いちわめ
初投稿で初小説です。
栗色の髪に色素の薄い茶色の目。整った顔立ち少年がパンを片手に友人たちとじゃれあっている。
学校の屋上で、あの人を見ながら昼ご飯を食べる。私だけの至福の時。それがあの日から私の平穏な日常が変わり始めたのだ。あんなに取り繕ってたものが簡単に剥がれ落ちるなんてこのときは何も思っていなかったのだ。
「三宅さん?」
「へ?」
初めて声をかけられたのは近所スーパーの前でだ。あの人の華奢な手にはスーパーの袋がぶらさがっている。袋の中からネギやゴボウ、特売品の刺身のパックが顔を覗かせていた。
うん、似合わない。
「西東くんだよね?」
「うん、こんなところで三宅さんと会うとはね」
私もこの寂れたスーパーで西東くんに会うとは思わなかった。西東くんと言えば校内でも結構目立つグループにいる。友達と一緒にコンビニにいるところは見たことはあるが、このスーパーで彼を見たことは無い。
「三宅さんはなにを買いにきたの?」
「晩御飯のおかず。西東くんは?」
「・・・俺も」
西東くんが苦い顔で言葉を発したので私はすごく驚いてしまった。そこで初めて気づいたが私は彼の笑顔しか知らないのだ。おそらくだが彼のクラスメイトも、友人も、この彼の姿を見たことがないのではないか。
彼はそんな私の様子を見て苦笑いしながら言葉を続けた。
「・・・父さんが働いてたんだけどね、リストラにあっちゃって。新しい職場探してるんだけどみつからない。給料は無いし、今にいたっては家で酒ばっかり飲んでるから、母さんがパート行くことになったんだ。だから今日から家事は俺の役目」
西東くんのお父さんは有名な会社で働いていると聞いたことがある。その会社については知らないがこ西東くんはこの頃の昼食は菓子パンばかりだった。そう言う理由だったんだ。
でも、ちょっとまって。
「ひとつ聞きたいんだけど…そんな話わたしにしてよかったのかな?」
「うん…それはいいんだ。誰かに聞いて貰いたかっただけだし。三宅さん口固そうだから。あと、ちょっとだけ心が軽くなった。ありがとう」
西東くんの笑顔を間近で見てしまった。すごい羞恥心に襲われて顔が赤くなり目をそらしてしまった。けどそう言われて私は胸を撫で下ろす。少し西東くんのためになれたかな。
「ところでいつも、晩御飯は三宅さんが作ってるの?」
「う、うん。うち、お母さんもお父さんも働いてるし出張多いから。兄さんもいるけど1人暮らししてるしね」
私の家では小さい頃から両親が働きに出てたから、家事は私と兄の仕事だった。特に料理は兄が苦手な事もあって得意だったりする。
そういうと西東くんは目を輝かせて
「三宅さん、頼みがあるんだけど・・・」
「料理教えてくれないかな?」