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いちごの砂糖漬け   作者: 霧霧
4/12

過去編

本編更新しなくてすみません。

今時あり得ない下駄箱にラブレター。

もっとあり得ない校舎裏の桜の木の下に呼び出された三宅佐奈江は、幼馴染で友人である木村四郎を引き連れて待ち合わせ場所に立っていた。


「佐奈江、なぜここに俺を連れてくる」

「そんなの決まってるじゃない。手っ取り早いからだよ」


桜の木の下とはいっているが今は夏だ。ピンクの可愛らしい花も、甘い匂いもない。清々しいくらいの緑がそこら中に広がっている。

その下で言い争っている男女は第三者からみれば痴話喧嘩のように見えるかもしれないが、二人を知っている人物なら誰しもその様なことがないことがわかるだろう。


「いくら楽だからっていってもよ、火の粉が吹きかかるのはこっちなんだぜ」

「四郎なら火の粉くらいかかっても大丈夫よ。四郎のいいところはその丈夫な体だけだと思う」

「なんだと!」

「本当のことを言っただけだよ」


四郎は言い返そうとするが背後から足音が近づいて来たので途中で言葉を飲み込んだ。


「三宅さん。来てくれたのは嬉しいけど、隣の男は何かな?」


二人の後ろから優男風の男が現れた。恥ずかしいラブレターを書き、この時代遅れな呼び出し方をした張本人、桜井平祐だ。サッカー部のキャプテンで月に五人には告白されるほどのもてっぷりだ。

佐奈江は隣にいる四郎と腕を組み、表の顔で対処した。


「桜井くん。こういう訳だからあなたとは付き合えない。本当にごめんね」


佐奈江は顔は中の上だ。なのに何故か顔のいい男が引っかかる。その度に四郎が恋人役になって追い払っているが、四郎にはなぜ佐奈江に集るのかわからない。


「その隣のやつ木村四郎だよね。君みたいな大人しい子にそんな不良は似合わないよ」


その言葉を聞き、四郎は笑いを堪えるのに必死になった。


「なに笑いそうになってるのよ」

「だって」


三宅佐奈江は学校では素行の悪い四郎の幼馴染と認識されている本当はは違う。佐奈江は四郎より遥かに強い。昔から祖父の道場に通っていたからだ。その辺の不良を殴り倒しているうちに『裏の番長』と呼ばれることになった。正体はばれていないが佐奈江の知らぬ間に『裏の番長』の名はそこらじゅうに知れ渡っていた。

そんなこともつゆ知らず、桜井は二人で小声で話していると苛立ったのか先ほどより強い口調で話しかけてきた。


「木村四郎なんかといたらいつ襲われるかわかんないよ。あいつなんかやめて俺と付き合おう!」


その言葉を聞いてこらえていたものが決壊した。


「あはははははははははははは」

「四郎!こんな所でわらわないでよ!」

「はははっ、だって大人しいとか、襲われるとか一番佐奈江に似合わない言葉じゃないか」

「四郎。黙りなさい」

「ごふっ」


四郎の鳩尾に佐奈江の容赦ない鉄拳がとんできた。四郎はその場でうずくまる。

桜井は未だに見たことが信じられないのか某前としている。


「桜井くんだっけ?今見たこと忘れてくれない?」


桜井は未だに固まっていて佐奈江の言っていることが理解で来ていない。


「ねえ、話聞いてるの?それとも四郎みたいに実力行使に出ないとわかんない?」


桜井の顔はみるみるうちに青くなって行く。やっと佐奈江の言うことが理解できたのか首を上下に降り、震えながらこの場を去って行った。


「佐奈江、いくらなんでも脅しすぎじゃないか?」

「脅してないわよ。あいつは上辺の私しか見てなかったからああなったのよ」

「上辺って・・・お前が本当を見せてないんだろ。そんなんじゃいつか壊れるぞ」




「・・・そうかもね。」


佐奈江は珍しく弱音をはいた。いつも、すこし傲慢で前向きなのに。佐奈江の不安そうな顔を見たのは四郎はこれが初めてだった。


「私を受け入れてくれる人っているのかな?」

「大丈夫、現れるさ。それまでは仕方ないから俺がそばにいてやるよ。」

「・・・ほんと今日は四郎のくせに生意気」

「言ってろ」


そこで風が吹いた。夏の乾いた風だ。いつもは少し不快なのに佐奈江には嫌なものを全てを吹き去ってくれたように感じた。


「帰ろうか」


二人はどちらともなく呟いた。それに答えるように夏の風が二人の間を通り抜けた。


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