9、奴隷契約
それから、アーノルドの案内で死にかけてる三人の元に行き、………私はお父様の首にしがみついた。
そこに居たのは、余りにも酷い(そんな言葉では済まない)傷をした、虫も湧いている様な状態の三人で。コレには、お父様達も驚き顔を歪めた。
「見ての通り、今にも死にそうな感じですけど……、どうしますか?」
「これでオススメか……。フー……、傷も酷いが…、臭いも凄いな」
「そうね。アーノルド?浄化をかけても良いかしら?」
「あ、はい。お願いします。瘴気も凄くて、アタシがクリーンの魔法をかけても、意味が無くって」
「〜〜くちゃい……」
グロいしクサイし、此処から早く出たい。
そんな事を考えていたら、お母様が浄化?の魔法を掛けたみたいで、少しはマシになったけど…、余り変わらなくて顔をしかめた。
そう言えば…、昨日の騎士達も瘴気でどうのこうのって言ってた……よね?奴隷契約は、もう決定事項だけど…。この瘴気とか傷は、契約前に治すのかな?
ジーーっと、お父様を見詰めて見る。
「?もしかして、この人達の傷とか匂いで気持ち悪くなった?
あ、違うの?なら……、へ?この人達を何処で治すか?」
「そうね。この人達には申し訳ないけど、屋敷に帰ってからになるわね」
声には出していなかったはずなのに、お父様やお母様が答えてくれた。
「お嬢様は話して無かったはずよね?まぁ、お二人だから…。
ーーー取り敢えず、契約を先に済ませましょ?」
アーノルドが少し疲れた様な顔をしながら準備をし始め。お父様も契約の仕方を分かっている様で、抱えている私の片腕持ち上げ針で人差し指をチックっと軽く刺した。
ビック!?!?
「ああ。ごめんね。何も言わなかったから、驚いたんだね」
「今のはシリウス様が悪いわ。ダリア、ビックリしたでしょ。
契約に貴女の血が必要だったのよ」
「だから、お父様の事を許してあげて?」と、言いながらお父様に顔を向けながら言うお母様。私もつられてお父様の顔を見て見ると、ショッボーーンと分かりやすく落ち込んでいるお父様が居た。
「お父様!?私は驚いたダメですから!?」
慌ててお父様にそう言うが、お父様の様子が余り変わらないので。
「じゃあ……。お父様?この後……その…、魔物討伐したいです…」
「………いや、ソレはまた今度で……。危ないし、準備は確りとしてからじゃないと」
「じゃあ……、帰ったらお茶をお母様も一緒にしたいです」
最初から魔物討伐はダメだろうなっと思いながら言ってみた。
それから、私は別に魔物討伐を甘く見て無いよ?行く前にちゃんと準備するつもりだし。魔道具はお預けのままだから、討伐前に使ってみたり。お父様達に攻撃に使える魔道具とかも教えてもらわないと。後、防具とかも考えないとだし。
ね?考えなしじゃ!無いでしょ!?だから、皆して!?そんなに怖い顔をしないで貰える?しかも、アーノルドまで怖い顔して!?何か背後から黒い物が出て来てるんだけど!?
「…コホン。取り敢えず、これで奴隷契約は終わったわ」
「それじゃあ。馬車に奴隷達を運んで入れてくれ」
お父様の言葉でニコラと何人かの騎士が動き、私達はその部屋から出て、綺麗な部屋に移動した。
因みに、私はずっとお父様に片手で抱き上げられてたよ………。
「あの奴隷達の様子から、余り時間が無いから手短に言うが。アーノルド……、早くて三日、遅くても一週間以内に此処から出ていってくれ」
「あら?随分、急ね?そもそも此処、名も無き街は王家が勝手に造って管理してない。貴方達には関係ない場所のはずよね?」
「フフフ、ええ。その通り、二週間前まではね。王家曰く、ダリアのスキルが授かった祝い?らしいわ。その前に大規模なスタンピードがあって、ダリアの儀式の後にも同じ様な規模のスタンピードがあったから、管理が嫌になったんでしょうね?」
「と、言っても。此処は管理何てされてなかったがな。王城と王宮、それと……此処の街を此方に丸投げして来た……」
アーノルドがポッカンと口を開けて固まり、顔を赤くして怒り出す。
「な、何を!!考えているのよ!?!?アイツらは!!!!」
ドッン!!!
勢い良くテーブルをアーノルドが叩くと、テーブルが真っ二つに割れた。
え?テーブルが割れた?それも綺麗に?音も凄かったね?
お父様達も、うん、うん。その気持ち分かる。じゃ!無いよ!?
ダリアは目を見開きマジマジと、真っ二つになったテーブルを見ながら固まる。
そんなダリアに気付いたシリウスが、低い声で圧を掛けながらアーノルドの名前を呼ぶ。
「アーノルド」
「フーー………。失礼しました。お嬢様も驚かせて、すみませんでした」
「あ、いえ…」
優しそうな姐さんみたいな感じのアーノルドがアノ反応って……、実は元~~でした!!とか。それか、王家の被害者とかなのかな……。前世の物語に良くあるパターン!!
お父様達!どっち?アーノルドはどのパターン?
と、言うかお父様達ってどんな関係何だろう?結構、親しそう……?
「ダリア。学園に通う前にちょっと助けただけだから。そこまで親しく無いから」
お父様に、ニッコリ笑顔向けられて、それ以上…私は考えるのを止めた。
「と、言う訳で。この名も無き街は、物理で凍結させるから。そのつもりで、この街の人達に言っておいてくれ。ああ。それと、此方には来ても受け入れないからっともね…?」
お父様…、笑顔なのに…全然目が笑ってない……。お父様のこんな顔を向けられるのが、私じゃ無くて……本当に…良かった!!!!
そんな事を考えていたら、何時の間にか屋敷に戻っていた……?ーーーえ?本当に何時の間に?もしかして…、私って……うっかりさん?抜けているの?
「ダリア。その…百面相している所、申し訳ないんだけど。昨日スキルで出した物を急いで、出してくれるかな?」
「はい。お茶とお饅頭だよね。え~っと……、取り敢えず三つ……全員分ですね。ちょっと、今出しますね~」
さっと、テーブルの上に三つ出し。それをアンナと他の侍女が、奴隷の方にそれらを運んで行くのを見て。此処に居る人達の分を順番に出していった。
昨日の量よりは……少ないけど。まさか…屋敷の皆の分?とか……。え?もしかして……?あ!それは無いの。へ~、今日の所は使用人にはご褒美として?そっか~、それなら安心だねー。
「あ!?お母様!?魔法を使うんですか!?し・か・も!治癒!!
お母様?私も使える様になりますか?と、いうか!使ってみたいです」
えっ?魔法を初めて見たからって幾ら何でも、死にかけてる三人が居るのに、不謹慎だって?……あ〜、そうだよね……。でも、ごめんなさい。お母様の魔法でキレイに治ったの見たら、興奮しちゃったの。
スイも。あ!!実は、私の魔力をずっと吸収してもらってたから、手首に巻き付いてて貰ってたんだ。
それでスイが、ニョッロと伸びて私と一緒にお母様の魔法見て驚いて固まってるよ。
って!ソレより!!凄いの!お母様の魔法が!?!?
三人共、死にそうで傷とか酷いしうんでたんだけど……。それが、綺麗になって。呼吸もちゃんと落ち着いたみたいなの。
そんなの見たら、私達の興奮は当たり前だよね?皆だって興奮するでしょ?
それなのに……、皆が微笑ましそうに笑ってるのが……、ちょっと納得出来ないんだけど………。
「そんなに笑わなくても……。ねぇ〜、スイ?」
「ミィッ!!」
私達が抗議してみても、やっぱり笑顔で悪いとは思ってない様で。皆が口々に笑顔で謝る。
「ごめんよ?ダリア、スイ。謝るから機嫌を直してくれないかな?」
「フフ、ごめんなさい。ダリア、スイ」
む〜。納得出来ないけど……、折角のお父様とお母様との時間……無駄にしたくないから。仕方無く、仕方無くだからね!二人に頭を撫でで貰ったからじゃ無いから!?
そこ!?また、笑わないの!!
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