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色織  作者: 千坂尚美
一章 緑森宮編
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石刁

おはなし2  


「ひぃぃぃぃ!お助けぇー。」

太った中年のおばちゃんがマヨセンに走ってくる。

「どうしました?。」

「これ見てよ。」

「?。」

「今晩7時にアスパラ村のみかんを全て頂く。カブトリより。」

………?。

「いやいやいや待ってや、いろいろツッコみどころ多いでこれ!なんでやねん。何でアスパラ村なのにアスパラちごてみかんやねん。そんでなんなんカブトリって、カブトなん?鳥なん?。」

「アスパラっていつ旬だっけ。」

「春だよ。」

「へぇ。」

「紡はん?。」

「よし分かった。アスパラ村へ向かおう。」


 アスパラ村とはアスパラが良くれることで有名な村だ。ちなみにミカンも良く採れる。アスパラ村の住人はアスパラではない。普通の人間だ。とくに細長かったりもしない。

 紡とマツボはアスパラ村へ到着する。…え?何でマツボがいるかって。時間は遡る。

 

「やったやったー、カッパを追い払ったぞー!。」

ダルマ村はみんなでてきて大盛況!。

「あんさん中々やりはるんやなぁ。」

「ほんまや、ありがとな紡。」

「いやいや、それほどでも。」

照れる紡はお礼を言う。

「ありがとう四つ葉さん、クマさん。」

『!。』

「?。」

今の!は一体?…?

「お……お……のれ……今……なんてった……?。」

ガチガチ歯を鳴らしながら眼鏡の奥の目をギョロ目にして四つ葉が問う。

「?、ありがとうって…。」

「いや…その後や、後が肝心なんや!。」

「四つ葉さん、クマさ__。」

「ワッシはクマじゃねぇぇええダルマダァァァアアアアアア!!!。」

!。見る見るうちにマツボの体は巨大化し超いかつい巨大グマに変わってしまう。

「お…お…お…?。」

「ワッシはクマじゃねぇ、いいかその証拠に……。」

大グマは自身の腹をポンと叩く。

「この毛並!尻尾!爪、そして三つの鼻アアア!どっこをどーとってもダルマだろぉおお!。」

尻を突き出し爪をむき出しにし、最後に鼻を指さす。自分でどんどん墓穴を掘る大グマに僕らは何も言えない___鼻三つは知らん。そんな村長に村人達は…、

「そ、村長はクマだったんだ…。」

「クマだったんだ。」

「クマだったんだ。」

『クマだったんだ。』

『クマは出てけえ!!!。』

「ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!。」


 そういうことで村をおわれたマツボは、嫌がる紡を制して一緒にお供をすることになった。アスパラ村へ到着すると村の前にカブトリが来ていた。

「ハッハッハー、誰が時間ピッタリくるものかー。」

「随分早いな。」

みかんすらまだろくに見ていない。カブトリは鳥に角が生えてるだけの体調1.5m位のやつだ。結構でかい。

「ささ、紡はん、あのキラキラシャキーンってのやってや。」

「……あのさぁ、何でみかんが欲しいの?。」

「好きだから。」

「世界征服できたりするの?。」

「ハァ(怒)?。」

「ごめん。」

「セカイハカイなら出来る。」

『マジで!。』

そいつは野放しにはしておけないっ…て、あれ?マツボ、何やってんの?

隣にいるマツボはどこの木から採ったのか、みかんを一つ持っていてホイっと言っておもむろにカブトリに向けてみかんをパスしていた。

「…………。」

ああ、世界が…。

みかんを得たカブトリは水を得た魚ならぬみかんを得たカブトリ!大はしゃぎで喜びまくった後みかんを一口で丸呑みする。

ゴックン。

「クハァー、ウメー!。」

ウメーと同時にカブトリの体が輝き出す。僕らはただそれを眺めていて…。光の中から現れたカブトリは“世界”と大きな字でプリントされたTシャツをはおっていた。(手が羽なのでシャツの袖がパンパンになっている。)しかし、その程度で僕らは驚かない。それに、それ以外に大した変化は見られない…いや、何か言っている。

「やべぇ、やべぇわ…まじで、あ…は…やべぇ、かゅぃ~、…は…は…やべぇわ…。」

「紡はん。」

「…ああ、これは…。」

「やべぇ!!歯痒いいいいいいいいいいいいいいいいいい!!。」

「やはりそう来たか。」

「鳥なのに歯あるんやな!。」

「歯痒いいいい痒いい痒いいノォォォォ!歯痒いいいいいいいい!!。」

カブトリは羽先でくちばし付近を擦っているが、あんなので掻けているのだろうか?そもそも歯が痒いなんて聞いたこともない。

「紡はん、えらい狂気やであれは。」

「ああ、逆に弱くなっている。」

「トリだって歯ぁあるんやぞー!クチバシの内っかわにぃちっこいのおおおおかっ…かいいいい。」

「お前こうなるのを知ってて食べたのか?。」

「あったりめぇよぉおおおおおおお!!。」

バカなのか?

隣でマツボが僕を小突く。

「なぁ、可哀想やしさっさと助けてやればどうなん?。」

「いや、面白いからこのまま話を続けよう。」

「あんさん意外とSなんやな。」

「おいカブトリ、その力(笑)を使って何をたくらんでいた。白状しないと助けてやらない。」

「へぇ?へぇ?へぇぇぇ!お助けぇぇえ、…ってかんなもん、最初から決まってらあああ!

我々の目的はただ一つ、緑森宮をぶっ潰すこと!。」

『!、何[やて]!。』

僕とマツボの声がハモる。緑森宮をぶっ潰す!?冗談にも程がある。まして歯を掻きながらなんて、バカにするにもほどがある。それはマツボにも分か…というか緑の国の住人なら皆分かるはずだ。しかしさっきこいつが言った我々とは?

「おい、我々と言ったな。それは何のことを指す?。」

「へええ?何て?痒くて痒くて…たまらんわぁぁぁああ。」

「……ちっ。」

紡は軽く舌打ちし左肩付近から白色のモヤを出しはじめ、青味の色彩を生み出していく。隣でおおう!とマツボが感嘆の声。

「それ言ったら助けてやるからさっさと吐け。」

彼の左腕は白銀色の毛並みに覆われている。

「へぇ、へぇぇ…我々ってのは…ごうせいチョグエ!。」

ひどい発音と共にカブトリの答えが途切れる。美しい鮮血が彼の首筋から吹き出し目は白目をむいていて、ゆっくりとバランスを崩した後、バッタリとその場に倒れこんだ。今だ血液を出し続ける傷口は、斬撃か何かで一切りされたような傷痕で…。とっさに紡は斬撃が飛んで来たであろう方向を振り向く。しかしそこには誰も、何もいなかった。一枚の黒い羽が散っているのを除いて。

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