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21-お風呂入ろう

「なぁ、シンジ、最近六華君とはどーなの?」


 業務とはまるで無関係な内容の問いかけ。

 上司である蜩に対して聞こえないフリをしてシンジは書類作成を続ける。


(最近、黒埼君と、どうか?)


 前と変わらず居酒屋で食べたり飲んだり、親しいお付き合い、させてもらっていますよ?

 キスしたり、本番未満の性行為を致したりは友達の一線を越えた日のあれきりで。


(それ以来、全っ然、なーんにもしてませんけどね)





「あれー? やばーい、酔っちゃった」

「えー、うそ、どれくらい、マックス? この辺?」

「んー。この辺っ」

「おー。けっこーマックス!!」


 居酒屋のカウンターの端から若々しいカップルがどれくらい酔ったか話し合っているのが聞こえてきた。

 カウンターのほぼ真ん中に座って砂肝の歯触りを噛み締めていたシンジ、今の自分は中の下くらいかな、と二杯目のハイボールを飲んで分析してみた。


「しんちゃん、やばーい、酔っちゃった」


 隣に座った六華がカップルの女の子を真似て擦り寄ってきた。


(いや、そんなことされても普通に可愛いだけだから、黒埼君。所構わずキスしたくなるからやめてほしいです)


「どれくらい酔ったの」


 シンジもカップルの男子を真似て問いかけてやれば「この辺!」と言って六華は何故だかデコピンしてきた。


(いや、ほんとにマックス可愛いからやめて、黒埼君)





「飲みすぎたぁ、もう飲めねぇ」


 その夜、六華は自宅に帰るのを面倒くさがってシンジ宅にお邪魔した。

 ワンルームで服を脱ぎ散らかすなり、ボクサーパンツ一丁でベッドに派手に倒れ込む。

 とりあえず脱ぎ散らかされた服を畳むと、シンジは、シーツに顔を埋めている六華を見下ろした。


 健やかに立派に成長した彼は伸びやかな体つきをしている。

 太すぎず、細すぎず、見栄えよくバランスがとれている。


 真夜中でしんなりした金髪から覗くうなじ、艶やかな牡丹の咲く背中、括れた腰、ボクサーパンツに覆われた引き締まった尻。

 視線を易々と奪うくらいに魅力が尽きない。


(……これって視姦になるのかな)


「……黒埼君、俺、シャワー入ってくるから」

「んん~」

「冷蔵庫の飲み物とか好きに飲んでいいから」


 これ以上見過ぎるとよからぬ行為に走ってしまいそうで、自制も兼ねて、シンジは風呂に入ることにした。

 速やかに着替えを準備すると浴室に向かう。

 トイレは別、浴槽と洗面台が一体になっているタイプのユニットバスだった。


 シャワーカーテンで仕切った、座ればのんびりできる浴槽内、立ったまま体を流しながらシンジは悩む。


(黒埼君となかなかそういう雰囲気にならない)


 一線を越えた夜から何回か部屋に来ているが、今日みたいに彼はさっさと一人ベッドに豪快に寝転がってしまう。


(ムードが皆無というか)


 もうちょっとガツガツいってみようかな。

 何なら勢いで本番まで……。

 でもノンケの彼にヒかれたら嫌だな。

 いやいや、そもそも、まだまだ早い。

 ちゃんと慣らしていかないと駄目だ。


(大体、黒埼君自身が受け手に回ることを了承してくれるか、どうか)


 日焼けしにくいシンジの白い肌が薄明かりの下で控え目な光沢を放っていた。

 骨張った指で黒髪にシャンプーを馴染ませて念入りに洗っていたら。


 しゃっっ


「えっ?」


 シンジはびっくりした。

 泡が入らないよう、閉ざしていた瞼を持ち上げればシャワーカーテンを開け放った六華がタイルの上に立っていた。



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