7、 これから
「まぁ…、ダリアには、この話は此処までで」
「ーーーこの国大丈夫?としか分からなかったので。また今度、お願いします。お父様?
それで?此処には何時引っ越しをするんですか?」
ダリアはリゲルに抱きしめられながら、少し強引に話を終わらせたシリウスに聞く。
「……ああ。その事なんだけどね?」
「義姉上。実は兄上と話し合ったのですが、此処に引っ越すのは見合わせようかと」
お母様もニコラ達もこの話は知らなかったのか、見開き驚いてる。
「あら?どうしてかしら?シリウス様」
「うん。それが、此処の人達は平民が多いいって事だったんだけど。実は、呼び戻された人達と好き勝手してた人達が貴族とかの庶子だったみたいで」
「今回の被害がここまで酷いのは、そいつらのせいで……。魔物と瘴気をこちらに擦り付けて来たからなんだ」
「あら……」
!?お、お母様の今の「あら……」が怖い!?今までにないひっくーい声が出てたよ。
ほら、お父様も叔父様も何か汗かいてるし。最初の方から身体を小さくしてた人達なんて、顔色がもう真っ青だよ。
「コッホン……。それで、此処の人達はクビになってるし。もう、此処……と王家が新しく造った街を氷で覆って放棄しても、良いんじゃないか?って」
「指示を聞かなかった人達の大半が戻ったり、今回の事で亡くなりましたから。後の人達は、王都や他の領に行けば良いのでわ?っと」
「あら~」
あ!今度の「あら~」は、嬉しそうですね。お母様……。お父様も叔父様も何だか楽しそう。
今の話を聞いていた騎士の人達は……。うん…。顔色……悪い…ね。
でも、……そっか~、此処の探検とかしてみたかった……けど。無理なんだ〜……。
「……お嬢様。声に出てますよ~……。それに、王宮に住む訳では無いので……。そんなに簡単には、探索は出来ないと思います。例え、引っ越すとしても」
コソっとアンナが声をダリアに掛ける。二人は、他の人達に気付かれてないと思ってるのか、小声で会話しているが。周りの人達は、そんな二人を微笑ましそうに見ていた。
「ーーー此処と家の屋敷に転移装置を置きましょうか。それなら氷で覆わなくても、問題は無いはずですわ」
「あ、うん。行き来しやすいし。多分、問題は無いよ?」
「ダリア達。探検はもう少し後で、良いかな?」
叔父様の言葉に、「クビがイヤな人達を鍛え直すから、ちょっと待ってて」と聞こえた気がするけど…、気のせい、だよね?
アンナが横でプルプル震えてるけど……、今は見なかった事にさせて。
あ?タクトさんは、何故にそんな笑顔で手を上げてるの?
「はい!?リゲル団長!!俺もお嬢様と探検に行きたいです!!」
「は?君は………。まぁ……、護衛としてなら。だが!?くれぐれも!はしゃいで、護衛である事を忘れない様に!」
「はーい!!」
「あっ!?コラ!今直ぐじゃぁ無いからな!!ダリアを抱えるな!?そして、走り出そうと!するな!!」
漫才の様なやり取りと、タクトの自然な動きでダリアを脇に抱える様子に、イザベラ達はポッカンとしなから見守る。
「ーーーッは!?そうだ!?タクトさん!降ろして下さい!?」
「っわ!?お嬢様!落ち着いて~!?あ、危ないですって!?」
突然ダリアがバタバタと暴れ出して、慌てた様子で騒ぎながら言う。
暴れ出したダリアに、落ち着く様に言いながらタクトは落とさない様に下に降ろす。そして、降ろされたダリアはターーーっとリゲルの下に行く。
「叔父様~!!今すぐ私に魔物の倒し方を教えて下さい!」
ピッシ
シリウスとリゲル、周りに居た騎士達が固まり暫くフリーズした。ダリアは戸惑いながらリゲルの顔を見て、それからシリウスの顔を見て、二人と周りに居た騎士達に「あれ?」と首を傾げた。
「おお~い?叔父様?お父様も?どうしたの?
ーーーあ!あ、あのね?私のスキルで自分自身か、私の契約した魔物とかが魔物を倒したら、何かポイントで欲しい物のカードと交換できるの」
コレコレとダリアは画面を二人に見せながら、色々説明を省きながら少し興奮した様子で言う。
ダリアが出した画面をジーーッと見て、説明を頭の中で何回も繰り返して、爆発しかけていた怒りを鎮めた。
「っ~~。まだ子供のダリアには早いと思うんだ……。でも、それが必要なのも分かった」
「必・要!!何だろうけど!?ーーーあ!?この契約って、俺がしたら……」
理解したけど…、分かりたくは無いと頭の抱える二人に。昨日そうなって居たイザベラ達が頷く。そんな大人達の反応に、ダリアは嬉しい様なくすぐったい様な気持ちになった。
「叔父様……。その…契約出来る条件が有るみたいで…」
リゲルが自分がっと言う言葉に、ダリアは申し訳なさそうに、そう言うのがやっとだった。
ダリアの言葉にリゲルとタクトの他に騎士が何人かが落ち込んだ。ニコラ達は、その気持ちは分かると深く頷いて、ダリアに顔を向けて「条件は?」と暗い顔をして聞く。
「え~……と、ですね。魔物はテイムで良いんですけど」
皆の視線がスイに向かう。スイはそんな視線を気にせず、スピスピと寝ていた。
「……スイの事は置いといて。
他の人だと…、その…私と隷属関係じゃあ……ないと……」
私は最後の方は小さくなって聞こえるか聞こえないかの声になった。
ううっ~……。だって!隷属?奴隷何て!?馴染み何てないんだから!?
皆の顔が見れないよ……。これからどうしよ……、魔物を倒すのは怖いけど…、まだ魔物でも私は殺せるか分からないけど。叔父様達が奴隷なんて嫌だし。
「あー……。それは…」
叔父様が何とも言えない顔をして呟き、他の人達も唸っているけど。お父様とお母様が何か小声で話し合ってる。
?お父様とお母様……何を話合ってるのかな?
「イザベラ、奴隷商に明日行ってみようか…」
「ええ。ダリア?明日、王家が勝手に作った街の方に行ってみましょう」
ニッコリと笑って安心させる様に言うシリウスとイザベラに、私は身体に無意識に入っていた力を抜け。息も深く吐いて、二人と目を合わせる。
「はい。ーーーん?そう言えば、引っ越しと此処の人達はどうするの?」
私の言葉に、皆して「あ?」と声を上げた。
◇◇◇◇◇
あの後、取り敢えず今日は解散する事になって、私達は屋敷に帰ってきた。
残念な事に、叔父様はお仕事がまだあるから残ったよ。あ!でも、お父様は一緒に帰って来て、夕飯も久しぶりに一緒に食べれたの!
「ふぅ~……。明日は、お父様とお母様と一緒にお出かけ!…嬉しいけど、奴隷って…。ちょっと?いや、かなり、抵抗があるなー……」
お父様とお母様と一緒出かけるのは良いんだけど、奴隷を見に行くってのが……。気が重い……。
バッフ
ダリアはベッドに倒れ込み、近くに居たスイを抱き込みながらツンツンっと突く。その顔は少し暗く、戸惑いがあった。
「ミィ~」
声?気のせい?だって……。
「ミィ!!」
「え?もしかして…スイ?」
私がスイを見ると、まるで「どうだ!!凄い?」とドヤ顔で言っているみたいだった。
「凄いねー!スイ!!あれ?でも、何で?」
どうして今、スイが声出せる様に?
思わずスイをツンツンっと突き、横に伸ばしたりして遊んでしまう。すると、嫌だったのかスイが抵抗して、ダリアから離れて「ミィー!!」と怒った様に鳴く。
「あー……。ごめんね?スイの身体…気持ちよくて…」
「…ミィ…」
何となくだけど…、スイの目が痛い様な。
それに…、今の私の言葉…何かマズイ?そんな事ないよね?うん。気にしない!
「スイ。本当にごめんね。
それと、明日は早いんだって…。だから、もう寝よ?」
私が、もう一回謝るとスイは、仕方ないな~と言う様に鳴き、ダリアの元に戻る。
「フフッ。ありがとう、スイ。お休みなさい」
「ミィ~」
ダリアは目を閉じたら直ぐに寝息が聞こえて来た。そんなダリアをスイはヤレヤレと身体を揺らし、そっと触手を伸ばしダリアの腕に絡めると、少しずつダリアの魔力を吸い続ける。
スイはダリアを心配そうに見た後、窓の外を見て月を見上げた。