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積乱雲

作者: 岸亜里沙
掲載日:2023/01/30


「◯◯さん、あんたの娘は預かった」



「えっ?」



「聞こえなかったのかい?あんたの娘を誘拐したんだよ」



「な、なんだって?」



「大事な一人娘だろ。生きて返してほしければ、私の言うことを聞いた方がいいぞ。警察に通報しようとなんかするなよ」



「わ、分かった。警察には言わない。た、頼むから、娘を殺さないでくれ・・・」



「それは全てあんた次第だな」



「よ、要求を言ってくれ。何をすればいい?」



「身代金を支払ってもらおう」



「わ、分かった。い、幾らだ?幾ら支払えばいい?」



「それもあんた次第だ」



「そ、それは、どういう意味だ?」



「娘の為に、あんたは幾ら払える?」



「えっ?い、幾らって?」



「身代金は、あんたが考える娘の価値を支払ってもらう」



「そ、そんな・・・、娘に値段なんか付けられないよ」



「ははは。あんた、今、無意識に考えただろ。今の自分の財産を。それで幾らまでなら支払えるか、幾らまでなら破産せずに済むか考えたな」



「い、いや、そんなこと考えてない。む、娘の為なら、全財産支払ってもいい。だから娘を返してくれ」



「全財産とは、つまり幾らだ?」



「い、一千万だ」



「ははは。愛する娘の命がたったの一千万円だってのか?」



「い、いや、ち、違う」



「あんたの血を引いた娘の命だぜ。もっと本気になれよ」



「・・・分かった。娘の為に支払える額は、ゼロだ」



「何?」



「娘の為に、一銭も支払うつもりはない」



「なんだと?あんた娘が死んでもいいのか?」



「ああ、そうだ。本当のことを言うと、ワガママな娘に正直ウンザリしていたんだ。だから私は、極秘に娘を殺す計画を立てていたんだ。だが渡りに船だよ。都合よく君が娘を誘拐してくれた。そして、私は君の要求を拒んだ。そのまま娘を殺してくれて構わない」



「この外道め!」



「人のことを言える立場かい?でも、どうする?君が誘拐したのは、値段が付かない、価値のない人間だったんだ。調べが足りなかったな。君の負けだよ」



「畜生・・・」



「娘を殺してくれれば、警察には通報しない。そのまま君は逃げればいいんだ。だが娘を生きて返すような真似をするのであれば、この後すぐ警察に通報しよう。多分、君は娘に顔を見られてるはずから、すぐに捕まるだろう。しかも、身代金も手に入っていないし、滑稽だね」



「こんなサイコパスな奴の娘を、誘拐しちまったのか・・・」



「今度は、君の番だよ。どうするか決断をしてくれ。まあ、どちらに転んでも、結果は同じかもしれないがね」


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