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いちごの砂糖漬け   作者: 霧霧
3/12

さんわめ

窓から空を見る。今日の空は雲一つない青空だ。でもわたしの心は微妙な曇り空。この空を見ていると昨日のことが嘘のような気がしてくる。


「佐奈江」


この声は四郎のものだ。朝が弱い私のために四郎のお母さんが迎えを寄越してくれる。


「現実逃避している所で悪いが早く行かないと遅刻するぜ」


げ、もういつも出発してる時刻になっている。


「ありがとう。…四郎はどうするの?」

「俺と一緒に行くの嫌だろ」


そりゃ、四郎みたいな目立つ男子といたらなに言われるかわかってるし。


「…まあね。いってきます。鍵よろしくね」

「おう」


四郎には家の鍵を渡してある。それは四郎に絶対的な信頼を寄せているからだ。好きとかそういう感情は一切ないが私の背中を任せられるのはあいつしかいないと思っている。

好きなのは西東くんだけどね。






「おはよう」

「おはよう、佐奈江ちゃん!」


このふわふわ可愛い女の子は市原亜子ちゃんだ。中学校のときにいた後輩にそっくりでホント可愛い。


「亜子ちゃんおはよう。今日は教室騒がしいね。何かあったの?」

「また男子が暴れてるだけ。殴り合いとかしないだけマシだけど消しゴムのカス投げ合ったり、授業中に先生で遊んだり、今時小学生でもやってないようなことをしてるよね。藤中くんたち」


このちょっと毒舌な所も彼女の愛すべき場所だ。ちょっと言いすぎだとは思うが、でもこの頃藤中たちが調子のってきてるのは本当。『俺ってみんなの人気者?ふざけてる俺かっこいい』みたいなことでも思ってるのか?鬱陶しい。ああ、一発殴りたい。


「本当にね。でももう高校生なんだよ。そのうちに今やってることが恥ずかしくなって、すぐにやめて大人になるよ」

「そうだといいんだけど…」


そんなたわいもない話を続けていると先生がきたのでおしゃべりを中止し席へ戻る。


「えー今日の予定は…」


今日は西東くんが家にくる。昨日のうちに部屋は掃除したし、料理の本もかたっぱしから出してきた。

今日は浮かれて真面目に授業を受けられないだろう。まあ、大丈夫だろうけど・・・。







「佐奈江ちゃん大丈夫?」

「うん…」


大丈夫じゃなかった。すべての授業が耳に入ってこないんだよ。先生にあてられても何も答えることができなかった。藤中たちには笑われるし。あいつ殺すいつか殺す。

うん、そうだ。亜子ちゃんにノート借りよう。あの子のノートは私のより綺麗だ。あー亜子ちゃん可愛い。


「亜子ちゃーん。ノート貸して、明日返すから」

「うん。私のでよければ」


ここまではよかったんだ。


「うわっ、あいつ市原にノート借りてるぜ」

「ああ、三宅か。あいついつも市原の近くにいるけど、おこがましいっていうか引き立て役みたいな?」

「頭も悪いみたいだしな」


はははははははははははははははははは

こいつらここまで頭がイッてるとは思わなかったわ。本当のことでも言っていいことと悪いことがある。馬鹿なの死ぬの?


「あいつら!」


亜子ちゃんが出て行こうとするけど、私が手を掴んで止めた。

亜子ちゃんには悪いけど目立ちたくないんだもん。今日西東くん来るし、早く帰りたい。


「まあまあ亜子ちゃん。あいつらのあの姿をみてみなさい。あの腰パン、ズボンをちゃんと上げれない小さい子供みたいでしょ。あいつらは体だけは育った小さい子供なのよ」

「プッ」


気づかなかったが、私はそうとうムカついてたようだ。


「おいてめぇ、今なんつった」

「うるせえんだよ!」


あーうるさいうるさい。おまえのピーちょんぎってやろうか。

けど、ここで藤中に一発かましたらこれまで取り繕ってきたものが剥がれ落ちるだろう。

西東くんがどーのとーのだって言う前に自分から死地に片足を突っこんでしまった。時間、まきもどらないかな。

ここで少女漫画のヒロインだったならヒーローが助けにきてくれるんだろう。目立ちそうだけど。


「藤中!三宅さんになにしてるんだ」


おっと、ここでヒーロー西東くんの登場だ、ってえええええええええええええ

なんで西東くんがここにいるの?しかもいいのか悪いのかこんなタイミングに・・・。


「なんで西東がいるんだ」

「つーかおまえには関係ないだろうが」


みぎよーし、ひだりよーし。この教室に残っているのは藤中とその取り巻きたち、亜子ちゃんに私と西東くんだけだ。安達さん(西東くんが好きな女子のうちの一人)がいたらいろんな人にこのことがしれわたっていただろう。あの人は噂の発信源みたいなものだしな。


「三宅さんは俺の友人だ。馬鹿にするのは許さない」


隣の亜子ちゃんからいかにも興味津々といった眼差しが送られてきます。いやーやめてえええええええ!


・・・ハアハア、この私壊れてきたような気がするわ。

でも西東くんよ、助けるならもっとスマートに助けて欲しいな。かっこいいけど。


「藤中!もう5時だぜ。女子高の女と遊ぶんだろ、早く行こうぜ」

「ちっ、仕方ない、行くぞ!」


こうして嵐のような一コマは去って行った…と思いきや


「明日は覚えとけよ」


意味深な言葉を残して行きました。関係ないけど今のセリフ悪役みたい。


「佐奈江ちゃん!大丈夫?」

「うん、変なことに巻き込んじゃってごめんね」「ううん、佐奈江ちゃんは悪くないよ。ねえねえそれより、何時の間に西東くんの友達になったの?」


答えにくいことを聞くなぁ。さて、どうこたえるか。


「えーと、えー、かくかくじかじかで…」

「もう!小説や漫画じゃないんだからそんなのじゃわかんないでしょ!

まあ、今日の所は帰るね。明日はちゃんと全部聞かせてもらうから!」

「何か用事でもあるの?」

「むむっ。あるのは佐奈江ちゃんでしょ?予想だけど西東くんがこの教室来たのって佐奈江ちゃんに会うためでしょ?ああ、私お邪魔かな。じゃあね!」

「う、うん。バイバイ」

「さよなら、木村さん」





「西東くん。何か用事があったんじゃないの?」


そういえば、と西東くんに聞いてみる。


「んー、昨日の料理の件、あやまりにきたんだ」

「え、なんで」

「昨日は強引過ぎた。ほんとごめん。脅すようなことも言っちゃったし、断ってくれてもいいよ」

「ううん。一回私が引き受けたんだし最後までする」


考える前に先に言葉が出た。やはりいろいろ取り繕っていても出てくるものはあるのだろう。


「そっか」


返事したことに後悔はない。むしろ役得だった。西東くんのハニカミ笑顔見れたしね。


「一緒に帰ろうか?今日は卵焼きの作り方を教えるよ」

「了解です。できれば甘いのがいいな」

「ふふっ、オッケー」


そう言って私たちは歩き出した。




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