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好敵手との再選、戦いの火蓋


何回か遊ぶ(?)うちにウィングとも仲良くなった。

初っ端から疑ってきたやつとは思えないレベルでだ。

俺はトーナメント表が明らかになったと聞き掲示板に行った。

紙に記された対戦カードは、まるで運命のいたずらのように並んでいた。

魔術学校VS剣術学校

1戦ナエリアvsダルタ

2戦スウィルツvsハンバサ

3戦メトルナーサvsウィング

4戦アエシキvsサム

5戦ハーメントvsランド


左列が魔術学校、右列が剣術学校の代表。

ルシエルと王子の手で厳正に抽選が行われた――はずだった。


……はずだったのに。


「終わった。」

俺は紙を見た瞬間、魂が抜けた。


「やっぱりウィングとかよ……!」


まさか、初戦で再戦とは。

心の準備も精神の回復も、ぜんぜん間に合ってねぇ。


「おい、ウィング!」

顔を上げると、当の本人が満面の笑みで手を振っていた。


「ルシエル王子に頼んで、被せてもらった!」


……は?


「ふざけんじゃねぇぞ!!」

思わず叫んでしまった。


周囲の生徒たちが笑いをこらえ、ナエリアがため息をつく。


「ほんとに……嬉しそうだね、ウィング先輩。」

「再戦の機会、逃したくなかったからな。」

「やめろよその清々しい笑顔!!ビビってる俺が馬鹿みたいだろ!!」


ウィングは楽しそうに肩をすくめる。

「恐怖を克服するのも修行のうちだ、メトルナーサ。」


(どこの精神修行だよ……!)


俺はその場で頭を抱えた。

どう考えても一番の地獄カードだ。

ナエリアが気の毒そうに俺の背中を叩く。


「がんばって……応援してる。」

「うん……その“お通夜みたいな顔”で言うのやめてくれ。」



ウィングの笑顔が、なぜか太陽より眩しく見えた。

まるで「全力で叩きのめすね!」とでも言いたげに。

ーーー


観客席の熱気が一気に高まる。

トーナメント開幕戦――注目のカードは、魔術学校代表ナエリアと、剣術学校代表ダルタ。


「……フィジカル・ダブル、発動」


低く呟いた瞬間、ダルタの全身から青白い“気”が噴き上がる。

筋肉が膨張し、空気が震える。二重の気の流れが体を包み、反射速度と筋出力を二倍に高める技――。


「ほぉ……」観客の一人が息をのむ。

「ダブルまで到達してるとは、やるな」


だが、ナエリアは一歩も引かない。

彼女の手の中で、雷光が静かに蠢いていた。


「これが……ジニアが完成させた、雷魔法……」

唇がわずかに震える。

詠唱を開始する。

「雷霆を裂く声よ、我が意に従い、闇を照らせ――《サンダーストリーム》!」雷鳴が轟いた

ジニアが理論を組み立て、ナエリアの魔力特性に合わせて再構築された、詠唱安定型雷魔法。

青白い稲妻が放たれ、空間を貫いた。

「ぬ……っ!」

ダルタが一瞬で間合いを詰め、剣を振り下ろす。

しかし、その刹那――雷が走る。

「ぐ、ぁっ――!?」

“気”による肉体強化では防ぎきれない。

雷の電流は、筋肉そのものの信号伝達を麻痺させる。

体を覆う気があっても、神経までは守れないのだ。

「……効いたみたいね。」

ナエリアの瞳が冷たく光る。

感電で動きの止まったダルタに、間髪入れず詠唱が続く。

「大地よ、砕け。風よ、貫け。二つの力、交わりて放て――《ストーンキャノン》!」

これもジニアによって効率化されたストーンキャノンの詠唱だ。

土が抉れ、風が唸る。

複合魔法――土と風の衝撃波が融合し、巨大な石弾となってダルタへと襲いかかった。

「ぐ……ぉぉおおっ!!」

必死に剣で受け止めるダルタ。

しかし次の瞬間――

バキィィィィン!!!

衝撃音と共に、剣が粉々に砕け散った

衝撃波に耐えきれず、砂塵が舞い上がる。

審判が叫ぶ。

「勝者――ナエリア・ナエリアス!!!」

歓声が爆発した。



ナエリアは深く息を吐いた。

「……やった……」


観客席では、ジニアが眼鏡を押し上げながらニヤリと笑う。

「成功だ。“雷による筋信号阻害”……理論通りだ。」


「ちょ、怖いこと言うなよ……」

隣のメトが苦笑しながら呟く。


ウィングは腕を組みながら、その様子を静かに見つめていた。

「……やはり、彼女も侮れないな。」


「第二試合――開始ッ!」


審判の声が響いた瞬間、スウィルツはすでに詠唱を始めていた。

その速さはまさに電光石火。

発音、リズム、息遣い――どれも無駄がない。三年生最優秀者の実力が一瞬でわかる。

「水脈よ、荒れ狂え――《ハイドロ・インパルス》!」

大気が震えた。

地面を這うように青い魔法陣が展開し、そこから放たれたのは――高圧水流の奔流。

まるで巨大な水の槍が何十本も同時に放たれたようだった。

「うおぉっ……!?」

対するハンバサは身の丈四メートル。巨人族特有の分厚い筋肉が水流を受け止める。

それでも押し流されそうになりながら、彼は笑った。

「おもしれぇ……!」

地を蹴る音が響く。

巨人族の“地踏み”は、それだけで気を帯びた衝撃波となる。

ハンバサが両拳を構え、低く唸るように詠唱する。

「我が身に宿るは山脈の力――《フィジカル・ダブル》!!」

なんか勝手な詠唱つけてるがその瞬間、気が爆ぜた。

二重に重なるオーラが彼の体を包み、周囲の風景がわずかに歪む。

その一歩一歩が、まるで地面を砕くかのようだ。

だが――スウィルツは退かない。

「フィジカル・ダブル……ね。なら、こっちは流れで受け止める!」

彼女の両手から、無数の水の刃が生まれた。

“攻撃”ではなく、“流体防御”。

水の壁がハンバサの拳を包み、力の衝撃を流し、逸らす。

「ぬうっ!?」

ハンバサの大剣が空を切る。

重い攻撃を、軽やかな流れで受け流す。

それは剣でも盾でもない、“流体術”と呼ばれる水属性上級者の技。

観客が息を呑む中、スウィルツはさらに詠唱を続ける。

「流れ集い、渦巻け――《アクア・ボルテックス》!」

巨大な水の渦がハンバサを飲み込んだ。

だが、巨人族は力でねじ伏せる存在。両腕で水流を押し裂き、獣のように咆哮を上げる。

「まだだあああああ!!!」

大剣が空気を裂き、水を弾き飛ばす。まるで水の中に雷が走ったかのような音が響いた。

そして――試合終了の鐘が鳴る。

「……時間切れ。勝敗、つかず!!」

歓声が上がった。

二人とも、最後まで立っていた。



ハンバサは息を整えながら笑う。

「お前、ちっこいのによくやるじゃねぇか。」


スウィルツは髪から滴る水を払い、にこりと微笑む。

「そっちこそ……よく耐えたね。」


拳を合わせる二人。

一瞬の沈黙のあと、観客席から大きな拍手が湧き上がった。


「……勝敗はつかずとも、魂のぶつかり合いは伝わった。」

審判の言葉に、両者は静かに頭を下げた。



ナエリアが観客席でつぶやく。

「……あれが、上級生の戦い……」

「すごいな」メトも同じく見惚れていた。


ジニアはノートを取りながら呟く。

「水属性の“流体術”と、巨人族の“衝撃波”……データ的に、いい組み合わせだな。理論的にも興味深い。」


「……お前、感想が理系すぎるぞ」


「誉め言葉だね」



こうして、第二戦は引き分けという形で幕を閉じた。

だが、そこに宿ったものは――

勝敗よりも価値ある、“友情の火花”だった。

ってなんかしみじみなってるけど次俺だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


観客席のざわめきが止まない。

魔術学校と剣術学校の最注目カード――その名を誰もが知る、二人の再戦だ。


審判が右手を掲げる。


「……始めッ!」


その声と同時に、俺はすでに動いていた。

詠唱なしの魔力操作――**C級水魔法アクアスプレッド**を発動。

放たれた水流が瞬時に弧を描き、ウィングへと襲いかかる。


だが――


「ふっ!」


ウィングは軽く翼をはためかせ、気の膜で水流を弾き返した。

まるで水が壁にぶつかったように、空中で霧散する。


(やっぱり、そう簡単には通らないか)


しかし――それでいい。

あれは“攻撃”ではなく、“仕込み”だ。


俺は続けざまに魔力を練り、掌に炎の渦を生み出す。

その熱気が空気を押し上げ――次の瞬間、俺の体はふわりと浮かんだ。


「――《エアウォーク》!」


地を離れ、宙を駆ける。

炎を操り、上昇気流を足場にする応用魔法だ。


「ほう、天人族でもないのに……空を?」


ウィングの眉がわずかに動いた。

だが、まだ終わりじゃない。


(なぜ空に出たかって?――まぁ、すぐに分かるさ)


俺はさらに魔力を練り、両手を広げる。

頭の中で、雲と水の流れを正確に思い描く。

“冷たい水滴が空気中で凝結し、広がる”――そのイメージを固定。


「《アクア・リベリオン》!」


次の瞬間、会場全体に雨が降り始めた。

細やかな水粒が空間を満たし、観客の視界を覆う。

それはただの演出ではない――この戦いの布石だ。


ウィングは不思議そうに顔を上げた。


「……おい、メト。俺に空中戦を仕掛けるとは何事だ?」


「空で戦うのは――あんたの得意分野だもんな」


「なら、なおさら不利じゃないか」


ウィングは笑いながら翼を広げ――

次の瞬間、その動きを止めた。


羽ばたけない。

翼の羽根が、水に濡れ、重く沈んでいる。


「……なるほどな」


俺は口の端を上げた。


「最初の水魔法、あれはただの牽制じゃない。

翼を濡らし、空を奪うための先制攻撃だよ。」


ウィングが笑った。

まるで、楽しげに。


「考えたではないか、メトルナーサ。」


腰の双剣を抜刀する音が響く。

その刃には、青白い気が纏われていた。


「だが――俺には地もある。」


俺の仕掛けはまだ続く。

二発目の水魔法――アクア・リベリオンで作り出した雨水が、すでに足元を濡らしていた。

つまり、導電路が完成している。


「ライトニング――!」


右手に雷を生み出し、掌が焼けるほどの電圧を走らせる。

これを地面に流し込めば――。


(これで決まる!)


放とうとした瞬間。


「久しぶりに使うか。」


ウィングが静かに呟いた。

その声に、空気が震えた。


彼は剣を交差させ、足元に気を集中させる。

圧力が爆ぜ、砂塵が吹き飛んだ。


「――フィジカル・インパクト:トリプル!」


ドン――ッ!!!


三重の衝撃波が地面を叩き割った。

その反動だけで、彼の体が宙に弾き飛ぶ。

翼を使わず、跳んだのだ。


「メト――翼がなくても、“跳ぶ”ことはできる!」


「なっ――!?」


雷を放つよりも速く、ウィングの姿が消えた。

目で追えない。気配もない。

視界が白に染まり――


「――天翼流奥義《風切の太刀》!」


風鳴りとともに、一閃。

衝撃が全身を駆け抜け、意識が遠のく。


その刹那、ウィングの声が耳に届いた。


「……ここで倒れても、恥ではない。お前の戦略、見事だった。」


俺の体が崩れ落ちる。

最後に見えたのは――峰打ちに切り替えたウィングの剣先だった。


観客席が静まり返る。

そして審判の声が響いた。


「勝者――ウィング!!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


視界がぼやける。

薬草の匂いと、遠くで鳴る鳥の声。

ここは――医務室か。


天井の木目をしばらく見つめていると、誰かの声が聞こえた。


「……メト! 起きた!」


ナエリアの声だった。

その隣にはジニア、そしてウィングの姿もある。


上体を起こすと、体の節々が痛んだ。

どうやら思っていた以上に、あの一撃は効いていたらしい。


ウィングが穏やかな表情で近づいてくる。


「起きたか、メトルナーサ。――良い試合だった。」


彼は右手を差し出した。

その掌にはまだ、戦場の名残のような硬い感触が残っている。


「こちらこそ……相変わらず強いな。」


俺も手を握り返す。

その瞬間、あの闘技場での激闘が脳裏に蘇った。

そういえば俺の後の2戦見れなかったな

「僕らの後の戦いはどうなったんだ?」

「4戦目が魔法学校側、5戦目が剣術学校側がかったよ」


ナエリアが微笑みながら言った。


「メトも、あとちょっとだったのにな」

ジニアも微笑んでいる


「いや……ライトニングは“気”を超えられない。

痺れさせることはできても、攻撃力は足りなかった。

作戦が成功してても――勝ちは無理だったよ。」


ウィングが小さく笑った。


「だが、俺の翼を封じたのは見事だった。

お前の戦い方、まるで戦場の兵のようだ。」


「……褒め言葉として受け取っておくよ。」


そんな穏やかな空気の中、ウィングの表情が急に引き締まった。

空気がピンと張り詰める。


「――メトルナーサ。起きてすぐで悪いが、護衛の任務が大変になりそうだ。」


その声のトーンで、すぐに分かった。

今話しているのは、“友人”ウィングではなく、“同僚”ウィングだ。


俺はこの時は敬語を使うと決めている


「……と言いますと?」


「ルシエル様のご兄弟――王位継承候補の二人が、ついに動いた。

互いに王位を主張し、天界内で戦争を始めた。」


部屋の空気が凍りつく。

ナエリアが息をのんだ。


「……戦争、ですか。」


ウィングは静かに頷いた。


「そうだ。

そして、この機に乗じてルシエル様も、天人族として戦場に立たれる。

当然、俺たち護衛も同行することになる。」


(……これが、俺の“初陣”ってやつか)


鼓動が早まるのを感じた。

恐怖よりも――覚悟の方が勝っていた。


「そのため、メトルナーサ。お前の望み通り、共に来てもらう。

学校の方は休学扱いになるが、ルシエル様から学院長に伝達済みだ。」


「……了解しました。」


声が自然と硬くなる。

友人としてではなく、任務の仲間としての返答だ。


「出発はいつ頃でしょうか?」


「天界の南境に駐屯している我々の部隊と合流する。

空路での移動とはいえ、一週間はかかる。

出発は――三日後だ。」


三日後。

つまり、あと七十二時間で“戦場”へ行く。


「……わかりました。準備しておきます。」


ウィングは頷くと、背を向けかけて、ふと振り返った。


「メト。お前の覚悟は見せてもらった。

だが、戦場は闘技場のように優しくはない。」


そう言い残して、ウィングは医務室を出ていった。


静まり返った室内で、誰もすぐには口を開かなかった。


やがて、ナエリアが小さく呟いた。


「……ほんとに、行くんだね。」


「行くさ。

僕は“護衛”だ。ルシエル様を守るって決めたんだ。」


ジニアが深く息を吐く。


「じゃあ、俺は準備を整えるだけだな。

魔法道具、解析装置、応急詠唱……全部揃えておく。」


ナエリアが小さく笑った。


「私もついていく。治癒魔法が役に立つでしょ?」


「……ああ、頼もしいな。」


俺は窓の外を見た。

夕陽が沈み、赤い空が広がっている。


――三日後、俺たちは戦場に立つ。


それは、学生としてではなく、

一人の戦士として歩むための第一歩だった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

今回は次でどうしても天人族王位継承戦争編に行きたかったため、長くなってしまいました。

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