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いちごの砂糖漬け   作者: 霧霧
5/12

よんわめ

今、西東くんと私は自宅のキッチンにいる。西東くんに料理を教える為だ。


「さて、それでは第一回三宅流料理教室を開催したいと思います」

「おー」


でもこれ、二人でしても虚しいだけだな。

…まあいいや。

それより今は料理の献立のことだ。卵焼きとお米炊いて…あとなに作ろうかな?西東くんに聞いてみるか。


「西東くんなにか好きな食べ物とかある?」

「角砂糖かな」


・・・ん?


「・・・じゃあ料理では?」

「チョコレートフォンデュ。三宅さんは甘いもの嫌い?」

「いや、嫌いじゃないけど」


好き嫌いじゃなくて根本的に間違ってる気がする。そんなものすごい笑顔で言われてもどんな反応をすればいいか悩むよ。

けどどうやら西東くんはとても甘いものが好きらしい。

・・・デザート、なにか作ろうっと。


「じゃあ、嫌いなものとかある?」

「それはないよ。でもわけわかんない国の食べ物は苦手かな」

「ははっ、なにそれ」


んーそれだったら、初心者でも簡単なやつで。あと甘くて、あっ西東くん家庭の味が好きだっていってたな…。なんか新婚夫婦みたいってうわあああああ!私ってばなにを考えてるんだ!告白してねぇんだぞ!

はあ、落ち着け私。そうだ。西東くんには卵焼きだけ作ってもらって他のは私が作ろう。


「それじゃあ西東くんには卵焼きだけ作ってもらいます」

「難しそうなんだけど俺に作れるかな?」

「大丈夫大丈夫!私も手伝うから」

「そうだよね!……うん、ごめん」

「なんか言った?」

「ん、なんでもないよ」


どうかしたのかな?まあ大丈夫だろう。

よし!


「献立が決まりました。メニューは米と肉じゃがと卵焼き。そして食後のデザートはパウンドケーキです。西東くんには卵焼きを作ってもらいたいです。作り方は随時教えます」

「了解です。他は三宅さんが作るの?」

「料理初めての人に全部作れとか酷なことは言えないからね」

「わかった。精一杯のことはするよ」








どうしてこうなった。


「これはなにかな?」

「・・・卵焼きです」

「私、引っくり返すところまでやったよね。あとお皿に移すだけだったよね」

「・・・はい」


テーブルの上にはホカホカの肉じゃがと白く輝いたお米、いい匂いのパウンドケーキ。

あと…黒い奇妙な物体がのっていた。


「ごめん。俺、昔料理の練習したことがあるんだけどちょっと手を加えるだけで料理を灰にしちゃうみたいなんだ。だから三宅さんに料理のことたのんだんだけど…なんでこうなっちゃうんだろ…」


うん、その台詞私が言いたいくらいだよ。


「ま、まぁ今日は初日だし頑張ったほうじゃないかな?」

「いや、ほんとごめん。食材無駄にした」


西東くんが本当に悲しそうな顔をして言う。


「やっぱり俺には無理なのかな…」

「今からそんな弱気になってどうすんのよ。大丈夫、明日があるし明後日もあるんだ。毎回弱気になってたらつかれるよ」


あ、私今いいこと言ったんじゃない?

けどちょっと寒かったような…


「ありがとう。でも三宅さん、その台詞くさい」

「うわあああああああわかってる!今ちょっと後悔してるところなんだ!そうだ、ご飯早く食べないと冷めちゃうよ。いただきます!」


「はははっ。いただきます」


恥ずかしい!私は羞恥心を紛らわす為に食べることに逃げた。


「あ、それ食べちゃだめだ!」

「へ?」


ところ構わず食べに食べた。そう、あの黒い物体までも腹の中へ入れてしまったのだ。


「うっ!」

「三宅さん!しっかり!」


西東くんが呼んでる。答えないといけないのに、意識が遠のく…。








くらい。あれ?こんなこと前にもあったような。


「三宅さん!大丈夫?」


え。西東くん?ああ、少し意識が飛んでいたみたいだ。


「大丈夫。…西東くんの料理すごいね」


「ごめん。次はちゃんと食べられる料理を作れるようにする。あ!」


「どうしたの?」


西東くんはメールがきたみたいで携帯を操作しながら言う。


「木村くんがここに来るらしいよ。ご飯作ってだって」


あれ?西東くんって四郎のメールアドレスしってたってけ?

すると私の考えてることが顔に出てのか西東くんは答えてくれた。


「この前三宅さんが倒れたとき教えてもらったんだ。三宅さん、あまり身体強くないって聞いたから何かあったときの為にって」


「そんなことまで四郎と話してたんだ」

「うん、勝手に聞いちゃってごめんね」

「謝ってもらわなくてもいいよ。どうせ四郎からはなしたんでしょ」

「まあ、そうだけどね」


それからたわいのない話を続けているうちに四郎が来たらしい。


「おー西東。こいつの面倒見ててくれてありがとうな」


「毎度のことだけどノックくらいしなさいよね」


四郎は呑気に私の部屋に入って来た。いつものことだけど。


「佐奈江、調子悪そうだな?何か食ったか?」


「あ、それは俺が変なもの食べさせちゃったんだ」


西東くんが言うと四郎は納得していない表情で


「お前そんな繊細な腹してたっけ?」


と不躾なことを聞いてくるから西東くんの料理を口の中に突っ込んで見た。


やはりあの料理?は破壊力抜群らしい。四郎は儚くも散っていった。ざまあみろ!






私たちはみんなでご飯を食べた。西東くんはパウンドケーキが気に入ったようで、今度作り方を教えて欲しいとのことだった。

それから少しして西東くんと四郎は帰っていった。


今日はたくさん西東くんと話したなあ。

それと明日も料理を教えることになった。明日は楽しみなんだけど、思い返してみれば学校での藤中の言ったあの言葉が心配だ。


『明日は覚えとけよ』


…ぷっ。いやーこの台詞はないわー。でも藤中たちのことだからよからぬことをたくらんでいるんだろう。あいつらの下衆な脳味噌で考えつくことは少ないかな。


明日の決戦に備えて今日は早く寝るか。

そのときの私は凄く君の悪い顔をしてたことだろう。


おやすみ。また明日。


私は心の中で西東くんにに語りかけた。

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