最期の景色
六月中旬。ある体育祭がある平日。
「気をつけてね」
「……あぁ」
ギルに軽く手を振ったら、重い足取りで校門をくぐって帰路につく。
本当に、こんなことになるなら行かなければよかった。……けどギルに連れられたんだから、仕方がないか。
クラクラと、ぼんやりする頭で道を歩いていた。
今日は体育祭があった。けどその昼前、僕が体調を崩して、今こうして早退して、家に向かっている。
原因はわからない。でももう外は夏の暑さだ。きっと熱中症にでもなった。
保健室で休んで経過を待ったが、どうも良くならないからと、早退することになった。こうして何度も早退したことはあるが、ここ最近で一番体調が酷い。
とぼとぼと足を動かして、やっと橋を渡る。いつもならこんなにかからないのに。
「……しんどい」
早く横になりたい……横にならせてくれ……。
体の重さだとか、頭痛と吐き気が酷くて、電柱の傍のうずくまっていた。このまま歩き続けたら、気づかない間に道路に飛び出して、車にひかれそう。そう思って……というわけではなく、本当に動けない。けどなにかの拍子にひかれても、しばらくは気づけないだろうと思うくらい、頭がはっきりしない。
家まであと十五分ほどあるのに……。
胸が……気持ち悪い。……ぐるぐるする。こんなところで吐けないのに。
「くっそ……」
胸の不快感に唸りながら、この状況をどうにかしようと、動かない頭で考える。……いや、考えも浮かばない。歩くしかない、か。
脚に無理やり力を入れて、電柱に支えてもらいながらも立ち上がった。けど、
「っ……」
たちくらみがして、めまいもしだす。駄目だ、吐きそう……。せっかく立ったのにまたうずくまりたくなかった。だからなんとか立ち続けるが、おぼつかない脚は、右に、左に、揺れ動く。
意識が――
バランスを崩した。いや、脚の力が抜けた。だから道路に投げ出された。それだけはなんとなくわかった。目の前には車が走ってきていた。
こんなところで、死ぬ……?
死ぬときくらい最期の景色を、と思っても、まぶたはすんなり閉じられた。




