前へ目次 次へ 56/87 「街灯」 夜の中に 街灯が一つ ぽつんと光っていた 何もない その道に 誰も来ない その道に 街灯が役立っているようには 見えなかったけれど ぽつんと光っていた 誰のためでもなく 自らの責務として 夜の静寂(しじま)の中で 無言のままで 小麦色の髪をした あの王子さまが登場する本の中にも 律儀に仕事をはたす 点灯夫がいたっけ そんなことを考えながら わたしはその光を 心の容器に収めて 家まで帰った すると 街灯の消えた朝になっても その光はまだ わたしの中に灯り続けていた 志坂 律子