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「古い栞」
古い本の一ページに
古い栞が一枚、挟まっていた
きれいな緑色の
四葉のクローバーを押し花にした
なかなか素敵な栞だった
読んでいる途中だったのか
そのページに気になる一節でもあったのか
記録のない古代の歴史みたいに
その理由は、今となっては判然としない
ただ一つ確かなことは
誰かがその本を読んでいて
そこにクローバーの栞を挟んでいった
ということだけ
わたしは その栞をどうするか迷ったすえ
元のページに挟んでおくことにした
また別の誰かがそれを見つけて
わたしと同じような感懐を抱くかもしれない
案外、幸運というのは
そんなふうに元の場所に残しておくのが
正しいのかもしれなかった
志坂 律子




