積乱雲
「◯◯さん、あんたの娘は預かった」
「えっ?」
「聞こえなかったのかい?あんたの娘を誘拐したんだよ」
「な、なんだって?」
「大事な一人娘だろ。生きて返してほしければ、私の言うことを聞いた方がいいぞ。警察に通報しようとなんかするなよ」
「わ、分かった。警察には言わない。た、頼むから、娘を殺さないでくれ・・・」
「それは全てあんた次第だな」
「よ、要求を言ってくれ。何をすればいい?」
「身代金を支払ってもらおう」
「わ、分かった。い、幾らだ?幾ら支払えばいい?」
「それもあんた次第だ」
「そ、それは、どういう意味だ?」
「娘の為に、あんたは幾ら払える?」
「えっ?い、幾らって?」
「身代金は、あんたが考える娘の価値を支払ってもらう」
「そ、そんな・・・、娘に値段なんか付けられないよ」
「ははは。あんた、今、無意識に考えただろ。今の自分の財産を。それで幾らまでなら支払えるか、幾らまでなら破産せずに済むか考えたな」
「い、いや、そんなこと考えてない。む、娘の為なら、全財産支払ってもいい。だから娘を返してくれ」
「全財産とは、つまり幾らだ?」
「い、一千万だ」
「ははは。愛する娘の命がたったの一千万円だってのか?」
「い、いや、ち、違う」
「あんたの血を引いた娘の命だぜ。もっと本気になれよ」
「・・・分かった。娘の為に支払える額は、ゼロだ」
「何?」
「娘の為に、一銭も支払うつもりはない」
「なんだと?あんた娘が死んでもいいのか?」
「ああ、そうだ。本当のことを言うと、ワガママな娘に正直ウンザリしていたんだ。だから私は、極秘に娘を殺す計画を立てていたんだ。だが渡りに船だよ。都合よく君が娘を誘拐してくれた。そして、私は君の要求を拒んだ。そのまま娘を殺してくれて構わない」
「この外道め!」
「人のことを言える立場かい?でも、どうする?君が誘拐したのは、値段が付かない、価値のない人間だったんだ。調べが足りなかったな。君の負けだよ」
「畜生・・・」
「娘を殺してくれれば、警察には通報しない。そのまま君は逃げればいいんだ。だが娘を生きて返すような真似をするのであれば、この後すぐ警察に通報しよう。多分、君は娘に顔を見られてるはずから、すぐに捕まるだろう。しかも、身代金も手に入っていないし、滑稽だね」
「こんなサイコパスな奴の娘を、誘拐しちまったのか・・・」
「今度は、君の番だよ。どうするか決断をしてくれ。まあ、どちらに転んでも、結果は同じかもしれないがね」




