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「キャンディーの包み紙」
昔々、教室で泣いていたあの子は
何がそんなに悔しかったのだろう
昔々、電車で吊り革に手をのばしていたあの子は
一体何を確かめたかったのだろう
昔々、ブランコで夕焼けを浴びていたあの子は
どんなにか淋しく思っていたのだろう
わたしの中に時々 浮かんでくる
そんな名前のない記憶たち
懐古と憧憬とかすかな痛みを含んだ
そんな思い出の中に
今も誰かがいるのだとしたら
きれいなキャンディーを紙で包むみたいにして
わたしはそれを 大事にとっておこうと思う
志坂 律子




