こっくりさん。7
金曜日。
松田先生は研究日でお休みだった。
それを知っていた美穂は、HRが始まるぎりぎりに堂々とやってきて胸を張って教室へ入ってきた。
だが松田先生は一枚上手だった。
そして例によって例のごとく、松田先生からよろしく頼むように仰せつかっていた副担と美穂との仁義なき戦いが始まった。
毎朝毎朝よくやるなあ。
柔和だけと押しの弱くない副担の上塚先生は、もしかしたら美穂にとっては松田先生より強敵かも。
私は後ろを振り返って夕夏と笑った。
夕夏は今日、いつも通り学校に来た。
今日は何の怪我もしなかったらしい。
松葉杖はついてるけど。
本当に良かった。
昨日の霊媒師さんに除霊?してもらったのかな。
お昼休みに、私はサンドイッチを頬張っている夕夏に訊いてみた。
「昨日どうだった?」
夕夏は苦笑いを浮かべた。
「どうっていうか・・・。派手な衣装着たおばさんが、あたしの部屋に塩ばら撒いて、なんか言ってた。」
なんかって。
「塩?」
「うん。お清めらしいんだけど、その後白い・・・神社とかて使うようなぎざぎざした紙のついた棒?を振り回しながら、珠持ってなんかお経みたいなの唱えてたんだけどね。」
・・・それ、なんか色々混ざっているような・・・。
私がそう言うと、夕夏もまた笑った。
「何か憑いてたって事?」
「うん。その霊媒師さんが言うには、髪の長い女が憑いています、って。」
テンプレな霊だな。
そもそも、どこでどうして夕夏にとり憑いたのかもわからない。
それでも、夕夏が今日こうやって学校に来れたことが私は何より嬉しかった。
「今日は怪我なかったんだよね?」
「うん!怪しさ満点だったけど、ちゃんとお祓いされたみたい。」
夕夏は笑っていた。
「でも今日これからまた検査だから、お昼食べたら早退するんだ。」
「そうなの?」
「うん。お母さんが迎えに来てるから。」
そう言って夕夏は、三分の二以上残ったサンドイッチを鞄の奥底に入れて隠した。
たぶん、お母さんの事を思ってなのだろう。
「・・・ほんとに、よかった。」
夕夏は笑っていた。
教室を出るまで笑っていた。
純血した目の下に隈を作った顔で。
きっと私が上手く笑えないのも、気のせいじゃないとおもった。