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色織  作者: 千坂尚美
一章 緑森宮編
21/144

開戦

おはなし21  


PM08:00

「ダウトー、ダウト、ダウト、ダウト―!!!。」

花の声が響き渡る。

「花はんまたハズレやー。」

マツボがカードを表にする。

「うわー、またかぁ!もう持ちきれないよぅ。」

花は大量の手札にさらにカードを加える。ツムグ達はそれを見ておかしげに笑う。


PM07:00

「緑森王―、緑森王―――!!。」

白マントの男が再び王の間へと駆け込んでくる。

「なんじゃ、ワシゃ今カレーを食べておるのじゃが。」

スプーン片手にのんきな老人。

「そ、それが、エリアA-3,B-2,C-5,D-1,D-4,E-4で…で…同時に巨鳥が出現!各地区にて暴れまわっています!!!。」

「ほ~………ほう!!!何と、それだけのエリアに一度にぃ!!。」

「いかがしましょうか。」

「ふーむ…敵の狙いは本陣を手薄にすることか……いや、しかし、王として守るべきは翠の国全土よ。うむ、今すぐ兵士たちをそろえて各エリアへと向かわせよ!。」

そうして緑森宮から地方へ向けて大量の王宮騎士を出動させた。

「王様、宮の守りは私達にお任せください。」

白いマスクをつけた男が恭しく王にお辞儀をする。

「ふむ、桐か。まかせたぞ。」

そしてもう一人、王室へと訪れるものが…。

カラン、コロン…竹下駄の音が広い部屋に響き渡る。足音の主は綺麗な黒髪をなびかせて歩いてくる。

「王様、もし宮に何かありましても…王の身は私が必ず守ります。」

カラン、コロン…。

竹下駄は王の前で立ち止まり恭しくお辞儀をする。

「………さやなよ……実に頼もしいの。」

さやなは軽く微笑する。


PM09:00

「いや~、三人でやるのもそろそろ飽きてきたねぇー。」

つまんなそうに言う花。

「うん、そろそろ帰るよ。ね、マツボ。」

「せやな~。」

そんな僕とマツボを引き止める花。

「ちょっと待ったー!。」

「?何。」

「三人では飽きたって言っただけ。もう一人増やそうよ。」

「ん?花の友達呼ぶの?。」

「でももうおそいで。」

「ちっちっちっ…呼ぶんじゃない、行くのよ。」

「どこへ?。」

「………フフフ、二人もあったことのある人よ。」


 ザーザーと降り注ぐ夜、ぽつぽつと灯の灯る城下町。その上空を大量の巨鳥の群れを連れて飛んでくる一羽のカラス。鳥の群れは数十いや、数百匹いる。

「皆、今こそ決戦の時、思う存分暴れるがよい!。」

『グエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア。』

大量の鳥が町へと襲いかかる。その時!

『グエ!。』『ギギャア。』『グギィアア!!。』

次々と怪鳥は悲鳴を上げて墜落していく。地上から兵士たちが矢を放っているのだ。

「皆ひるむな!進めえええええええええええええ!!。」

『グギィアアアアアアアアアアアアアアアアア!!。』

蚊羅酢の先導で一気に襲い来る怪鳥の群れ。

「総員、かかれぇ!。」

白マスクの男の指示。兵士たちは皆色とりどりのカラーを身にまとい十人十色に植物や動物を体に擬態させ、怪鳥へと戦闘を開始する。

 こうして雨の真夜中、合成鳥と緑森宮との決戦の幕は切って落とされた。


 同時刻、城下町の村人たちは数名の兵士たちを先頭に城内競技場へと非難がなされていた。そして城内でも城内に住む生徒たちは教師たちに先導されて大食堂の大広間へと非難がなされていた。突然の事態にざわめく城内外。戦闘の火花の散る城下町。そんなどんちゃん騒ぎの中、ツムグ達は全くをの騒ぎに気付いてはいなかった。なぜなら彼らは地下のへと移動していたからだ。

「ダウトダウト――!。」

カードをめくる花。

「うっしゃ、当ったりぃー、はいドモレルさんこれ手札ねー。」

「くぅーまたしてもしくじったか。何たる不覚!。」

そう言って手札に山札を加える獅子舞。そう、彼らが今いるのは緑森宮の秘密のポート、ドモレルのいる地下の物置部屋なのだ。二人と一匹と一体は外の戦火などつゆ知らずわきあいあいとトランプゲームを楽しんでいた。

「いやードモレルはん花はんより弱いなんてビックリやで。」

ドモレルは体の風呂敷で大量のカードをつまんでいる。

「よーし、私の時代来たな。次こそ勝ちをこの手にっ………。」

急に黙りこんで静止する花。

「?どないしたん。」

マツボが問う。

「誰か来る!。」

そう言って「しっ。」と人差し指を口の前で立てる花。耳を傾ける一同。確かに誰かが階段を下りてくる足音が聞こえる。

「隠れて!。」

「…どして?。」

「こんな時間に、しかもこんなシークレットな場所で遊んでんのバレたらヤバイでしょ!さっ早く隠れよ。」

「う、うん。」

幸いここは薄暗い物置。大量のゴミの中に紛れて隠れるのはたやすい作業だ。三人は物置の影に隠れ、ドモレルはただのゴミのように動かなくなる。徐々に近づいてくる足音。三人は物置からそろりとやってくる人を覗き見る。やってくる人物が物置部屋に灯されたわずかな蝋燭(ろうそく)の光で照らされる。白いローブでフードを深くかぶっていて顔は分からない。

「あのローブ、ココの騎士の誰かかしら。」

ひそひそ声で言う花。確かにこんな場所を知っているのだからそれなりの地位の持ち主と推測される。

 ローブはガラクタの山の中から、一体の獅子舞を発見しその前で立ち止まる。そしてぶつぶつと何かを言っているようだ。ローブは何かを言い終わる。せつな、ど派手な色彩を放ってドモレルが光り始める。その人物はこの場所のみならずポートのことも知っているのだ。そして黄、緑、ピンクの光と共にローブの人物は獅子舞の口の中へと吸い込まれて消えてしまった。

「…どこ行ったんだろう。」

花、ツムグ、マツボは物陰から出てきてドモレルに問うてみる。しかし

「フン、我は人の案内を言わぬ主義でな。」

「え~ケチ~。」

文句をつける花だった。


PM09:30 緑森宮最上階、王の間。

だだっ広い部屋の空間のある一点が、黄、緑、ピンクと光を放つ。そして色彩の中から一人の人物が突如として王の間へと現れた。その人物はフードを脱ごうと手をかける。すると、

カラン、コロン。

下駄の音。

彼はしばらく止まった後、フードを降ろし長い綺麗な銀髪を露わにした。

カラン、コロン。

銀髪の男は気配でその部屋に誰もいないことを悟る。しかし、下駄の音はどんどん近くなる。

カラン、コロン。

長い黒髪をなびかせて玉座の遠く離れた横にある扉から姿を現す。その男は彼女を冷たく睨みつけている。

「………。」

女は玉座の前まで歩き、口を開く。

「…やはり、来ましたか。」

二人の目と目が合う。男は痩せこけた蒼白顔に長い銀髪、鋭く長い耳をしている。

「お久しぶりです、ドリアさん。」

さやなは恭しくお辞儀をし、にこりと微笑む。

「どうか、ここで死んでください。」


 一方そのころ、花、ツムグ、マツボはドモレルと共に再びトランプを始めていた。すると…。

「あのさぁ。」

「なーに。」

「どないしたん?。」

「何か外、うるさくない?。」

「えー?。」

「ん?。」

…………………………ズゥン………ウンッ……ズズウンッ!ズズゥン!!!

突然地下室が揺れる。

「なんや、地震か!。」

「いや、これは……!。」

ツムグはタッと走って階段を昇り、地上への扉(表面に芝の生えたマンホールみたいになっている。)を押し上げる。続いてマツボ、花がニョキニョキと顔を出す。外ではバボーン、ボカーンと戦闘の火花が見えている。

「な…ななな……なんでぇ!!。」

「なんではいいけど早く外へ出て!。」

「あ…うん。」

マンホールをこじ開け外へと出る三人。木の陰に隠れながら町の方へ走っていく。戦っているのは大きな怪鳥と白いマントをつけた緑森宮の兵士達。

「合成鳥?。」

「なんで…これ、何が起こっているの?。」

いきなりの戦争に声を震わせる花。

「ここは…逃げよう!。」

「ツムグはん。」

「花、僕らがいても足手まといだ。早く城内に戻って___。」

「ポオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!。」

ズゥン!!

「な……!?。」

突如として体長2m越えの何かがツムグ達の前に着陸する。

「ポォォォォォォォォォォォォ!。」

ズン!ズガアアアア!!

怪物は何か丸い武器を振り回し周りの木々を破壊する。花たちは驚きながらも必死にそれをかわす。いきなりでパニクッているうえに暗くて姿が分かりづらい…だが紡ぐにはこの怪物の正体が分かる。

「この鳴き声、リッスンだ!。」

「ななな、なんやて!!。」

「ポォオオオオオオオオオオ!!。」

大地を武器でえぐりとる。

ズガアアァァ!

必死に避ける三人。素早く木々の後ろに隠れこむ。

「ツムグはん、リッスンはもっと小っさかったような…。」

「何々、何なの!。」

がしっ。

ツムグは動揺する花の肩を掴む。

「?。」

「花、君はマツボとこのまま逃げて。」

「!。ツムグは?。」

彼は横目で暴れ狂う大リスを睨む。

「あいつを倒さなきゃならなくなった。」



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