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13-閑話/闇金事務所支配人の弱点



 闇金事務所にやってくる客の中には性質の悪い者もいたりする。


「ざけんじゃねぇぞ、ああ? 客だからって調子乗ってんじゃねぇぞ、こら」


 すぐにプンプンする弟を片手で制し、黒埼は言う。


「ウチの者が申し訳ありません、お客様の仰る通り、お急ぎのようですので、すぐにでもご融資させて頂こうと思いますよ、ああ、返済日は厳守されて下さいね、一日でも、いえ、一時間、そうですね、一分でも遅れようものなら遅滞金が発生しますので、あと過剰督促に至るケースもありますので、肝に銘じてご了承ください」


 どんな相手に対しても淀みない黒埼のことを綾人は尊敬している。

 さて、そんな黒埼と二人で夕食を食べに小料理屋へやってきた。


「キンメ、食べたいですね」

「そうだな、アサリもいきてぇな」


 油っこいものを好む弟がいたら「ジジィの注文だ!」と思われそうな品に目がいく二人。

 年相応なテンションできゃっきゃしていたら突き出しがコトンとテーブルに置かれた。


「……」


 不意に押し黙る黒埼。

 お品書きを真剣に見つめる綾人の方へ、さり気なく、小鉢を移動させる。


「食べられないんですか?」

「……食っていいぞ、佐倉さん」


 覗き込んでみると、ナメコおろし、だった。

 黒埼はキノコ類が苦手なのだ。


「黒埼さん、シイタケも駄目なんですか?」

「駄目だ」

「エノキは?」

「駄目だ」

「シイタケ、天ぷらはどうですか?」

「天ぷらにしても駄目だ」

「昔、キノコのゲームが流行りましたよね」

「駄目だ、ゲームする奴の気が知れねぇ」


 ナメコおろしが視界に入らないよう、黒埼は飲み物のお品書きを敢えて高めに翳し、壁をこさえた。


「匂いも駄目なんだ、佐倉さん」

「わかりました、すぐ食べますね」

「すまねぇな」


 ――いいえ、全然。

 貴方の苦手なものがこの私に退治できるなんて、ただただ嬉しいです――。




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