お見舞いに行きますよ
前回から違う話を入れ、修正前のものにたどりつくまでだいぶ話数があります。しかし話は作者の思いつきなので右往左往ふらふらする可能性が……いや、怖いですね。ちゃんとたどり着けるか
人が逆らえないとき。それはどんな頼み方か?
弱みを握られた脅迫。甘い言葉。そして……
「リズちゃん♪」
にこにこの笑顔と無言の圧力。俺は知っている。この状態になったら逆らってはいけない。綺麗に夕飯から何品か消える。成長中(と心の中で)信じてる俺は引きこもっていてもお腹はすく。そんな俺に軽い断食はきつい。俺は訓練された軍人のごとく勢いよく頷き心の中でイエスマム!と叫んだ。
ことの発端は昨日。俺はラピスとユンと一緒に公園で遊んだ。初めてだるまさんが転んだをやったけどさ。あれは体力勝負だね。片足で動かないとか足つるよね。……俺だけ?
まっとにもかくにも初めて友達と遊び精神年齢大人でも楽しかった。そして今日の朝。朝食を食べ終わりさあ、本を読もうと部屋に行こうとすると果物とサーシャの家の地図と思しき紙を持った母君がおり……と言うことだ。
さて、地図を見るとサーシャの家はそこまで遠くない。二〇分くらい歩けば着くだろ。
はー。熱に体調不良か。俺には無縁だったしな。四、五年に一回くらい熱が出るくらいだからな。取りあえずついたら果物を剥いてやるか?いや、摺り下ろした方がいいか?人の看病なんてしたこと無いから知らん!本の中ではそう言うのは見てるがな。目隠しして体を拭いてあげるとか……ある意味そっちの方が心臓に悪いような。まあ、そんなことは起こらんだろう。
フラグ?違うよ。
二〇分かけて到着。道中は特に何もないので割愛。サーシャの家族は実は母親と本人しか見たことが無く、と言うよりも家に初めて来た。緊張?するよ?手に汗握るくらいするよ?
俺は家の玄関の前に立ち、前の世界のインターフォンの役割をする陣具に手を触れた。すると陣が光り、中でポーンという音がした。扉の奥から誰かの気配を感じ少し下がると母親のルーニーが出てきた。
「すいません。リズティー様。わざわざありがとうございます」
仕事中でもないのにしっかりと頭を下げるルーニーさん。相変わらずの完璧メイドぶりである。どうやら家の母さんから見舞いに行くと言うことは伝わっているようで、早々と中に入れた。するとルーニーは歩きながら
「サーシャは普段は風邪なんか一つ引きませんが季節の変わり目だけ体調を崩しやすくなるんです。今は良くなって念のための休息です。申し訳ありません」
そう言って頭を下げる。
「気にしないで下さい。普段外に出ない俺の話し相手になってるだけで十分仕事を果たしてます。何だかんだ色々世話になってるんで臨時休暇くらいあげますよ」
俺がギリギリで生活のリズムを崩さないでいるのは他でもないサーシャのおかげ。サーシャのおかげで集中していても強引なたたき起こしで気づくし、食習慣もまともで外にも散歩程度は出るのだ。下手をすれば困った引きこもりさんになっていただろう。
「ありがとうございます。ここがサーシャの部屋です」
話している内ににいつの間にか着いていたようだ。木製のドアにサーシャという札が掛かっている。ルーニーはさらっと姿を消し俺だけになっていた。俺はコンコンとドアをノックし返事を待つと
「ん?ママ?」
まだ本調子出はないのか軽くだるそうな声だ。
し、か、し!ママってなんぞや!俺より年上なのにまだそんな風に読んでいるのか?流石にママは卒業した方が言いと思うぞ?俺はカチャッとドアを開け開口一番
「コンニチハー。ママですよー」
ルーニーの声まねをして棒読みで入る。俺とサーシャとの間に無言の時間が出来る。俺はニマニマしてサーシャはえ?という顔をしている。きっかり十秒固まった後
「な、なんでリズティー様がいるんですか!普段は本にべったりでくっついた用に離れないのに!」
普段はポニーテールの髪も今日はほどいており、普段よりなぜか大人っぽく見える。そこだけを見ると自分より年上と言うことが分かる。あれだよね髪下ろした方が可愛いのに下ろさないのはもったいないよね。ん?ギャップに萌える?………確かにな
「どうした?待望のママなのに嬉しくないのか?」
話を逸らさせず、急所をいきなり付く
「わー!聞かれてた!やっぱり聞かれてた!ちょっとやめて下さい!」
寝ていた体を起こし手をバタバタとし俺の目の前で振るのはサーシャでもなかなか可愛く見え………もっとやってみたくなるのだ
「いやー。サーシャがまさかママと読んでいるとは。俺はお母さんあたりかと思ったんだが予想の斜め上を言ったな」
「あー!ダメですもうやめて下さい!黒歴史。うう。もうやだー。一生からかわれる……」
呪詛のごとくぶつぶつ呟いている。しかも左右に揺れてる。髪が結ばれてないからか顔の前にも髪がきて某幽霊見たくなっている。
さて、頃合いか
「おい、サーシャ。さっきのは今だけ心にしまって置くから落ち着け」
頭を手刀で軽く叩き、正気に戻す
「え?は、はい」
「取りあえず果物を持ってきたし食べるか?」
「い、いただきます」
「斬るもの?と言うかナイフはどこにある?」
「え?それぐらい私がやりますよ!」
サーシャがベッドから起き上がろうとするが
「ほいっと」
でこを軽くポンと押してそのままベットに倒す
「まったく。まだ本調子じゃないのに無理をするな。ルーニーさんから聞いたが季節の変わり目は体調を崩しやすいんだろ?今はゆっくりしてろ」
「むう。分かりました」
素直になったサーシャからナイフの場所を聞いて取る。取りあえず前世でいうリンゴをチョイス。見舞いといったらこれだよね。刃を当てすらすらーと思ったがやはり何度か皮が切れてしまう。皮むきも意外と難しいもんだ。
「リズティー様。初めての割に意外に皮むき上手いですね」
意外そうに俺の手元見て言う。
「そうか?サーシャとか、母さんの見よう見まねだぞ?」
「逆によくそれでそこまで出来ますね」
俺はその言葉に苦笑いだ。前世に何度かやったことがあるがそんなことは言えまい。皮を剥き終わり最後に種を取って終了。少し見栄えが悪いがこの年齢で言えば上出来だろう
「ほら。あーんしてやろうか?」
くつくつと笑いながら手に取ってサーシャにやろうとする
「リズティー様?私を年下扱いしないでください。年齢的に私はリズティー様のおねーさんですよ?」
そんなことを言えば俺はおじーさんと言われても言い年齢だろう。前世今世プラスしてもう五十近いからな。
頬を軽く膨らませ、俺が手に取ったリンゴもどきを取り口に運ぶ。美味しいのか軽く口が緩んだがすぐもとに戻る。
「あのー。形だけであれ俺はご主人何だけど……」
「形ならいいじゃないですか。公の場ならちゃんとしますから」
にこにことそう返す。俺は良いけどそれでいいのか?今のルーニーさんが聞いたら多分ハリセンだぞ?
「なんとも雑なおねーちゃんだな」
俺がボソッとそう言うとサーシャは目を輝かせ
「もう一回!もう一回お願いします!」
キスをせんばかりに顔を近づける。近い、近い。でも女の子って小さくてもいい匂いするなってヤバいヤバい。流石に変態だ。
「おっ。食べ終わったな。もう一個いるか?妹よ」
「今度は妹扱いしないでください!」
話をそらそうとしたが健闘虚しくおねーちゃんコールはルーニーさんが来るまで続いた
「今日はサーシャの為にありがとうございました」
「母さんに笑顔で頼まれたら断れないので……」
「ふふ。そう言うことにしておきましょうか」
にこにこ顔のルーニーさんに見送られ俺はサーシャの家を後にした