ななわめ
最寄りの駅からバスで数十分のところにあるショッピングモールにきました。なぜカレーの材料を買うだけなのに遠くまで来ているのかと言うと。
「西東くん!みてみて、この猫すごい可愛いよ!」
「わっ!ふわふわだね。あっ、向こうの子もかわいいよ」
「ホント!えへへへ可愛いなあ」
このショッピングモールに隣接してあるの広場では頻繁にイベントが開催される。
今回のイベントは『触ってめでよう動物たち』だ。
この知らせを聞き、動物好きの西東くんと私はすぐさま行き先を近くのスーパーから変えたのだ。
「三宅さん三宅さん!向こうではうさぎがいるんだって」
「え!ほんと!」
そう言って西東くんが指示した方を見てみると、白や茶のもふもふが沢山!
あのもふもふまで直線で約30m。待ってて。今行くわ!
駆け出したところで前にいた人の足を踏んでしまった。しかも今日履いているのは低いけれど結構細いヒール。これで踏まれたらすごく痛いだろう。
「いっ!」
「うわああああ!すみません!ほんとうにすみません!」
「いや、そんなに謝らなくても………って佐奈江か?」
ん?この声聞き覚えがすんごいあるんだけど。一人は幼馴染でもう一人がその父親だ。そして動物好きでここにきている可能性があるのは・・・。
「四郎!どうしてここにいるのよ」
「は?なんでおまえがここに」
「それはこっちの台詞よ!」
「三宅さん!」
何か揉め事に巻き込まれたと思ったのか西東くんが走ってきた。そんなに勘違いされそうだったかな私。
「どうしたの…って木村くん!」
「ああ、西東と来てたのか」
史郎がニヤニヤしながらこっちを見る。あのにやけ面はがしてやりたいわ。
「木村くん、そういえばどうしてここにいるの?」
四郎の体がビクッと揺れ、が表情凍った。
「ああ、色々あってな。まあそんな事より、お前ら何か買いにきたんだろ。俺も付き合ってやるよ」
けど次の瞬間にはそんな姿を微塵も見せず、私たちを引っ張った。この場に名残惜しそうな視線を残して。
その姿を見た私はほくそ笑んだ。ふふっいい事思いついた。
「えーこの子達に触らなくていいの四郎?」
「えっ西東くんも小動物好きなの?」
少し大きめの声で言い、近くにいたうさぎを持ち上げる。うお!思っていた通りもふもふだ。
四郎は浮かれたようにうさぎに手を延ばしてきた、が夢から冷めたように手を引っ込める。素直じゃないんだから。
「お、おれはうさぎなんか好きでもなんでもねぇ‼‼」
その様子を見た西東くんは何かに気づいたようににやりとした。私の考えが読めたようだ。
西東くんも足元に居たうさぎを抱きかかえた。四郎の真ん前にきてうさぎをいじくりまわした。西東くんと一緒に。
そして一通り撫で回したあと。
「そろそろ行こうか木村くん」
「そうね、行きましょう四郎」
この時の情けない四郎の顔は忘れる事ができないだろう。あの名残惜しそうな顔を。
「四郎くんっておもしろいね」
「当たり前、私の幼馴染だからね」
「佐奈江、どういう事だ」
場所を移してここは駅の近くのファミレス。
買い物をしたあと四郎と西東くんを連れてここに来た。西東くんは
西東くんは今、四郎に頼まれ席を外している。
「何のこと?」
さっききたジュースにストローをさしながら目を逸らした。わかってるんだけどね。
「‘約束’はどうしたんだ。言わないって、あの時言ったじゃないか。
しかもお前ら、おれで遊んでただろ」
ホント四郎は好きな物がかかわるときだけは熱くなるよね。今はクールダウンしてるし。いつもは母親系強面男子って感じなのに。
けど、聞き捨てならないわね。
「別に話してないわよ。ちょっとほのめかしただけで。
あと、忘れてない?先に‘約束’を破ったのは四郎よ」
一口ジュースを飲んでちょっと一息。四郎は‘約束’で言葉で思い出したようで私に何も言ってこない。
それぐらい私たちにとっては‘約束’は大切な物だったんだ。
「…すまん」
無理やり絞り出したような声で絞り出した
言う。四郎にとってはもうあの時の記憶は薄れてきてるんだろうか。
「やっぱり忘れてたのね。……いいわ。四郎には世話になってるしあなたが‘約束’を無視したおかげで西東くんと仲良くできてるような物だしねー。
ま、これからもあなたが可愛い物が大好きだなんて言わないから」
「西東は気づいてたみたいだけどな。多分今話してる内容もあいつには読めてたりして」
「四郎もそう思う?たまに私の気持ちわかるんじゃないかって思う時があるんだよね、西東くんは」
変なところで鋭いんだよね。
「話し終わったし西東呼ぼうか」
「そうだね。あ!西東くん」
西東くんは私たちが話が終わったのがわかったのかもう近くにきていたようだ。やっぱり西東くんは空気を読む能力もってたりして。
「話し終わったの?」
「うん。ごめんね。待たせちゃって」
「いいよ。内緒のはなしだったんでしょ。それより何か甘い物食べない?俺はチョコレートにしようかな」
「んー。私はこの期間限定のタルトにするね!」
「へぇーそれも美味しそうだね、僕の一口あげるからそれも頂戴?」
「いいよー。西東くんはどれにする?」
「俺はチョコレートにしようかな…すみませーん店員さん」
デザートを頼む様子を見ていた四郎はこの光景に呆然としていた。
ハッ!
今気づいたけど今まで西東くんとすごい恥ずかしいことしてなかったかな⁉いや、していた。
「おまえらって付き合ってんのか?」
「え!そんなことないよ!」
私たちってそんな風に見えてるんだ!なんかだか照れるな。
けど、私はこんなのなのに西東くんは全然慌ててない。私に恋愛感情なんてこれっぽっちもいだかれてないんだ…虚しいな…。
この時に食べたケーキはあまり味がわからなかった。
それからの帰り道、四郎は寄るところがあるらしいので駅で別れた。なので今は西東くんと二人きりだ。
「今日は木村くんと会ったし楽しかったね」
「うん」
今日は楽しかった。四郎にあった事は予想外だったけどそのおかげで西東くんと無言の時を過ごす事はなかった。けど四郎が来た事で私たちの関係がわからなくなってきた。
四郎のせいでもないし、今日の事がなくてもいつか考えなきゃいけない時が来ただろう。
黙って道を歩く。
「私たちの関係って友達なのかな?」
思わず声に出ていた。
しかし後悔はない。
西東くんにとっての私って何?
友達?それとも他の何かなんだろうか?
「きっと…」
西東くんは言う。
俺たちはもっと深い絆で結ばれてるんだよ。
多分おそらく次は過去編です