるか?」

「ヌオ、そうなのか?」

「なーんだ知らなかったの?」

「ウム、ずっと工場にこもりっぱなしじゃったからな。しかし、でとる…ということは一回戦、勝ち上がったのか?」

「うん、そうだよ!…ギリギリ20位だったけど、へへ。」

「いやぁ、このマツボってやつが中々にクセ者だってな……。」

それから、僕たちは大会のことを花じいさんに話した。じいさんは花のところだけ執拗に聞きたがってかなりメンドクサかった。話が一段落ついて花がトイレに行ったスキにじいさんは気になっていたことを聞いてきた。

「で、お主ら、あの通り花は超絶可愛いが、誰がお嫁にもらってくれるんじゃ?」

「………は?」

「いやじゃからみんな花が好きなんじゃろ?」

「いや別に。」

「友達として…。」

「うーん。」

僕達は素直に答えた。

「何ぃ―――!ふざけるな!あんな可愛い子がそばにおるんじゃぞ!!好きにならんなんておかしい!!おかしいぞお前たちぃぃ!!!」

―――はぁ?……指一本触れるなと言ってみたり好きになれと言ったり、なんか、このじいさん言ってること滅茶苦茶だぞ…。

そして花が帰ってくる。すると、

「花!安心せい、花のことはワシが一番愛しとるぞ!じゃから安心するんじゃ!!」

「え、いや別に動揺してないけど。」

「ハッハッハッそれでこそ我が孫じゃ!」

「???」

その後もにぎやかな食卓は続いて…。


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