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11.だって、負けるのヤダもん


 格闘ゲームを始めてからはや2ヶ月。


 私は今日も今日とて、ゲームに勤しんでいる。


 最近では平日の学校終わりは家で練習し、土日にはゲームセンターで仲良くなった大樹くんに練習の成果をみせて、アドバイスをもらうというサイクルを行っている。


 この2ヶ月の中で、私は使用キャラを変更し、カンフー少女から、テコンドーを使用する女性キャラクターに変更していた。


 大樹くんに教えてもらう中で、同キャラではこちらが一方的に教えてもらうだけになってしまう。


 そこで、大樹くんに自分の苦手なキャラを何体か教えてもらい、その中から私が気に入ったキャラを選び、大樹くんの苦手克服にも役にたとうという大人な考えの結果である。


 決して、ボコボコにされすぎたため、早くこのキッズをやっつけたいから、有利なキャラに変更した訳ではない。


 そんな訳では、決してないのである。




「う~~~ん」


 ゲームが一段落ついたところで、テレビ画面の前で腕を組んで首を捻る。


 私自身、確実に上手くなっている自覚はあるのだが、まだ大樹くんに一度も勝てていない状況なのだ。


「ここ最近は、惜しいとこまで何度もいってるんだけどなー」


 惜しいとこまではいくが、どこか勝ちきれない。


 そんなもどかしさが、私の中にずっと残ってしまっているのだった。


 恐らく、最後を決めきれない要因というのがあるのだろう。


 それをまずは見つけなくては。






「ということで、私があなたをどうしてボコボコにできないのか、教えてくれない?」


「最悪の質問がきた」


 場所はいつものゲームセンター。


 そこで私は、大樹くんに自分では答えの出なかった疑問を、ぶつけていたのだった。


「まぁ、愛紗ちゃんの言ってることはわかるよ。プレイングも上手くなってるし、キャラのこともよくわかってる。現状僕に勝ち越すのは無理でも、何回かは勝てるんじゃないか?ってことだよね」


「うん。これは、大樹くんがなにかズルをしていると、私は確信しているのだけど」


「ズルってなんだよ。失礼だな」


 口を尖らせて返答する姿は小学生らしくてかわいい。


 正直、小学生に私の疑問が理解できるとは思わなかったので、冗談を交えながら聞いてみたのだが、正確に理解されすぎてビックリしている。


 ゲームでもなんでも、何かを突き詰めて上手くなっている人は、理解力とか、考えをまとめる力が高いのだろう。



「まぁでも、そんなに焦らなくても、もう少しすれば、僕にも全然勝てるようになると思うよ」


「ほんと??」


「うん。格ゲー始めてまだ2ヶ月くらいでしょ? 僕が始めて2ヶ月くらいの頃はまだ基本の操作も全然うまくできてなかったよ。それと比べれば、ランクも上がってきてるし、上達もすごく早い」


「そんな、天才だなんて……うれしい」


「そこまでは言ってない」



 上達が早いのは当然だ。


 こちとらタイムリープなんていうズル、いわばチート行為をしている身だ。


 流石に小学生の勉強で戸惑ったりはしないし、子供ゆえの時間もある。



 逆にいえば、いい大人が、本気で2ヶ月かけて練習して、この少年を倒そうとしているのに、まだ一度も勝てていない。


 そんな状況が、私の心をざわつかせる。



「うーん。それじゃ、今日は僕を倒すためにやるべきことを、特別に教えてあげようかな」


「え、いいの!?」


 黙ってしまった私に、大樹くんが願ってもない言葉をぶつけてきた。


「いいよ。ほんとはもう少し、師匠気分を味わっていたかったんだけどね。一緒にもっと上手くなろうよ」


 そういって、にっこりと笑い、私の顔を覗き込んでくる。


「うん! よろしくお願いします!」


 この子将来、女ったらしになりそうだな。


 良い返事を返しつつ、そんなことを思うのだった。







「愛紗ちゃんは、トドメを刺そうとするときに、毎回体力を削りきれるギリギリのコンボを狙うクセがあるんだよね。最後の行動が読めるから、僕は絶対負けないわけ。逆に言えば、最後に小さい技を挟んだりして、ドドメを指せる技の選択肢を広げるようなプレイングができるといいと思うよ」


「そこまでわかってるなら、もっと早く教えなさいよ!!」


「だって、負けるのやだもん」


 そして結局、ズルもしてた。








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