2.負けっぱなしじゃ終われない
ミワちゃんを撃破しテンションの上がりきった私は、そのまま深夜ランクマに没頭し、朝を迎えていた。
休日出勤を生贄に、本日の休みを召喚したため、多少の無茶は問題ない。
ふと思い立って配信サイトで[ミワちゃん]と検索すると、早速昨日の私との対戦が切り抜かれていた。
『タテリスランク1位にわからされるミワちゃん』
「……ふふふ」
自分でも気持ち悪いとはわかっているが、ニヤけがとまらない。
推しの配信に私が出ているというだけでも嬉しいのに、ミワちゃんの視聴者さんも、私のことをみて、私のプレイングをみて楽しんでくれている。
満たされる。
今まで満たされたことのない器官が満たされていくのを感じる。これが承認欲求というやつなのだろう。
一通り動画を堪能したあとは、自身のプレイングの見直しを行っていく。
「ここの中盤の積み方は、もっといいのがありそう」
動画をスロー再生しつつ、気になった部分は動画を一時停止し、脳内でタテリスを組み立てていく。
この一人でプレイングを研磨していく時間が、私は好きなのだ。
「……疲れた」
モニターを長時間見続けた目が疲労を訴えてきたため、一旦目を閉じ、伸びをする。
以前は一日中ゲームができたものだが、最近は疲れを感じることも多くなってきた。
「年かな」
いや、まだアラサーの女だ。若いとは言わないが、老いてると認めるには若すぎる。
そんな自問自答をしつつ、また手はコントローラーへ伸びていく。
今日はなんの予定もないため、まだまだゲームができる。
「見せてやるぜ、私の限界ってやつをな」
無限ゲーム編開始。
徹夜でテンションの上がっている脳内で、そう呟いた。
結局夕方までタテリスをやっていた私は、ミワちゃんの配信開始の通知をみて、ゲームの電源を落とす。
休日も残り僅か。あとはミワちゃんの配信をBGMにし、早めに布団に入って休むことにしよう。
「えーと、なになに〔最近タテリスの配信多くて嬉しい〕と、ありがとー。最近ハマってるんだよね。こんなにハマるならずっと続けておけばよかったなー」
ミワちゃんはタテリス復帰勢らしい。小さい時周りの友達がゲームをしなくなって、それに伴ってやめちゃったのだとか。
一緒にゲームをする友達自体がいなかった私とは大違いだ。
「昨日マッチングしたランク1位の人って有名な人なのかな? すごい上手かったよね。配信の後動画を見返したけど、プレイの速さが早すぎてびっくりしちゃった」
ミワちゃんが私の話をしている!?
枕元の、配信を流しているスマホを掴み、画面を食い入るように見る。
コメントも私のプレイの感想を口々に褒めてくれている。
〔すごかった〕
〔速すぎて笑っちゃった〕
〔大分前だけどお師匠様の動画で見たことあったような〕
〔名前笑った〕
〔去年ぐらいにミワちゃんの師匠が動画で出してた人だと思う。結構いい勝負してたよ〕
「へーー! ししょーと対戦してたんだ! いい勝負ってすごいね。また探して動画みてみよー」
うっ……。あの動画はできれば見てほしくない。
あの動画とは、ミワちゃんの師匠が動画の企画でランク上位のプレイヤーを募集しており、応募をして対戦した動画だ。
その頃もランク一桁だったので、意気揚々とメッセージを送って、ボコボコにされた私の黒歴史。
『速さはトッププロ並だけど、相手との駆け引きがド下手。相手をあまり見れてないね。強さと対人戦の経験があってない。このゲームを一緒にやる友達が少ないんじゃないの?』
当時は今よりもだいぶ尖っていた、お師匠様の発言が脳内に蘇ってくる。
誰が友達少ないだ。泣くぞコラ。
パズルゲームというジャンルは今ではAIが発展しており、有志が作成した様々なAIとの対戦を行うことができる。
私はこのAIとの対戦を好んで行ってきた。
パズルゲームというジャンルにおいての最強は、人間ではなくコンピュータだ。
最適で最速の動きをし続けるコンピュータには、人間では絶対に勝つことができない。
最適で最速に限りなく近づける。そんなコンピュータのようなプレイングが、私の目標だ。
「いやー。それにしてもホントに速かったねプレイが。ししょーと対戦したときを思い出したよ」
ミワちゃんはゲームが上手い。
ファンの贔屓目無しにそう思う。
タテリスは発売されてから30年にもなる、歴史の長いゲームだ。
そこのランクマにいる対戦勢は、何年も前からプレイしている、ベテランも多い。
そんな中で、ブランクもある彼女が現在、ランク上位にいるのはとても凄いことだと思う。
「いつか絶対リベンジするよ。それだけじゃない、ししょーにも勝つ。勿論、他の配信もしながらだから大変かもだけど、絶対勝つよ!」
〔いいね!〕
〔がんばれ〕
〔応援してます!〕
ミワちゃんはもっと上手くなる。
私はそう思う。ミワちゃんには上手くなる才能がある。
ミワちゃんが次に話す言葉が頭に浮かび、それを私も口にする。
「「負けっぱなしじゃ終われない」」
意外と負けず嫌いなところがあるのだミワちゃんは。
ウンウンと頷き、再び寝る体勢に戻り、瞼を下ろすのだった。
次話から若返ります。少しでも面白いと感じたら、高評価やリアクションもらえると泣いて喜びます!




