ろくわめ
今日もいい天気です。昨日は安達さんとのことがあった後、西東くんが来てくれました。私の事を探してたんだそうだけど、姿が見えなくて焦ってたそうだ。すいません…。西東くんには迷惑かけてばかりだな。
「三宅さん!前っ前見て!」
「へっ?」
そうして見た前方は光が反射して真っ白に見えた。
ゴオォォン
「痛っ!」
痛みで正常な思考が出来ていないが私が自動ドアに顔面から衝突した事は理解した。
羞恥と痛みで何もできずにいると額にぬくもりを感じた。
気持ちいい…。顔を和ませていると
「大丈夫?」
・・・・・っ!!!
「ふぁっだだだだいじょうぶ!」
びっくりした!温かいなーとか思いながら微睡んでたら、さっ西東の手がっ!
うわー恥ずかしい!
「そう?我慢とかしないでね」
「めちゃくちゃ頑丈だから全然平気!」
隣にいるのは西東くんだ。黒のTシャツとジーンズというカジュアルな格好だけど、西東くんが来たらすごくさまになる!いつも見ている制服もかっこいいけど私服も素敵だ。やっぱり顔のいい人は何着ても似合うものなんだな。
まあそんな事はおいといてだ、実は私、西東くんと二人っきりで外を歩いてます。
なんと今、私は…
西東くんとデート中なのだ!
事の発端は昨日、私の家での西東くんのこの一言だった。
「カレーの材料って何がいるのかな?」
「うーんとね、カレーの種類によって考えないとなんとも言えないかな。何でそんなこと聞くの?」
「それがね、この頃父さんの仕事が決まって母さんにも余裕が出来たし、皆でご飯食べようかなと思って」
キラキラ光ってる!
すごくいい笑顔です西東くん!やっぱり笑った顔が一番いいな。
「三宅さん?」
ハッ!顔にやけてたよね。だめだだめだ。でもよかった。西東くん嬉しそうで。
あれ?
でもそれじゃあ料理教室の事が無くなって西東くんともほとんど会えなくなるんじゃない?
「うん、それはよかった」
この時の私は強がっていったから表情が歪んでいたと思う。けどそんなことは気付かずにしゃべりつづける。
「これで私も料理教えることは無くなって手間もかからなくなるよ。西東くんと話すことも無くなるのかなぁ…」
本心じゃない言葉が口から出るもう止めたいのに止められない。
「俺はやめないよ。三宅さんが嫌でもやめれない」
なんで。どうして。
「そうしないと三宅さん、俺とかかわりをもたないよね?」
だって私は地味の枠から出たくないんだもん。西東くんのことは好きだ、けどそれとこれとは話が別。
「三宅さんと話すの好きなんだ。一緒にいるとなんでもないのに楽しい。」
西東くんそんなこと思ってくれたんだ。けど私は地味で西東くんはかっこ良くて。
美形は美形と結ばれる、それが定石なのに。
「こんなことは君に出会うまで知らなかった、君の傍は心地よくて手放せない」
あれ?
ってこれって告白なんじゃない⁉
もう地味だとかなんとか言ってらんない!返事しなきゃ私も西東くんが好きだって。
迷いはまだある。
けど、けどだ!
安達さんが私をライバルと認めてくれたのに、四郎が応援してくれてるのに、西東くんが誠実に心の内を明かしてくれたるのに、私は何なんだ。
ずっと引きこもってばっかりで、昔の事に引きずられてばっかりで。
私は自分の扉を開きたい。
容姿だとか関係なく西東くんに…
「私も西東くんと同じ気持ちです」
それを言うと西東くんはとても嬉しそうな顔になり
「ありがとう!やっぱり三宅さんみたいに心をゆるせる友人を失えないよ」
友人?
ゆうじん?
ユウジン?
「私も西東くんのこといい友達だと思ってるよ」
今までの葛藤は何だったんだ。
なっ泣きそう。でもウザがられていないだけマシなほうかも。
まだ恋愛に発展する可能性はあるはずだ。そうだそうなんだ。
「で、話を戻すとカレーの材料買うのに付き合って欲しいんだ。
でね、君にはいつもお世話になっているから早めに出かけて昼食奢るよ」
ああ、西東くん。これは飴にムチなの?
そんなので機嫌がなおると思ったら大間違いなんだから!
「え!いいの?今から楽しみだよ」
私のバカー!デート(誘った本人はそう捉えていない)に誘われたからってすぐに態度を変えちゃうなんて私ったら浅ましい!
「じゃあ今週の日曜日空いてる?」
西東くんに誘われるなら他の用事断ってでも行きます!地の果てでも楽しく過ごせる自身があります!
まあ予定は何も入ってないけどね。
「空いてるよ。場所は任せた」
「うん。じゃ10時くらいに迎えに行くね」
うわー西東くんとデートの約束が出来たよ。もう今死んでもいい、いや今度の日曜日までは生き延びないと!ふふふっ楽しみ。
あ、また意識が飛んでいた。せっかく西東くんとデートなのに。幻覚かな?西東くんの顔が見える。麗しい。顔は心までも表しているのかな。
「三宅さんよだれよだれ」
「うほおっ!」
おっとやばいやばい。このままだと私、まるで変態じゃない。
「それじゃあ行こうか」
そうだ。私、ドアにぶつけて家の近くのコンビニからまだ動けていない。
「どんとこい!」
そう言うと西東くんは呆れた顔をした。
「もっと可愛らしい返し方はあるんじゃない?…ま、それも三宅さんかな」
私たちのデート(主観)はまだ始まったばかり!