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初めてのおつかい

俺はユイラに教えてもらった日からなんとなく毎日魔力量トレーニング略して“魔トレ”を続けている。

最近、魔力量は目に見えて伸びてきた気がする。

……ただ、剣術はまったく成果が出ない。

トワムの教え方が悪いわけじゃない。

単に俺が、早い頃から魔力の流れを身体に馴染ませすぎたせいで、 “気”の流れを掴むのが少し苦手なだけだ。

それでも、毎日付き合ってくれるトワムは、本当にいい父親だと思う。

一方、母のユイラはキッチンで晩ご飯の準備中。

「人参に、じゃがいもに……」

食材を確認する声が聞こえる。

「あっ! 玉ねぎを買い忘れた!」

「僕が買ってきましょうか?」

いつもご飯を作ってくれている。

少しだけでも手伝いをしようじゃないか。

「いいの? じゃあお金渡すから、いつもの八百屋で買ってきてね」

――初めての“おつかい”だ。

時々ついて行っていたから場所は分かる。

けど、一人で行くとなると、少し不安そうな顔をしていた。

「大丈夫ですよ。もう七歳です!」

そう言って、家を出た。

……けれど。 「トワム、心配だから後をつけましょう」

「流石に大丈夫だろ……」

そう言いながら服を着ていた

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

どうやら、俺の後ろには二つの視線があるようだ。

振り返らなくても分かる。

ユイラとトワム。

――尾行が下手すぎる。

あれで元冒険者とか、冗談だろ。

「気づかないふりでもしてあげますか……いや、ちょっと意地悪してみよう」

新魔術の実験も兼ねて―― 俺は風魔法と火魔法の応用を試すことにした。

まず、足元の空気を熱して上昇気流を発生。

浮力の層を作り、その上を踏むようにして進む。

「エアウォーク」

さらに、背後の空気を熱して低気圧を作る。

すると、前方へ押し出すような風が生まれる。

「エアブースト!」

理屈は単純。

熱膨張と気圧差を利用した即席推進魔法だ。

……まぁ、親の尾行を撒くために使うのはどうかと思うけど。

焦るユイラとトワムの姿が遠くに見える。

――親で遊ぶのはやめておこう。

八百屋に着くと、店主のおじさんが声をかけてきた。

「お、トワムんとこの坊ちゃんか! さっきユイラちゃん来てたけど、どうしたんや?」

「お母さんが玉ねぎを買い忘れたみたいで」

「おつかいか! 偉いなぁ。よし、まけといたるわ!」

なんと、半額にしてくれた。

子供って得だな……いや、顔に出るなよ俺。

笑顔で礼を言い、家へ帰ると、 玄関には――二人の姿。

やっぱり先回りしてたか。

「あっ、帰ってきたの? おかえり!」

「手伝いか、感心だな」

……何事もなかったかのように振る舞う両親。

「お母様もお父様も、尾行お疲れ様です」

――あちゃー、って顔をして笑ってる。

ユイラが玉ねぎを受け取り、優しく微笑んだ。

その笑顔を見るだけで、胸の奥がじんわり温かくなる。

どんなに失敗しても笑ってくれる母。

どんな時も支えてくれる父。

この時間が、何よりも愛おしい。

晩ご飯はカレーだった。

カレーと言ってもシチューのようなものだ。

湯気の向こうに、笑顔がある。

――この幸せを、俺は二度と失わない。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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