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「躓きの石」
くまらじゅう という言葉が
何だか気になって頭から離れなくなった
確かそれは
仏教に関する事歴のような気がするのだけど
はっきりしたことはわからない
くまらじゅう くまらじゅう
それが四十人の盗賊が財宝を隠した
洞窟の扉を開くための
呪文でないことだけは確かだ
そもそも人の名前だったはずなのだし
おしくらまんじゅう おしくらまんじゅう
わりと近似してはいるけれど
全然関係もなければ 関連もない
わたしの頭は一体どうなってしまったのか?
言葉の響きだけが
不思議と人を囚えてしまうことはある
それこそ 「ひらけごま!」
という言葉が証明しているみたいに
フロイトによる連想法が
それに答えを与えるだろうか
くまらじゅう という言葉の何が
かくもわたしを躓かせるのだろう
人には時々 そんなことがある
知っているはずの言葉 聞いたはずの声
見たはずの景色 嗅いだはずの匂い
心にひっかかる 不確かな形象
考えてみるとわたしたち自身が
神様の心にひっかかった
そんな不確かな形象かもしれず
だとすると
それは神様を躓かせているのかもしれない
志坂 律子




