10.女子小学生の朝は早い
ジリリリリリリリリリ
自分の頭の横で、目覚まし時計の音が鳴り響く。
まどろんだ頭の状態で、目覚まし時計の上部を叩き、目覚ましの音を止める。
「う〜〜ん」
昔?前世?は携帯のアラームで起きていたので、タイムリープ当初はこの目覚まし時計を懐かしんだものだが、今はもうすっかり慣れてしまった。
「ハッ、いかん!」
ガバっと起き上がり、頭を覚醒させる。
布団から抜け出して、部屋を出る。
「おはよー。今日も早くてえらいねー」
「うむ!」
キッチンで朝ご飯の準備しているお母さんに声をかけて、洗面所に行き、顔を洗う。
小学生の肌は凄い。化粧水も乳液も使ってないのに、モチモチだ。
おかげで面倒な朝の準備を時短できる。
これが、小学生に戻ったことで、一番嬉しいことかもしれない。
すっかり目を覚ました私は、お母さんの元へ向かう。
「母上ー。お手伝いするー」
「お母さんね。ありがとー」
机の上を拭き、既にできてる朝食を机の上に運ぶ。
「お母様ー。私、ゴミ出ししてくるー」
「お母さんね。助かるわー」
お母さんに声をかけて、ゴミを出しに外へ向かう。
タイムリープする前の子供の頃は、こんなにお手伝いをする子供ではなかった。
お母さんは凄い。朝からこんなに沢山の仕事を一人でこなしているんだから。
大人になってから親孝行できる機会というのは、子供が思っているよりずっと少ないことを、私は知っている。
今のうちに親孝行しておかなければ。
家に戻ると朝食ができたようで、お母さんが机の上に、ご飯を並べているところだった。
「ご飯できたから、手を洗ってきなー」
「はーい」
手を洗って戻って来ると、お母さんが手招きしていた。
「どうしたの?」
「はい、お駄賃。今日もありがとね」
そうして私の手に、100円玉を握らせてくれる。
「ひゃっほーい! このために早く起きてるって訳よ!」
「うーん。もう少し本音を隠した方がいいわねー」
ほんと、かわいいわねー。
そう呟いて、私の頭を撫でるお母さん。
「いつも、お母さんの為に、早起きしてお手伝いしてます」
「洗濯物も干してくれたら+100円」
「うおおおおお!! 行ってきまーす!」
「はいはい。先にご飯ね」
洗濯機まで駆けていこうとした私だったが、お母さんに襟足を掴んでとめられるのだった。
洗濯物は逃げないので、先にご飯を食べることにした。
お兄ちゃんはいつの間にか起きていて、既にご飯を食べ始めていた。
「お兄ちゃん、おはよー」
「ん」
お兄ちゃんに挨拶して、私も食卓につく。
今日のご飯は、目玉焼きとお味噌汁だ。
目玉焼きは洋食の筈だが、いつの間にか和食の顔をして、日本の朝食に溶け込んでいる。
「なかなかやるな。こいつは」
お箸で目玉焼きの黄身の部分をつつく。
「コラ、行儀が悪いよ」
お母さんに怒られたので、つつくのをやめ、食事を再開する。
目玉焼きにお醤油をかける。
この醤油をかける作業も、和食の顔をするための、偽造工作なのだろうか。
ならば、醤油をかける私は、さしずめ洋食国の工作員という訳だな。
「ママー。今度から私もお料理手伝うよ」
「お母さんね。うーん。料理は危ないからまだダメね」
朝食を食べながらお母さんと会話する。
我が家は家事を手伝うとお小遣いが発生する仕組みだ。
基本一つのお手伝いにつき、+50円。
ご飯の準備もできたら大きいのだが、私はまだ小学生。
お母さんの不安もわかるので、返事を返して会話を終える。
「ん」
お兄ちゃんが手を合わせ、ごちそうさまの動作をして、席を立つ。
私もゆっくりしてたら100円……ではなかった。洗濯物を干す時間がなくなるので、食事を再開する。
洗濯物を干し終え、学校に行く準備をし、玄関へ向かう。
「ほい」
「あざす」
ペコリと頭を下げ、お母さんから貴重なゲーセン資金をもらう。
これまで貯めていたお小遣いは、格闘ゲームと格ゲー用のコントローラーを買うのに使ってしまったので、金欠なのだ。
「娘がいると、家事が楽できていいわねー」
ごめんなさい。タイムリープ前は全然お手伝いとかしてませんでした。
因みに、お兄ちゃんはお手伝いする気がないので、お風呂掃除担当として毎日働いている。
「それじゃ、いってきまーす」
「はい、いってらっしゃい」
女子小学生の朝は早い。
それは、少しでも親孝行をしようとする、少女の優しさなのだ。




